代表取締役社長 大久保貴之

代表取締役社長 大久保貴之

設立 2003年4月4日
事業内容
    • 3D地図販売、3Dビューア開発
    • 地図ASPサイト構築・運営
    • CG映像制作
    • 360度パノラマ映像システム開発
    • カラー3Dプリンタ自動模型製作
会社HP http://www.soratechnology.com/index.html

趣味から仕事に

何かにハマると、とにかく突っ走る。
そんな性格からか、起業に至るまで様々な経験をしてきました。

親の仕事の関係で子供の頃から海外を転々とし、大学は神学部へ。
そこで旧約聖書の言葉、ヘブライ語などにハマり、
就職活動もせず一年半ほど、イスラエルやドイツに滞在し、
キブツ農場で働きながら語学を習得。

帰国したのは1993年。
耳慣れない「バブル崩壊」という言葉を初めて体感。
語学関連の会社に就くべく就職活動を始めたものの、
「氷河期時代の到来」で、中途の採用はほとんど無く、断念するしかありませんでした。

結局、拾って頂いたのは測量会社という全く未知なる世界。
一応英語が使えたので、国際部に配属。
そんな中、営業マンを6年間勤めたある日、
手に職が無いことを負い目に感じた私は、測量の勉強を始めようと思いました。

早速、夜間の専門学校に見学行ったところ、
たまたま隣の教室でやっていたCG映像製作の授業に目を奪われ、
「これだ!」と直感。
すぐにCG(コンピュータ・グラフィックス)の魅力にハマり、勉強し始めました。

他人から見たら、趣味の領域を超えていると思われるかもしれません。
気が付けばこの趣味に使ったお金は、夜間学校などの授業料も合わせて、なんと700万円弱。
今振り返ると、ここまでCGにハマることが無ければ起業することも無かったでしょう。

なのでCGにはまった事は、自分の道が開けた瞬間だったのです。

イノベーションを起こす

映画を見ていると、よく出てくるのは都市などが破壊されるワンシーン。
ある日、「立体的な地図をCG映像に使えばもっとリアルにできるんじゃないか?」と思うようになったのです。
測量技術という硬い世界と、CGという華やかな視覚化技術を融合させることで、
非常にリアルにビジュアライズされた、「3Dマップ」ができる。
現在で言うところのグーグルアースの様な事を思いついたのが、1999年頃。

そんな中、2000年頃に小笠原列島の三宅山が噴火。
その時、たまたま社内でテレビ局を担当する営業マンが、
「これってCG映像で表現できますか?」
と、相談を受けました。
そこで会社の寮に戻り徹夜で測量したデータを元に地形変動をCG映像で再現。
次の日、早速そのテレビ局の報道番組を見ると、昨晩作ったCG映像が出ることに。
趣味で始めたCG映像製作が、
まさか大勢の方に見られ、それが役に立つ日が来るとは想像すら出来ず、
同時に
「もしかして本当にビジネスになるのでは?」
と思うようになりました。

しかし、2001年当時、まだまだCG的な3Dマップは理解される事はありませんでした。
そんなある日、会社の上司に直談判し、
「CG的な3Dマップをやりたい」と申し上げたところ、こう言われました。
『確かに面白い。でもこれが事業として成り立つのか否かどうかまだ誰も判らない。
従ってCGと測量技術の融合で出来たフォトリアルな3Dマップをやるにはまだ早い』
と。
そういわれた時、「おっしゃる通り」と納得するのと同時に、
「だけど今からやらないと間に合わない」という直感が揺れ動き、
結局この瞬間に独立を決意しました。

3Dマップの製作

2002年12月に個人事業主として「宙テクノロジー」を設立。
頭の中では完璧なビジョンがあったものの、実際は全く思い通りになりませんでした。
何故なら、市場とお客様がいなかったからです。
このフォトリアルな3Dマップという概念はまだ理解されず、そのニーズは全く未知数でした。
その結果、前職を退社してから6か月間収入なし。
退職金はすべて使い果たしました。

