代表取締役社長 山本 幸裕

キャンバスマップル株式会社 代表取締役社長 山本 幸裕

代表取締役社長 山本 幸裕

キャンバスマップル株式会社
設立 平成18年9月25日
事業内容
  • カーナビゲーション用地図ソフトウエアの開発、並びにこれらの企画制作・販売
  • ナビゲーション用デジタルコンテンツの企画制作・販売
  • 電子書籍アプリケーションの企画制作・開発
会社HP http://www.canvasmapple.jp/

ものづくりに興味

実家が文京区にあったので、小学生の頃は放課後になると自転車で、友達と秋葉原へ遊びに行っていました。
当時の秋葉原は屋台村のようで、発光ダイオードやICなどが段ボール箱に入って売られていたのです。
それを組み立てて、ラジオを作ったりしていました。うまく電波が受信できず、
ザーザーいっても、聞こえればうれしいものです。                                 
その後、マイコンブームが来て、半導体を使って、マイコンを製作しました。
簡単な計算ができるだけでしたが、完成した時はうれしかったですね。

中学生になっても、ものづくりへの興味は尽きず、実験が好きで、科学クラブに所属していました。
早稲田高校では、バスケットに熱中し、ものづくりからは、少し、距離をおくようになりました。
女の子にもてたかったからというのが正直なところです。
大学は外部受験したのですが、現役の時は第一志望校に受かりませんでした。
早大は、高校の友達がみな、1学年上にいるので、慶応大学に進学しました。

使う人の顔が見える仕事がしたい

大学を卒業後は、住友軽金属工業に入社しました。大学の先輩がいたし、住友だから将来は安泰だと思ったのです。
固い会社に就職すれば、柔らかい会社に転職できるが、その逆は難しいと言われた、ということもあります。
その当時は、わりと流されて生きていましたね。住友軽金属では購買の仕事をしていました。
何十億、何百億円という仕事をしていたのですが、消費者と直結する仕事ではありません。
例えば、自動車メーカーに新しい金属を販売し、燃費の向上につながったとして、
取引先の会社は喜んでくれても、人を喜ばせるのとは、本質的に違うと思いました。

そんな時、子どもの頃にラジオを作って、友達に見せると「オーッ」と驚いた時のことを思い出したのです。
ものを作って、使ってくれた人の笑顔が見たい。人を喜ばせるような仕事がしたいと思いました。
時間をかけて、やっと自分のやるべきことがわかったのです。

カーナビ業界へ

住友軽金属では予算管理の仕事もしていたので、そのノウハウを買ってもらい、音楽事業を手がける
パイオニア エル・ディー・シー(現ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン)に転職します。

勤務時間も服装も自由で、住友の時とは、仕事のやり方も全く違いました。
小室哲哉さんが新レーベルを立ち上げる事業などにかかわったのですが、
予算管理だけでなく、宣伝から雑用まで、全てをやらなくてはなりませんでした。

その後、パイオニアが音楽事業を売却することになり、本社に転籍して配属されたのが、
CDやDVDを手がける部署でした。ここで、初めて、カーナビと出会ったのです。

当時のカーナビは目的地までちゃんと到着することだけが大事で、面白くない。
エンターテイメント性を持たせようと3Dのナビを発売して話題になったのですが、
消費者からは一番使わない機能に挙げられてしまうということもありました。

会社をつぶしてはいけない

パイオニア時代には、会社の立ち上げから閉鎖までかかわったのが、2、3社あります。
一から立ち上げた時には、文房具の購入から水道の開栓に至るまで、
あらゆることをやらなくてはいけないが、わくわくしました。

逆に閉鎖の時は、思い出の染みついたものを全て、売却しなければなりません。
経営上、学んだこともありますが、何より、そこで働く人の気持ちを学びました。
会社が伸びている時はみんな幸せですが、傾いてくると、不幸せになってしまう。
「会社をつぶしてはいけない」とつくづく思いました。

会社を設立

キャンバスマップルは、パイオニア時代の上司と大学の同級生の3人で、
道路地図の老舗の昭文社の出資を受けて設立しました。
昭文社は道路地図では最大手で、ガイドブックも数多く出しています。
この昭文社の地図やガイド情報をカーナビに入れたら絶対に成功するという確信を持ってスタートしたのです。
私は開発・企画担当の取締役で、ものづくりという、まさにやりたかったことを実現したのです。

会社を設立して、1年間は売上げはゼロでした。どこへ売り込みに行っても、門前払いです。
「他社で採用が決まったら来てください」と異口同音に断られましたね。
そんな中でも、レーダー製造のユピテル様が当社に賭けると言ってくださり、
2008年6月に「マップルナビ」を発売することができました。
1社が決まった後はトントン拍子に話が進み、2社目、3社目とご契約を頂くことができました。
その後、代表を交代する時期を迎え、私が担っていくことになったのです。

流通ルート・人材の確保で苦労

製品は完成したものの、次は流通の壁にぶつかってしまいます。
カー用品店などは既存のメーカーに押さえられ、扱ってくれません。考えた末に思いついたのがTV通販です。
道路地図の「スーパーマップル」に、800円する旅行ガイドの「まっぷるマガジン」が約100冊入って
19,800円で買えますとお伝えすることで、大きな反響を頂くことができました。
現在ではホームセンターなど新たな流通チャネルも開拓でき、PNDの市場シェアでは約20%を占めております。

会社設立時は、人材の確保にも苦労しました。
募集をかけても、知名度がないので、人が集まらない。
1年間、全国を駆け回って、優秀な人材に会社の理念を説明し、口説きました。
やっと見つけた人に、大手に決まったからと言って断られたこともありました。

現在は、直接採用はしておらず、派遣社員などから社員に登用したり、昭文社のグループ採用を活用しています。
ゆくゆくは、自社での採用も考えており、その準備も進めています。

人生を豊かにするツール

間もなく発売する「マップルナビ3」は、ガイドブックの表紙をタッチすると、
定番スポットからご当地グルメ、おみやげまで、
マップルが勧める観光ガイド情報が出るという提案型の製品です。
渋滞時に便利なぬけみちを教えてくれたり、
信号待ちの時などにおすすめスポットの写真スライドショーが始まったりします。
カーナビを超えた、カーナビとは別ジャンルの製品と自負しています。
もっと言えば、人生を豊かにするツールです。
生きる気力をなくしていた人が、マップルナビをさわっていたら、
「もう一回頑張ってもいいな」と思えるぐらいの製品を作りたいのです。

現在は、スマートフォンに対応したアプリケーションの開発も進めています。
搭載するのは、カーナビでも、スマートフォンでもいい。その時代のニーズにあったソフトを開発し、
人生を変えてくれるような製品を世に出したいと思っています。