代表取締役社長 野﨑 宏二

株式会社エヌ・デザイン 代表取締役社長 野﨑 宏二

株式会社エヌ・デザイン 代表取締役社長 野﨑 宏二

株式会社エヌ・デザイン
設立 2001年5月
事業内容
  • 映画、TV、CM、ゲームなどのCG映像制作
会社HP http://www.ndesign.co.jp

CGとの出会い

幼い頃から「モノづくり」に興味があり、
暇さえあれば絵を描いたり、ネンド細工をして遊んでいました。
その気持ちはずっと変わらず自然な流れで美術系の高校に進学し、
いつしか美大の彫刻科を目指すように。

受験の結果は... 残念ながら第一志望の彫刻科には落ちましたが、
当時設立されたばかりの東京造形大学のCG学科へ。
アナログな彫刻とデジタルなCG。一見、全くかけ離れているように思えますが、
CGには「モデリング」と言ってコンピューターの中で立体物を創る事ができ、
彫刻と相通じるものがあったんですよ。
当時CGの知識なんてほとんどありませんでしたが、
一気に興味が湧きのめり込んで行きました。

受験に失敗したことで出会えた新たな道。
あの時、彫刻にこだわっていたら今はなかったでしょうね。
出会ったもの、興味が湧いたものにはまず取り組んでみる、というのも大事だと思います。

ゼミをきっかけに就職。そしてフリーへ

ゼミの先生がたまたまCGプロダクションの社長だったのもあり、
在学中はそちらでアルバイトとしてお世話になりました。
大学では学べない「リアルな現場」に触れられる喜びもあり
とにかく吸収しようと一生懸命に働いた結果、
社員と同等の仕事を任せられるようになり、ついには社長からのスカウトが。
嬉しかった反面、「他の会社も見てみたい」という迷いもありましたが、
これもきっと何かの縁!と入社する事を決意。

大学卒業後社員として2年間勤めたのち、
より多くの実写系の作品に携わりたいという思いからフリーランスに転身。
映画やドラマにCGディレクターとして参加しました。

猛烈に働いたフリーランス時代。そして法人化へ

フリー転身後は少しずつ仕事の幅を広げながら、
経験の無かった事にも積極的に取り組みました。
そんな中、やはり実写映像にCGを合成する仕事に一番の魅力を感じ、
改めて自分が望む方向性を実感したんです。
そうと分かれば後は突き進むだけ!と、とにかく猛烈に働きましたよ。
その甲斐あってか、常に一人では抱えられない量の依頼を頂くようになり、
徐々にアシスタントを増やして行った結果「これは会社にした方が良いな」と気付き、
法人化へ。

大学時代からぼんやりとした起業意識はありましたが、
私の場合は、恩師やこれまでの人脈、
巡り合わせなど多くの人に「自然な流れ」をつくって頂き起業できたと思っています。
法人化してから、それまで以上に大切にしたのは「コミュニケーション」です。
純粋に人の話しを聞くのが好き、というのもあって
学生の頃から積極的に上流の方々とコミュニケーションを取ってきました。
その人脈は今も繋がっていて多くヒント、アドバイスを頂いています。
デザイン業界において、悪く捉えれば「好きなモノさえつくれれば満足」
という閉鎖的な職人気質の人が少なくないのも事実です。
もちろん職人としての情熱は必要ですが、
せっかく持っているコミュニケーション能力をもっと活用すれば、
おのずと良いチャンスが訪れる。と思います。

人として、プロとしての責任

「会社」となってからは、法人としての社会に対する責任、
社長として従業員を守る責任など改めて学ぶ事も多く、
必然的に多くの時間が社長業に割かれ、
本当にやりたいクリエイティブワークの時間が減ってしまった事は残念ですが
「法人化したからには大きくしたい」と、常に思っていました。

そのためには「エヌ・デザイン」としてとにかく良い実績を作る事。
出来の善し悪しが一目瞭然というシビアな映像業界。
クライアントの期待に応えられなければ次はない!
と思い、毎日会社に寝泊りし、休みは年に2日もなかったほど猛烈に働きましたね。
従業員の頑張りもあって、あり得ないスピード感で高いクオリティーを実現してきました。
宇多田ヒカルさんの「traveling」や「SAKURAドロップス」といった
ビデオクリップの作品に携わる事が出来たのをきっかけに、
業界に一挙に認めてもらえ
『CASSHERN』『GOEMON』『20世紀少年』などの受注へと繋がっていきました。

会社を大きくするターニングポイント

2年ほど前に「このまま少数精鋭でいくか、それとも規模を拡大するか」
と考える時期があり、結果的に規模を拡大する方向へ進めました。

CGは個人の技術力に依存する部分が多く、
例えば有能なスタッフが会社を離れた瞬間に「エヌ・デザイン」の資産価値が下がり、
極端に言えば会社自体の危機にも繋がります。

また限られた時間と人数では、短いミュージックビデオはつくれても、
2時間のフルCG映画をつくる事は不可能です。
つくり手の技量によってクオリティーにばらつきが出てしまうのもプロとして言語道断。
作品全体を通して安定した高いクオリティーを保つには、
一人が全行程をやる方式から、形をつくる人、色を塗る人、
カメラアングルを決める人など分業制に転換する必要があり、
そのためにはこれまで以上の人手が必要となります。
今はまだ変革途上なので手探り状態ですが、
今後は、アーティスティックな仕事と大量生産的に安定した仕事とを
分けて考えていきたいと思っています。

今後のビジョン、自主作品映画

私達のような映像制作会社は、そのほとんどが「受注する側」です。
全実権は無く、限られた自由の中でアイデアを出しデザインをしていく訳です。
ただ、せっかく自由な映像がつくれるCGをやっているのですから、
自分達の想い通りの映像をつくってみたい。
現在再来年の完成を目標に、オリジナル脚本の自主映画制作にチャレンジしています。
映画制作は出会いの要素が大きい世界なのでどうなるかは分かりませんが、
これまで通り「良いモノをつくり続ければ、
次の結果に繋がる」ことを信じて努力して行きます。

望まれる人材とは

デザイナーは当然スキルレベルが問われますが、
コミュニケーション能力も重要視しています。
「一生現場にいたい」というデザイナーも2割~3割います。
確かにそういう職人気質な人も必要ですが、
経験を積んで行けば必然的にポジションは上がるもの。
上の役職に上がれば上がるほど役割と実権が増え、
社内外問わずコミュニケーション能力が試される場が増えて行きます。
一概に、ただただスキルアップを図れば良いと言うものでもありません。
そして一番大切なのは、モノづくりへのこだわりがあるかどうか。
どんな気質の人でも、これがないと結局は辞めて行くことになります。
面接では、モノづくりに対する高いモチベーションや
情熱をアピールしてもらいたいですね。
アピールする能力がコミュニケーション能力でもあり、そこも見ています。

デザイナーは美大出身か専門学校などでCGを勉強してきた人が望ましいですが、
その限りではありません。
また、営業職や事務職の場合は、映像が大好き!
という人であればCGを勉強していない人でも大丈夫です。

学生へのメッセージ

私達のような映画やTV、ゲームなどの娯楽映像業界では、
良い作品をつくっている限り景気に左右されないという自負があります。

ひとつひとつの作品を誠実につくること。それが全てものを言う業界です。
特に日頃ものつくりに励む美大生に伝えたいのですが、
大学時代にこだわっていたものを信じてみてください。
就職活動は、4年間続けた努力の分だけ報われるはずです。
「作品」という目に見えてわかるものがある以上、努力したものは必ず評価されますよ。