代表取締役社長 三ツ澤 博

代表取締役社長 三ツ澤 博

設立 1921年5月
事業内容
    • 飲食店の経営
    • 食堂受託運営業務
    • 高齢者向け宅配弁当サービスの提供
    • 厨房用品卸業務
    • プロマイドの撮影及び販売
会社HP http://www.marubell.co.jp

小学生の頃から帝王学を社長の親から学ぶ

創業は大正時代から。
親からは物心ついた頃から「後を継ぐんだぞ」と言われて育ちました。
だから中学、高校、大学でも他の仕事に就こうとか、
就職活動をしようなんて気にはなりませんでしたね。
それぐらい社長になることを強烈に刷り込まれていたのです。
もっとも引く手あまたの時代でしたから、
周りも今のように就職活動で悩むという感じではありませんでしたけどね。

ところが、入社はしたものの、
当初は社長になるという気持ちはなかったんです。
義理の兄なども頑張っていましたし、後任は他の人でもいいんじゃないかと思っていたからです。
本格的に会社の舵をとるようになったのは経営が傾き始めてからです。
傾きかけた会社を喜んで継ぐ人はおらず、私に白羽の矢が立ったんです。

引き受けるからには条件を提示しました。
それは「経営陣を一新してほしい」ということ。
舵をとっていくにあたり、その後の運営をスムーズに進めていくためでした。
条件は聞き入れられ、社長の座に座ることになったというわけです。

                                                                                                                                                              

なぜ売れたかを常に考え、挑戦を繰り返し実践。

プロマイドの市場を独占できたのは
「どんな写真が売れるのか」を徹底的に分析をしたからです。
どんな写真が好まれるのか、どういう売り方をしたら売れるのかなど、
とことん考えましたね。

当時、天才職人撮影師が苦労の末、考えに考えた結果導き出したのが
「プロマイド売れる三原則」です。
まず考えたのが顔の「アップ」。
全体像の写真では遠くから見た時と同じで何ら感動がありません。
しかし顔のアップであれば写真でしか見ることができませんから、売れるんです。

アップの次に考えたのが「視線」です。
撮影する時にスターの方々には
「レンズをファンだと思って見てください」とお願いしました。
当然写真を見る人はじっと見つめられたような気分になりますから、また売れます。

そして最後はやっぱり「笑顔」ですよ。
どんなスターでもムスッとした顔ばかりしているのでは人気が出ないでしょう。
写真でもそれと同じでファンは笑った顔を見たいんですよね。
今では当たり前になっているこれらの三要素をしっかり押さえたことによって、
他社を圧倒し「マルベル堂のプロマイド」が
固有名詞になるほどに人気が出たんです。

また、映画は総合芸術ですから
人気が出たといっても
役者が良いのか、監督が良いのか、脚本が良いのかというところがはっきりしません。
もっと細かく言えば
役者といっても主役が人気なのか、女優が良いのかなど人気の度合いが分からないもの。
その点、プロマイドとして販売してみると一目瞭然です。
誰が売れるのかすぐに分かってしまいますから、
役者たちから「売れるプロマイドを作ってくれ」と
要望が多くあがったことは言うまでもありませんね。
分析と挑戦を繰り返した結果、多くの需要を獲得していったというわけです。

奉仕の心で接すること。サービスの向上

プロマイド事業だけでは好不調の波があり、安定して利益をだせる事業を模索していく中、
祖父が閉じたレストランを父がリベンジで再開させ、
産業給食運営の一つでもあるレストラン「Bell」を開店し飲食事業に参入。
日本で初めてカフェテリア方式を導入するなど、
注目も集めることにも成功したのが大きかったですね。

そして時代が変わると共にお客様のニーズの変化を感じ、
平成の時代に突入して目をつけたのが弁当の宅配事業。
オフィスやおせち料理など一般向けにはもちろん、
足の不自由な高齢者や、調理ができない独居老人にも
おいしい食事を食べてもらいたいという思いから始まった事業でした。
台東区の社会福祉協議会から委託を受けたことを皮切りに
墨田区、荒川区からも指定を受けるなど、
事業は順調に成長。
今では産業給食運営としての営業所の数も40以上に増え、
全従業員はパート社員を含め400名以上まで拡大しました。

