代表取締役 上田 宏樹

株式会社アイダックデザイン 代表取締役 上田 宏樹

代表取締役 上田 宏樹

株式会社アイダックデザイン
設立 2000年2月15日
事業内容
  • 雑誌のデザイン
会社HP http://www.aidac.co.jp/

仕事に不満を抱えていた会社員時代

大阪芸術大学在学中は、飲み屋でアルバイトをしていて、
卒業したら自分で飲み屋をやろうなんて思っていたんですよ。
しかし、大学3年生になった時に父親に呼ばれて、
「とにかく一度は月給取りになれ、自分でお金を貯めて、
社会でもまれたら自分の人生だから何をやってもいい」と言われました。

そこで大学の就職課にいったところ、パッケージや包装資材を
扱っていて酒のラベルも作っている会社の求人があったんです。
酒が好きだったので、「いいなあ」と思いました。
自分がデザインしたラベルがついている酒が飲めたら、
夢があって素敵じゃないか、と。就職試験の課題は
かなり多かったのですが、頑張って入社できました。

ところがそこは商社の子会社で、営業が花形、
制作は窓際、という雰囲気でした。だから、扱いも結構ひどい。
例えば、営業がお客様に「デザイン料はおまけしておきますから」
なんて言って決めてくるわけですよ。
営業が扱う金額は何億という単位であるのに対して
デザインは何十万、多くても百万単位なので、
どうしてもそうなってしまいます。
「ふざけんな、こんな会社は辞めてやる」と
心の中ではいつも考えていましたね。
しかし辞めたとしても次にいくアテはないし、
それなりに大きな仕事もあるので踏ん切りがつきませんでした。

苦しかった起業初期

そんな時、独立を目指している同僚に誘われて、
起業家を育てるビジネススクールに入りました。
自分も将来のために勉強しようと思ったんです。
当時はベンチャーブームだったこともあり、
会社の作り方、企画書の立て方、資金調達の仕方、
M&Aやマネーシフトなどを徹底的に仕込まれました。

そしてスクールに入って1年後の24歳で、
スクールの後輩と二人で会社を始めました。
その後輩は、今の会社で専務をやっています。
立ち上げた当初は、お金がなくてデザインと言っても
単なるアルバイトのようなプライドが傷つく仕事もやりました。
それでもお金がなく、夜はアルバイトもしました。
私がデニーズで、専務が牛角です。

デザインの仕事とアルバイトの両立はきつかったです。
POSシステムを上手く使うことができなくて
女子高生に命令されたりするのがイヤでイヤで
早く辞めたいと思っていましたが、やらざるを得ませんでした。
当時は中目黒の事務所兼住居に専務と二人で住んでいて、
そこの家賃が15万円。私達にとっては高かったのですが
打ち合わせなどでお客様も来るので、
見栄えが悪いところにはしたくなかったんです。

実績の重要性を実感!

仕事に関しては、初めのうちは何も分からず、
出版社に電話をする毎日でした。
最初にレギュラー化したのは雑誌の仕事です。
3ページか4ページを納品すると、「来月またよろしくね」
と言われるのですが、これはいい!と思いました。
大抵の仕事は1件が終わるとゼロになるので、
そこからまた積んでいくのが大変です。
しかしレギュラーの仕事が、徐々に10ページ、
20ページ、100ページと増えていけば
何年か先には食えるぞ!と考えたんです。
結果的に、現在は4,000ページほどやっています。

初めてのまとまった仕事は、雑誌一冊分のデザインでした。
ただ、「一冊丸ごと」を、どうしたらいいか分かりません。
知り合いのデザイナーに来てもらって5人くらいで
一生懸命やったのですが、上手くはいきませんでした。
仕事自体はやりきったものの、実力不足だったのです。

しかしそれでもこの仕事は、私たちの「実績」になりました。
これは本当に大きかったですよ。
当時、私達は1冊やったことで自信満々でした(笑)。
だから営業に行った時の顔つきも違っていたでしょうね。
それまでは、「どうせ行っても断られる」と思っていたのが、
「このようなものができるんです」と言えるんですから。
そういう意味でも、実績がいかに大事かということを痛感しました。

