代表取締役社長 松浦 文康

アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 松浦 文康

代表取締役社長 松浦 文康

アドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズ株式会社
設立 2004年4月1日
事業内容
  • 蓄電装置・蓄電装置用回路・周辺機器・
    材料の研究開発、 製造、販売、保守、教育、講習、コンサルテーション
会社HP http://www.act.jp

ベンチャー企業の社長になるとは思ってもいなかった?!

当社はキャパシタ(蓄電池)の新技術を通して『エネルギーの革新』を図り、
地球の環境を守る企業を目指しています。
画期的な蓄電デバイスを取り扱っているので、非常に魅力的な分野として
現在注目を集めています。

会社設立は2004年ですが、私が代表取締役社長に就任したのは、
2009年になります。
この会社が社長として2社目になります。元々日本電子株式会社の
経営企画・戦略を中心とした管理畑を歩んできましたが、
同社の子会社である1社目のソフトウエア会社の社長を経て
2009年度に当社社長に就任しました。

私の持論として「本社の舵取りをする人材は、関連会社などで
人事・経営戦略の経験を積むのが望ましい」と考えておりましたので、
1社目の場合は自然の流れとして受け止めておりましたが、
2社目にベンチャー企業の社長になるとは思ってもおりませんでした。

組織や会社を盛り立てるのは『チーム力』

皆さんは、まだ企業組織を知らないので、親会社・子会社の関係性には
イメージが沸かないでしょう。
同じ子会社と言っても、100%連結子会社であるかないかで、
大きく違いが出てきます。
それは、経営で一番重要ともいえる<資金力>です。

100%連結であれば、資金的な負担は本体が面倒を見てくれますが、
当社の場合は、本体からカーブアウトして、別の事業会社さんや、
ベンチャーキャピタルさんからの出資を受けて運営されていますので、
事業化のスピードアップや資金について常に細心の対応が必要です。
限られた資金で最大の効果を上げるためには、
あらゆる意味で強い組織を作る必要があります。
この部分は、就任当初から一番苦労した点です。

私は経営者として何よりも気を使ったのは
「社員ひとりひとりに適材適所で仕事を与える」ことです。
組織の集合体である会社を盛り立てるのは<チーム力>です。
そのチームが上手く機能するためには、まず人を知ることが重要です。
上下の立場ではなく、一個人として、話し合っていけば
お互いが理解できるポイントを必ず見つけることができます。

社長とは人事そのもの

日本電子で働いていた頃から、
常に「ひとりの力ではモノは作れない」と実務から学んだことも
大きく影響していたと思います。
製品は、幅広い技術の集合体です。もし、優秀なエンジニアばかりを
集めても、相性・能力・経験には個性があり、バランスを意識した組織を
作っていかなくては、チーム力を高めることは不可能です。

親会社から突然来た私が社員と、早々上手くコミュニケーションを
取れる訳もありません。
1社目の会社では、120人ほどの規模でしたので、まず私が始めたのは、
軽くお酒を飲みながら、ピーナッツを肴にして談笑をする、
所謂「ピーナッツミーティング」です。
とにかく、社員の顔と名前、性格を知らなくてはチーム状況を
把握することも出来ません。

また、私は理工系出身ですがエンジニアではありません。
分からないことは素直に聞く!ことを心掛けていました。
それに、組織というものは、少しの油断から業務だけでなく、
人間関係の不具合など色々な歪(ひずみ)が発生してきます。
つまり、コミュニケーションを怠らずに手直しをしなくては、
機能しない部分が必ず出てくるのです。

ですから、社長とは「人事そのもの」であり、
最大の役割はチーム力の阻害要因を見つけ、患部を直すことであり、
そのためにあるゆる<調整>行う調整役なのだと実感しています。

