代表取締役社長 横井 勇
設立 | 1970年7月 |
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事業内容 |
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会社HP | http://www.to-soku.co.jp/index.html |
アルバイト先で地震計と出会う
大学での専攻は電子工学だったので、
地震計に携わるとは夢にも思いませんでした。
貧乏学生で、学資稼ぎに若い頃は色々と苦労しました。
その中で、東大の耐震工学を研究されている岡本教授のもとでお手伝いをさせていただいた関係で地震計を知りました。
当時は、黒部第四発電所なども建設中で、実際に現地へ足を運ぶチャンスがあり、
巨大な工事にたいへん感銘を受けました。
こういうところに地震計が使われると知り、地震計に関心を持つようになったのです。
専攻から考えて、何となく、無線通信や電話会社、
当時はテープレコーダーのメーカーなどに就職すると思っていたのですが、
岡本先生と出会って地震計を知ったことからこの業界へ入るきっかけになりました。
当時の地震計は今から考えると簡単な作りで、専攻していた電気の力を借りて、
さらに改良できるのではないかと思ったこともこの業界に入った理由の一つです。
日本初のサーボ型地震計を開発
大学を卒業してからはいったん、地震計のメーカーに就職し、
従来型の地震計を作っていたのですが、1年ぐらいで辞めてしまいました。
それというもの、たまたま米国の地震計メーカーが開発したサーボ型地震計の文献を目にする機会があり、
日本で初めてのサーボ型地震計を自分の手で売り出したいという思いが湧いてきたからです。
サーボ型地震計は精度が高く、壊れにくいうえに、
マイナス196度という低温でも使えるのでLNGタンクにも設置可能、
原子炉の中のように最高200度になるような厳しい環境でも使えることが分かったのです。
「こんな素晴らしい地震計はすぐに日本でも発売しなければいけない」と思い、
仲間5人と一緒に会社を立ち上げ、それと同時にサーボ型地震計を発売しました。
このような特性を持つ地震計はこれまでなかったので、販売は好調でした。
サーボ型速度計を発明
ところが、しばらくすると、他の地震計メーカーがうちの性能を上回るものを世に出したのです。
大変なショックを受けましたね。
何とかそれ以上の製品を作ろうと努力し、サーボ型速度計というものを発明しました。
それまでの速度計では小さな地震より測れなかったのですが、サーボ型速度計の開発によって、
大きな地震ばかりでなく長い周期の地震まで測れるようになったのです。
この製品は今もうちの看板商品です。
強震と呼ばれる大きな地震まで測れるこのサーボ型速度計は、今回の東日本大震災でも役に立ったのです。
日本は地震計を作らなければならない
今後は、通常の地震から大きな地震まで測れる地震計を作るのが大きな目的です。
欧米ではほとんど地震がないので、人間が感じないような小さな地震を測るだけで十分です。
一方、日本は地球上の全陸地の0.3%しか国土がないのに、
全世界の地震の22%が日本で起こると言われています。
だから、本当の地震を測る機械は、欧米の人には作れないのです。
地震の経験を通して初めて、必要十分な地震計が作れるのだから、
地震計は日本で作らなければならないという必然性があると信じています。
うちの製品は、皇居宮殿や迎賓館、日本銀行などの重要な建物の地震を監視するのに使われているほか、
新丸ビルやランドマークタワーといった高層ビルの揺れを小さくする制震装置の振動検出にも使用されるなど、
あらゆるところで使われています。
これから、地震計はさらに小型で高性能になってくるでしょう。
すでに販売しているのですが、南米のチリにセットすると、
その地震が日本で分かるような高度な通信機能を備えた地震計もあります。
少しでも地震の被害を小さくしたい
現在、緊急地震速報というものを気象庁が出していますが、
これは、地震計を各地に置いて、地震が起こったら、
強い揺れが予測される地域にそれを伝えるというものです。
地震波は1秒間に3~4kmしか進まないのですが、
電波は1秒間に30万kmと高速で進むので、
波が到達する前に地震が来ると知らせることができます。
ただ、少し離れていれば時間差があるから役に立つのですが、
すぐそばで起こったら緊急地震速報はあまり有効ではないという面があります。
この欠点を補うため、うちでは、地下深くで起きた地震の波が地表に到達する前に予知しようと、
地下の深いところに設置できる地震計を開発しました。
今、地下3,000mの深い井戸に地震計を置いて、なるべく早く地震を察知するべく実験中です。
日本は何千mも掘ると温泉が出てきて、非常に高温になってしまいます。
半導体ではなく、光ファイバーを使うことで、高温に耐えられる最先端の地震計が可能になりました。
仕事は自分で見つけるもの
若い人には、新しいものに是非チャレンジしてほしいですね。
また、社員にもいつも言っているのですが、
仕事は上から与えられるものではなく、自分で見つけるものだということです。
忙しい人は、自分で次々と仕事を見つけるからいつまでも忙しいが、
暇な人は、自ら仕事を見つけるという努力をしていないので、ずっと暇なのです。
まず、自分で仕事を見つけて、自分でやりなさいと言いたいです。
もう一つは、嫌な仕事だなと思っていても、一生懸命やっていると面白さが出てきます。
言われた事はやる必要があるが、そこに自分の創意工夫を追加すればよいのではないでしょうか。