そんな当社が大事にしているのが「奉仕の心」。
ただ単にお弁当を届けるというのではなく、
渡す際にちょっとしたコミュニケーションを大事にしている点が差別化にもつながっています。
そのベースにあるのが奉仕の心なんです。

会話をすること自体は働くスタッフ側からしたら一円にもなりません。
むしろ労力を使いますし、時間も費やします。
しかし、それで割り切れない部分がサービスの内容に差を生むんです。
単純に損得感情だけで動くのではなくて、
「こうしたら喜んでくれるだろうな」と思って仕事をする先にサービスの向上があるんです。
だから当社では奉仕の心をもって仕事に向かい合えることが第一だよと
スタッフには言っています。

弁当の配達、高齢者のための充実したサービスの提供

これから目をつけているのはサービス付高齢者住宅。
宅配弁当のサービスを始めたのが10年以上前の話になりますが、
今後はより一層少子高齢化が進むと考えると需要は増すばかりでしょう。
何より私自身もあと10年もすればお世話になるかもしれないと考えると、
老後を快適に過ごせる高齢者住宅があるのは安心ですから。
自分の将来のためにも、若い人たちには頑張ってもらいたいと思います。

それとプロマイドの強みを生かして取り組んでいるのが、
当社が抱えていた懐かしいスターたちのネガをこの先も保存すること。
当然過去のプロマイドを焼き増しして、販売することもしていますが、
それもこれも私どもが保存しないとなくなってしまうんです。
文化遺産や伝統などと同じで、
積極的に保存していこうという姿勢がないと守り抜いていくことはできないのです。

そしてネガは思わぬ活用の仕方も。
食事を提供している施設や老人ホームなどで写真を見せると
「懐かしいね」ととても喜んでくれます。
事実、回想療法といって
思い出を辿ることが認知症の進行を止まらせることにも有効だと実証されています。
これもプロマイドの副産物として、当社独自のサービスです。

言われて動くだけではなく、自分から考えて行動をしてほしい

私が後を継いだように、息子が後を継ぎたいと言ってくれています。
その際に頭を悩ますのは力を貸してくれる社員を揃えることです。
身内が跡取りとして納まるとモチベーションを失う社員が現れることも珍しくありません。
特に管理職として会社のために尽力してくれていたような社員に多いから、厄介なんです。
「頑張ったってどうせ限界が見えてるし…」
と思ってしまったら仕事への熱が上がらないのもよくわかりますけどね。

そこで代替わりの際には新しい戦力を補強することも考えておかなければいけません。
一番良いのは何色にも染まっていない新卒ですが、
今現時点では中途の方が割合が多いので、
いかに色を抜いてもらうかが大事だと思っています。

過去に、入ってきた社員に「給料は誰が払ってると思う?」と尋ねたことがありました。
すると「会社から」「社長から」という答えが返ってくるんです。
大きな間違いです。
お給料はお客様からいただいているんです。
だから社長や上司の言うことよりも聞かなければいけないのは、
お客様の言うことなんですよ。
誰のために仕事をするのか、何のために仕事をするのかをよく考えて、
どう行動するのが一番良いのかを考えて仕事をしなければだめ。
ただ上司や会社から言われたことだけをこなしているような人には成功はありえません。
たとえ遠回りでも、要領が悪くても、
「こうしたらお客様の声に応えられるのでは」と考えて仕事をする人に
チャンスは到来するものですから。

失敗はつきもの。常に挑戦をしてほしい

プロマイドから始まり、レストラン、産業給食、弁当宅配事業と
いろいろと新しいことに挑戦してきた当社。
社員からやりたいという声があがればとにかく挑戦してみるという姿勢で
これまで会社を存続させてくることができました。
もちろん、全部うまくいってきたわけではなく、山もあれば谷もあった…
波乱万丈そのものでした。

唐突ですが、皆さんは挑戦は何回まで許されると思っていますか?
仏の顔も三度まで、三度目の正直など、世間一般には3回くらいでしょうか。
プロ野球の世界でも3割打てれば一流だと言われます。
つまり一流のバッターでも3回のうち2回は失敗しているということです。
だから1回やって失敗したくらいでめげていてはいけません。
失敗は当たり前ですから。

当社ではその風潮が強いのが特徴的。
3回同じ失敗をしたとしても「他のことをやってみろ」と言います。
決して「もうやめろ」とは言いません。
一番いけないのは挑戦そのものをやめてしまうことだからです。
あきらめないで頑張ってください。