学園長 大橋清貫

学園長 大橋清貫

設立 1902年
事業内容
    • 相互通行型授業
    • ICT教育
    • 学習支援
    • 教員研修
会社HP http://www.mita-is.ed.jp/

グローバル時代に生き抜く子どもたちを育てる三田国際学園として、
新たなスタートを切ることになったきっかけを教えてください。

まず、2005年にトーマス・フリードマンの「フラット化する世界」という本が出版されました。
それがわたしの教育人生において、最も影響を受けた本の一つですが、
インターネットが世界に普及していく中で、世界のどこでもインターネット環境があれば
子どもたちは同じように学べるというものでした。

先進国だけが圧倒的な技術や情報優位性があって、
先進国の子どもたちだけにアドバンテージがある時代はもう終わっています。

日本の教育を考えた時に、日本が経済成長をしていく中で、誰もが同じようにできるようこと、
教えてもらったことが素早くできることを教育の柱にしてきた現在の教育では、
世界にはとても太刀打ちできないと思ったのが三田国際学園作りの原点です。

この本を読んだ時に、人口が多い国が勝つなと思いました。
例えばインドや中国です。

人口の数の桁が一ケタ違いますので、インドの同じ学年の上位1万人と
日本の上位1万人とでは全くレベルが異なります。
1万人のレベルが違います。人数の分母が異なりパーセントが違うわけですから。

コンマ何パーセントの世界、1パーセントでも、同世代の中では全く違うわけで、
そういう時代に子どもたちは戦っていかなければならないのに、何の武器も持っていないままで、
大学入試で試されるのは知識集約問題という状況です。
「生徒たちの大学入試がこうだから、それを突破しなければ先がない。
だからそのための受験勉強を高校の時にしなければ。」というふうに
高校は思ってしまっています。

18歳の瞬間最大学力を高めるだけではなく、世界のやり方に目を向け、
将来を見据えた教育に変えようと思ったのが最大のきっかけですね。

当時、こういった学校はありませんでしたからね。
今年ちょうど1期生が高校1年生になりましたが、7年前、5年前には
こんな学校はなかなかなかったので、三田国際学園が1つのベンチマークになっています。

学園を経営されていて、今まで一番大変だった出来事はどのようなことでしたか?

スタートの時は、錆びついた滑車と言ってしまうと昔からいた先生に
失礼になってしまいますが、固まってしまっているものを動かすことは本当に大変でした。

発想の転換はなかなか難しいですから、「相互通行型授業って何?」とか、
「今までの授業だって自信がある」という先生は最初はいらっしゃいました。
当然のことですが、10年、20年、教師をしていると、みなさん自分の得意技をいっぱい持っています。
こういう風に教えると分かりやすいといった技術、そして自信があります。
「今までの授業だって立派に成果がでるんだ。自分の授業を一度でいいから見に来てくれよ」
というような発想になってしまいます。

その考えを「相互通行型」に変えることが大変でした。
今では先生方に同じ方向を見てもらうことが当たり前になっていますが、
当時は本当に大変でした。

その頃によく先生方と行った議論があります。
本校の近隣には多くの学校があり、隣には都立校があります。
部活だと思うのですが、先生が生徒を引率して走っていたり、
一生懸命練習している姿、先生方の熱心な姿もよく見かけました。

あの先生の様子を見ると、きっといい授業をしていることが想像できました。
またグラウンドにはナイターの照明がありました。教育環境も良いことがわかります。
そこで、本校の先生に隣の学校に勝っているものは何かを問いました。

本校は年間で授業料を約50万円いただきます。向こうは無料です。
50万円対0円の授業料では勝負が付いてしまっている。
50万円以上のアドバンテージがこちらになければ、他の学校が選ばれるのは当然ではないかということです。

先生方からの回答で、自信を持って本校が勝っているところはなかなか挙がりませんでした。

勝っていることがないのに授業料が高ければ、保護者様はこの学校を選んではくれない。
そこまで考えたときに先生方の考え方が変わりました。
保護者様にそれだけの大金をお出しいただくのであれば、
それだけの価値がなければならないことに気がついたのです。