営業をする上では、数打つことも大事。
簡単ではありませんが、30人か40人のうちの1人くらいは
仕事をくれるものです。するとそれが実績になる。
その実績を引っさげて再び行ったら、
最初の時よりはハードルが下がるはずです。
それで2件、3件と増えていってさらにハードルも下がっていくのです。
だから、最初から諦めてしまわずにチャレンジしてみることも必要です。

デジタル化の波の中で

仕事が軌道にのってからは、かなり順調で、
1年後には「有限会社アイダックデザイン」として法人登記もできました。
しかし、その頃から出版不況がささやかれ始めていました。
インターネットやデジタルコンテンツの普及で、
電子書籍などやWEBマガジンの台頭してきたからです。
それで我々もWEB事業部をつくりましたが全く上手くいかず、
お金にもなりませんでした。それで色々な人に聞いたんです。
「どうなんですかね。このデジタルというものは」
「どうしたらデジタルでお金を落としてくれますかね」

すると私の周りでは、「漫画や小説はデジタルでもいいけど、
雑誌はやはり紙の方がいい」という人が多かったんですね。
それでだんだん「やっぱり雑誌は紙だなぁと」思うようになりました。

そこで今後は紙をWEBに置き換える発想ではなく、
もっと売り上げアップにつながる宣伝に利用していこうと考えるようになりました。
小さな試みですが、雑誌紹介のブログもやってます。
季節やその時のトレンドに合わせて雑誌を紹介し、
アメブロランキングでは常にTOP3にランクインしています。
http://ameblo.jp/magaboss/

雑誌というのは、それほど宣伝されていません。
電車内や新聞の広告、せいぜいそんなものですよ。
これだけモノが売れない時代で、宣伝をしないなんて
売れなくなってしまうのも当然です。

弊社では、ブログで色々なジャンルの雑誌を紹介させてもらっています。
その中でも、私が一押ししているのが「枻出版社(えいしゅっぱんしゃ)」の雑誌です。
とにかくビジュアルが抜群で、ここの出版物を見たら「紙の本っていいな」と思いますよ。
ちなみに弊社のブログではかなり宣伝させてもらってますが、
特にお仕事をいただいているわけではありません。
是非お願いしたいと思ってはいますが(笑)。

衰退するからこそ勝ち組を狙う

紙にはデジタルでは絶対に伝わらない手触りや匂い、
高度な印刷による鮮明な写真と感性を育てるには
とても重要な要素があります。
最近は、小学校の教科書も電子タブレットにして、
紙の教科書がなくなると言われていますが、
それは子供の感性を絶対に悪くします。

教科書に限らず、雑誌や辞典、カタログなどが減っていくことで
そうした感性に影響がでないよう皆で紙を守っていかなくてはなりません。
そのためには弊社で一番やらなければならない事は、
読者の方に立ち読みで済ますのではなく、是非買って家に持って
帰ろうと思ってもらえるような素敵なデザインを生み出していく事ですね。

この業界は残念ながら衰退していく業界です。
しかし、衰退していった他業界において、
最後に残ったところは勝ち組になる可能性が高いです。
何年後かには「雑誌のことならアイダックに言えばなんとかなる」
というような会社にしたいですね。

学生へのメッセージ

私達の次の世代や子供達は未来に夢を持つのが難しくて、
かわいそうですしね。「そんな世の中でゴメン」と言いたいです。
これからは日本国内だけでは中々難しいと思います。
若い人は、世界を相手にできるような、
グローバルな人間になってほしいと思います。

最後に僕は「やればわかる」を大事にしています。
「やれば出来る」とはちょっと違うんですが。
まぁ失敗もありますからね(苦笑
もちろん出来るまで(成功するまで)やり続けるのは大事です!

とにかくどんな困難な、あるいは嫌な事でも
やる前から逃げたら何もわかりません。
常にチャレンジスピリットでトライしたほうが良いと思います。