最大限のベストを尽くして、ベターな成果を目指す

我々が取り組んでいる<リチウムイオンキャパシタ>という事業は、
まだまだ市場規模は大きくありません。
実は、蓄電デバイスは元々量産効果が出やすい商品なのです。
大規模に資本を投下し、大量生産をした方が良いのですが、
まだ新しい技術なので市場が十分とは言えません。
つまり、現状は技術が浸透しない限り、コストが下がらない
厳しい状況ですが、今後必ず伸びる事業だと確信しています。

例えば、東日本大震災を契機に話題となっている太陽光発電には、
蓄電デバイスが必要不可欠です。
この<リチウムイオンキャパシタ>は、充放電性能能に優れている上に、
天候に左右される自然エネルギーを実用的なレベルに安定化させることができます。
特に太陽電池と相性の良いデバイスであり、
これから迎える省エネ時代においては、将来性を秘めています。

話は変りますが、往々にして優秀なエンジニアほど
「時間と金を掛けても自分が満足のできる製品作らなくては気が済まない」もの。
しかしそれでは企業経営は成り立ちません。
ベスト商品が、タイミングを逸したり時間経過次第では、
明日にもベスト商品の地位を失うことが多いのです。
どの時点で開発フェーズから商品フェーズに移行するかを判断するかは、
まさに経営者の役割です。

私自身は「与えられた制約でBestを尽くす、結果としてBetterな結果でも
お客様や市場の満足を優先することのほうが大事だ。
Betterで止める勇気が必要だ。」を信条としています。
ですから一日も早く当社の商品を市場に広め、
クリーンエネルギーの実現に寄与したいと考えています。

次世代クリーンエネルギー分野で生き残るために

現在、この分野には大手も含めて4社が参入していますが、私は大賛成です。
環境に有意義な新しい商品やシステムを市場に提供していくには、
1社では限界があります。
もちろん、厳しい競争は避けられませんが、すぐれた技術・性能・商品を
知ってもらうためには、競争が必要不可欠です。

もし、生き残るための条件があるとすれば、
それは<資金力>と<迅速な意思決定>です。
当社の競合は、殆どが大企業ですから<資金力>が脅威とはなります。
しかし、我々は逆に組織が良い意味で完成しきっていないので、
<迅速な意識決定>が可能なことが最大の強みです。
つまり、やり方によっては資金調達に関しても、
これらがプラスの方向に働いてくれます。

全く新しい市場を創りだす仕事ですから、
鍵となるのが先ほどもお話した「チーム力」。
全社員が「ひとつの目標に向けて如何にベクトルを合わせていけるか」
が大事なんです。
実は、当社のエンジニアは、この分野で開発ベースでの経験者のみ。
まだ市場で成功体験を得た人はまだいません。
しかし、クリーンエネルギー実現への想いは誰よりも強い社員ばかりですから、
ある意味でやりがいのある面白い仕事でもあります。

自己主張は<実>が伴ってこそ!

就職活動において、自己主張は大事なファクターではありますが、
最近の傾向を見ていますと口だけの人が多いと感じます。
就職ガイド本やマスコミ、インターネットの受けウリで、
中身が伴っていなような気がします。
薄っぺらな自己主張で謙虚さを見失っている感があります。
企業に入って一番求められるのは、「あいつに任せられる技術・能力」を、
ひとつでも身に着けていることです。
まず、ひとつ身につければ、それが自信になって、
周囲の色々なものが見えてきます。

それと、海外に出ることを怖がらない、チャンスがあれば
まずは掴んでみるべきです。
私も海外勤務のチャンスがありながらも、実現に至らず
今でも悔しい思いをしています。
仕事で様々な国の方と仕事をすると
<日本人より日本人らしい人は世界に沢山いる>と分かります。

また、理系・文系に限らず身に付いた勉強をして欲しいと思います。
特にモノづくり企業は、採用となると育成の観点から見ても、
大学院卒が中心になる傾向にありますが、
それは知識の点で「話が通じる」からに他なりません。
4年生卒程度の知識が実社会で役立つことは、殆どありません。
「これは!」と思った知識・技術を貪欲に学ぶ姿勢を持って欲しいですね。