代表取締役 甲斐 真
設立 | 1994年7月 |
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事業内容 |
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会社HP | http://www.hatagoya.co.jp/ |
フリーターを経て
子どものころは、まだあちこちに防空壕があったり、
怪我をした傷痍軍人が橋の下で暮らしていたり、
戦後の雰囲気が、町のいたるところに残っていました。
みんな貧乏で、まさに映画「三丁目の夕日」の世界。
大変でしたが、皆一生懸命で、夢を持てる時代でしたね。
親からは、良い学校に行って大きな会社に入ることを強要されましたが、
サラリーマンなんて人間の墓場みたいなところだと思っていたし、
会社に入らず、フリーターをしていました。
その後、大学に行き、
映画好きの仲間と渋谷で上映会をやったり、映画監督にチラシを送ったり、
雑誌に紹介されたこともありました。
でも、一緒にやっていた仲間が一足先に映画のプロダクションに入り、
想像していた以上に厳しい環境だと知り、断念。
たまたま縁のあった住宅会社に入りました。
軽い気持ちで入った会社でしたが、
結局10年以上続け、
社会人としてのノウハウはすべてそこで教えてもらいました。
その後転職し、2つの会社で働きました。
いずれも経営者のカリスマ性にほれ込んで入った会社でしたが、
ちょうど友人がアメリカから帰ってきたのを機に、
友人と現在の旅籠屋を立ち上げました。
日本の閉塞感を打破したい
事業をやると決めてから、友人とアメリカのモーテルを泊まり歩いたのですが、
それが私の琴線に触れました。
若いころに感じていた日本の閉塞感を
変えていけるようなひらめきやインスピレーションを得た気がしたのです。
もう後がない、という後ろ向きの面と、
これだ!という前向きさと両面がありました。
外国に行って感じたのは、
日本は多様性に関してキャパシティが狭い世界だということ。
いろんな人種が集まるアメリカで、
今までの悩みが、もう悩みではなくなってしまうほど小さいと気づいたんです。
アメリカのモーテルでは、部屋とベッドを与えられるだけで、何もしてくれません。
それ以外の時間はお前の好きなようにしろ、ということなんです。
アメリカのベースは、こういう感覚の上にできていて、
成功しても失敗してもすべて自分の責任になる、「自由」の厳しさも知りました。
一方、日本はその逆。
どっちがいい悪いではないけれど、世話の焼きすぎ。
旅籠屋の施設を日本中に増やすことで日本人のライフスタイルが変わり、
日本がもう少し、自立した世の中になるんじゃないかと思ったんです。
日本における米式モーテルのパイオニア
創業から約20年。
日本社会に多少の影響を与えてきた自負はあります。
日本では普通、ビジネスの王道は、
付加価値を上げて売り上げを伸ばすスタイルですが、
アメリカのモーテルをベースにした旅籠屋は、その真逆。
付加価値を減らしています。
お客さんから、
「スリッパ・歯ブラシを置いてほしい」「物を売ってほしい」と
クレームや要望もこれまで何度か寄せられてきましたが、
最低限のアメニティで素泊まりスタイルの宿を提供する、
というスタイルは変えていません。
日本の消費者は世界で一番わがままですが、
日本のスタンダードは、世界のスタンダードではありません。
スリッパや歯ブラシなどを置かないのは、
使い捨てのものを置いて置かない、というポリシーでもあります。
そのこだわりを今も守っています。
あれもない、これもない、とお客さんは驚き、違和感を感じると思いますが、
その一歩先にあるメッセージを受け取ってくれるはず。
そう信じています。
モーテルを日本のインフラに
今後の目標は、
現在日本に40数店舗あるロッジをもっと増やしていくことです。
コンビニや郵便ポスト、宅配便のように気軽に利用できるインフラ施設として、
安く、でも必要十分な環境を提供できる存在になりたいと思っています。
将来的には、宿に付加価値を求めない旅の仕方を提案していきたい。
宿の魅力を味わいたくて行く旅も当然ありますが、
そうでない旅もあるはずです。
旅はその場所や時間を楽しむためにあり、
変に付加価値がある宿は、ときに邪魔になります。
私は、いい時間を過ごしたければ何もない宿にいけばいいと考えます。
そこでは生の人間の会話があり、
素の自分を出すことができると思います。
そのためには、ゴージャスな宿でなくてもいい。
宿自体が主張しすぎないことが大切です。
店舗を増やしていく上での課題は、数が増えると、統一性を維持したり、
人的管理がどんどん難しくなっていくことです。
あまり背伸びをすると肝心なところがずれてしまうので一歩一歩ですね。
質的な変化が求められる部分と変えてはいけないところの両立が大変です。
自分で扉を開けられる人になろう
社員数は現在約110人。
ほとんどは住み込みの支配人です。
定年退職をして第二の人生を、と考えて始める夫婦もいますが、
最近は若い人も増えています。
私たちの会社では、
能力と意欲さえあればいくらでも仕事ができます。
経験を積んで、1つのステップにしてもらってもいいと思っています。
若い人と話していると、よく「就職活動が大変」と聞きますが、
就職雑誌だけ見るのではなく、もっと視野を広く働く場所を探してほしいと感じます。
中小企業の多くは、求人雑誌に載せていなくても
いい人材があれば、来てほしいと思っているはずです。
気になる会社があったら、
ダメ元でも話をぶつけてみたら
「来月からいらっしゃい」ということになる場合だってあります。
もっと自由にものを考えてほしいですね。
用意されないと道が開けないのではなく、
自分の人生は自分で切り開くものです。
扉さえ開けることができれば道はあるかもしれないのですから。
中小企業で力を発揮しよう
息子にもよく言うことですが、
大手企業よりも中小企業のほうが、
実は力が発揮しやすい場合が多いと思います。
大手はやはり優秀な人材がそろっていますし、
そこで力を発揮するために費やす時間と労力を考えたら、
中小企業で飛躍していくほうが、人生の選択肢を広げやすいのではないでしょうか。
大企業にも行けるけど、あえて中小企業に行く、という選択肢もあると思います。
ただ、リスクもあります。
大企業は、組織が大きいだけに別のセクションに移ることができますが、
中小企業の場合、社長や上司と合わなかったりすると、これはもうどんずまり。
転職するにしても、短期間で辞める、というマイナスのキャリアが残ってしまいます。
ベンチャーでは、長いものにまかれる精神ではダメです。
効率が悪くても、おかしいと思ったら、それに向かっていく方法論で進めていかなければなりません。
あんのんと暮らしたいなら、役所に務めればいいし、
やりがいを手にしたいなら、ストレスや緊張感を覚悟で進んでいかなければいけません。
多少の大変さはあっても、新しい道を切り開く満足感をプラスにとらえる発想も必要です。