代表取締役社長 秋山 をね

代表取締役社長 秋山 をね

代表取締役社長 秋山 をね

設立 2001年6月
事業内容
  • 企業社会責任(CSR)の推進支援
  • 社会責任投資(SRI)のための調査
  • 投資助言・代理業
会社HP http://www.integrex.jp

海外留学から就職まで

「これからは女の子でも働く時代が来るから、手に職をつけて働いた方が良い」
小学生時代から母に言われて育ちました。
転勤族だった父と結婚し、栄養士の仕事を
続けられなかった後悔の念もあったのかもしれません。
当時女性が働くことは一般的ではありませんでしたが、
こういった母の教育方針の下、私は「一生働きたい」と考えるようになりました。

大きな転機となったのが、学生時代に選択した英語の授業です。
このクラスには意識の高い学生が集まっていて、大いに刺激を受けました。
当時同じクラスで授業を受けた人の中に、今、注目を集めている経営者もいます。
そのクラスの先生からは、英語だけではなく、
「目を外に向けよ」「自分の視野を広げよ」と、
生きていく上で大切なことも教えていただきました。
周囲に感化される形で、いつしか留学したい気持ちが強くなり、
大学4年の時に交換留学生として渡米しました。

人種のるつぼであるアメリカへの留学は、
多様な価値観を知るには格好の舞台で、非常に貴重な体験となりました。
日本の文化や歴史について尋ねられても
知識不足でうまく答えられない自分に気付かされ、
恥ずかしい思いもしましたが、それがきっかけで自分とは何かということを考え、
自分を知ることが出来ましたね。

大学卒業後には、外資系の証券会社に就職します。
当時国内では四年生大学を卒業した女性の就職率はほぼゼロに近く、
女性の就職が難しい国内企業よりも外国企業で働くことに目を向けました。
留学経験が生かせると思ったからでもあります。

大学院に進学した理由

アメリカの会社で働く内に、アメリカ人と同じ土俵で
相撲をとっても勝てないということに気付き、
どうしたら勝負になるか、何を強みとして活かせるかを考えました。
そこで、日本人としての価値観や強みを活かして
勝負するしかないという結論に至りました。
留学生時代に感じた、自分とは何かという問いかけに立ち戻り、
アイデンティティを確立することの重要性を再認識しましたね。

入社して数年が経過した頃、日本国内はバブル経済に入りかけの好景気の中で、
外資系金融機関が多く参入してきました。
その中の一つに転職したのですが、
1987年のブラックマンデー(株価大暴落)により、
大手投資銀行に吸収合併されてしまいました。
そのまま合併先の投資銀行で働いたのですが、1994年に出産を機に退職します。
ほどなくして離婚をしましたので、シングルマザーとして
働きながら子育てもしなければならなくなりました。

しかし、子供を保育園に預けようにも無職では難しく、
就職しようにも子供を保育園に預けていなければ就職活動すら難しく、
保育園に相談すると「就職するか学校へ通うか」の二択を提案され、
将来の再就職に向けてスキルアップしたいとの思いもあり、
大学院へ進学することを決めました。
大学院への入学後、無事に子供を預けることもでき、
ファイナンスを専攻するようになりました。
以前していたトレーダーの仕事は激務で知られており、
子育てをしながら第一線で働くのは難しいと考えていた矢先、
元同僚から声が掛かり、大学院に通いながら外資系の銀行で
リサーチのアルバイトとして働き始めることになりました。
子育てと学業の両立も無事に成功し、
2年後にファイナンス修士の学位を取得することが出来ました。

独立への想い

大学院を修了後、就職活動をしていた時に、
かつての上司で、証券会社を経営している方に偶然再会し、
就職活動中である旨を伝えた所、
アメリカにある関連会社で人手が足りないということで仕事を紹介してもらいました。
迷うことなく、子供を引き連れ、再渡米です。
2年程駐米した後、帰国し、そのままその証券会社で働き続けました。

ちょうどその頃、SRI(社会的責任投資)という概念に出会い、衝撃を受けます。
これまでは利益第一主義のウォール街で働いていましたので、
投資によって社会を良くするという考え方は新鮮でした。
SRIは中立な目で企業を調査、評価しなければいけません。
既存の企業に所属していては中立な立場を保ち続けることが難しいだろうと思い、
勤めていた証券会社を退社し、2001年に独立をしました。

事業内容としては、CSR(企業の社会的責任)の視点で企業の調査を行い、
データを収集し、運用会社に利用してもらって投資顧問料をいただくという形でしたが、
細かい所までビジネスプランを練り上げるよりも、
とにかく「思い」だけで走り始めたので、最初の3年間は本当に苦労しました。
当時は類似する企業の前例はほとんどなかった上、
企業の不祥事が相次いだ時期でもあったので、
新しいファンドは難しいと思われていたことも苦労した要因だと思いますね。

今後の展開

それでも「SRIをやりたい」一心で乗り切ってきましたが、
SRI事業については長期間に亘る市場低迷もあって、
大きな成果をあげるまでには至っていません。
しかし、アベノミクス効果もあり、株価も上昇傾向にありますので、今後に期待をしています。
一方で現在、事業の柱となっているのが、CSRへの取り組み支援です。
具体的には社員や取引先企業の意識調査(モニタリング)であったり、
社内の問題を相談出来るホットラインの窓口を設けて、
不正や不祥事が起こらないように解決出来るお手伝いをさせていただいています。

今後の展開についてですが、独立当初から「上場したい」とか
「会社を大きくしたい」という気持ちはあまりなく、
今後についても、「持続可能なより良い社会を作る」という
理念に基づいた仕事をしていきたいと思っています。

そして、より良い社会を作るためには、
より良い企業を作る必要があるというミッションを意識し、
何が必要かというニーズに半歩先んじてお応え出来るようにしたいと思っています。

また、昨今では企業のグローバル化に伴い、
当社でも海外展開をする企業の対応に取り組み始めています。
現在、ホットラインやモニタリングでカバーしていて需要がある地域は、
アメリカやヨーロッパ諸国が中心ですが、中国、東南アジア諸国の需要が高まっており、
カバーの範囲を広げているところです。

学生へのメッセージ

近年の学生について耳にするのは、おとなしく、内向きな学生が多いということです。
あまりに内向きに考えてしまって行動が出来なくなってしまうよりも、
若い時こそ外に出て行って視野を広めてほしいと思いますね。
私自身も、学生時代に、意識の高い先生や、向上心のある友人、知人に恵まれたことで、
思い切って外に出て、いろいろな経験を積むことが出来ましたので良かったと思っています。

また、若い内はたくさん失敗して良いと思います。
失敗は若者の特権です。私も若い時にはいろいろな失敗をしました。
勤務先が倒産した経験もありますが、それをきっかけに、
自分の力をつけていかなくてはと自覚することが出来ました。
どんな経験も必ずやプラスになると思います。

そして、どんな仕事が向いているかと考え悩むより、
とにかくやってみることが大事だと思いますね。
一カ所に止まって思い悩んでいるよりも、
あれこれと動いている内にやりたいことや、やるべきことが見つかるものです。
加えて言えば、自分に向いている仕事を探すのも大事かもしれませんが、
目の前の仕事をいかに面白くするか工夫することの方が大切な気がしますね。
とにかく、自分はこうだとあまり決めつけず、
行動派となって何事も前向きな気持ちで積極的に取り組むことをお勧めします。