「お金が底を付く。もうダメだ。」
と思っていた2003年3月のある日。
イラク戦争で米軍部隊が首都バクダットへ到着する直前のことでした。
私は、たまたま首都バクダットの高解像度の衛星画像を入手でき、それを3Dマップ化。
それを知り合いを通じてテレビ局にCG映像を渡しました。
すると、「これは凄い。即採用!」との声。
その日のニュース番組で会社の名前入りで紹介されました。
初の受注案件と入金。
銀行手帳を見たときは本当に手が震えました。
これを機に同年4月4日、「宙テクノロジー株式会社」として法人化。

これで好スタートと思いきや、
どの案件も、「試作」的な範囲を超えず、
そこから2年間、赤字続きと苦しい日々。

そんなある日、ターニングポイントと言うべきある出来事が2005年に起きたのです。

それはある3D関連会社の営業マンが弊社の3Dマップを見たときでした。
『大久保さん、不動産業界には来ないでくださいね』
との一言。
冗談まじりに言ったその言葉が気になり、その後すぐに調べてみた結果、
不動産業界ならば3Dマップの技術が活かせることにやっと気付いたのです。

それはマンション販売促進用のツールとして、3Dマップを使えば、
非常にリアルに街全体が再現でき、
CG映像のみならず日影や眺望のシミュレーションなど細部まで表現が可能なのです。
2005年に代理店を通じて受注した、川崎にあるタワーマンションの3Dシステム。
この時のことは今でも忘れません。

ここでようやく、自分達のビジネスモデルとマッチする市場が見えてきたのです。

どこにニーズがあるかは分からない

去年から流行し始めた3Dプリンタ。
実は、私達は2005年からこれを使って仕事をしていました。

ある日、大手マンションデベロッパーさんから、
「CGだけじゃなく、何か違う方法で3Dマップを表現出来ないか。」
と一言。
いろいろとネットを検索しているうちに、何やら「3D造型」というキーワードを発見。
早速日本の代理店を訪問し、ウチの3Dマップを使って出力開始。
その結果、今まで見たことが無い詳細な3D地形ジオラマ模型が完成。
手作りの地形模型だと建物を1棟1棟設置するだけでも相当な時間とコストがかかりますが、
3Dプリンタだと実際の建物高や形状を忠実に再現。
この見た事も無い新技術が、新たなニーズを生み出し、
不動産業界のみならず都市計画や民間の博物館など様々な場所で採用されました。

また3Dマップデータそのものも、公共関連以外でも徐々に注目され、
ゲーム業界や映画産業、テレビCMなどの背景シーンに採用されたり、ここでも新たなニーズを開拓。

そういう意味でも、私達の事業はまだまだ発展が段階だと思います。
自分達の強みは、とことん細かく、正確な3Dマップを作ることと、
まだ知らない最新技術と連携して、
より発展しないといけないと思っています。

好きだから前に進む

会社経営12年間を振り返って、たまに思うことがあります。
リーマンショックなどの逆境でも生き残った会社の特徴はなんだろうか?
それは経営者の信念が強いからなのか。
もちろんそれも大事な要素ではあるが、私が見つけた答えは、
「それが本当に好きだから」
というキーワード。
特に不況の中で生き残るには、並大抵の精神力や卓越した経営方針が必要と思われがちですが、
結局1日が終わって布団の中で目をつぶっても、
「あ、明日はアレを試してみよう。それがダメならあの方法も。」
とワクワクしている自分が存在している事が、大事なんだと思うのです。
自分で言うのも変ですが、私はもともと社長に向いている性格だと思いません。
父親が銀行員なのにお金の流れも知りませんでしたし、
大学時代はあまりアルバイトもやったことがありません。
そして、CGの勉強を始めたのは28歳の頃でした。
しかしそれでも社長をやっているのは、
自分がやりたい事に出会い、この技術をどう拡大し、どう世の中に貢献していこうという、
ワクワク感があったからです。
これから独立する人がいるとすれば、
まず第一にその内容が「好き」で、
それが世の中で貢献出来ると思うのであれば、
一度独立してチャレンジするべきだと信じております。