そうして先生方に納得してもらいました。
今は50万円以上の価値があると、ご寄付をいただく機会も多くなりました。
ご寄付は私立学校の経営の助けになるわけですが、この学校に価値がある、応援したくなる、
ということでご家庭からご支持いただいています。

学園の強みについて教えてください。

先生方が同じ方向を見て、一枚岩になっていることです。
全員が相互通行型授業でPBL(Problem/Project Based Learning課題解決型学習)をします。
また最初は信じられないと皆様おっしゃられるのですが、
本校では年3回ある全体研修の際に教員のペーパーテストをやっています。

その内容は難関大学入試問題ですね。生徒が学ぶことですから、
先生方が解けないのでは話にならない、ということで受けてもらっています。
最初は驚きですよね。ただ、本校では先生を試すなんて何事だ、という空気にはならず、
今では春夏冬の風物詩になっています。
今年はどこの大学の問題だろう、と話が上がることもあります。教職員の一体感を感じます。

また本校では21人のネイティブスピーカーが常勤でいます。
全国に数校は同様の人数を抱えている学校もありますが、普通の学校はこんなにも人数がいません。
また、外国人の先生たちの部屋は別々というケースも多いです。

本校は職員室の中にネイティブスピーカーの先生の席があります。
日本人の先生の目の前が外国人の先生ということはごく普通です。
イギリス人、オーストラリア人、日本人など職員室自体が英語と日本語のクロスマッチになっています。
英語科の日本人の先生はもちろんですが、他教科の先生も英語力を磨いていただいていて、
基本的にメールは英語で打たなければならないルールがあります。

ネイティブスピーカーの先生は漢字が読めません。
中にはなんとか読める先生もいますが、どうしても難しいところがあるからです。
こういった中で、ネイティブスピーカーの先生も含めて、この学園の一員である、
という意識が非常に強いです。
先生方は相当努力してくださっています。だからこそ職員室には一体感があって、
日本人・外国人ということに関わらず、本校の教育を一緒に作っていこうという一体感があります。

よく聞かれるのが、何故そんなに良いネイティブスピーカーの先生が集まるのかということです。
わたしも不思議に感じますが、彼らの情報網の中で
「三田国際学園がいいぞ」という話が広まっていると聞きます。
話を聞いて、実際に面接に訪れると学校の方針にも納得できる。
彼らも三田国際学園の先生たちと同じレベルではないと、居づらくなってしまうと思います。
採用面接でもネイティブスピーカーの先生が採用責任者として立ち会っているので、
彼らが承諾しないと採用されないようになっています。

生徒たちに社会で活躍できる資質を育んでもらうために、
大橋氏が特に伝えていきたい事などありましたら教えてください。

生徒たちに言い続けていることは、
“自分で考える力を持て”、“自分の考えを常に持て”ということです。

“発想の自由人”という言い方をしていますが、この学校の生徒たちはみんな自分が
発想の自由を持っているかを問われているということがわかっていて、
その時々に人の考えではなくて、とにかく自分の考えをもつことの重要性もわかっています。

そして人の考えを聞く時には、クリティカルにロジカルに聞くことを習慣にするようにというのを
ずっと話しているので生徒の思考力がさらに高くなります。

いずれ中学生も高校生も社会に出る時が来て、その時に社会で通用する、
評価される力というのは、自分で考える力を持っているかどうかだと思っています。
何か問題に直面した時に、「わかりません」、「習っていません」ではなく、
やったことのないことこそ、自分の考えを発揮できる時なんだということを伝えていて、
とてもその意識が強い学校です。

お茶の水女子大学が昨年から「フンボルト入試」という試験を始めました。
簡単に言うと図書館に行って自由に調べて書きなさいというような2日間にわたる試験です。
おかげさまでその入試で合格をいただいた生徒がいるのですが、
試験内容が自由に書くことを求められる内容であればあるほど、本校の生徒は実力が発揮されます。

また、昨年上智大学には11人が合格しました。
英語力や思考力を問う入試には本校の生徒は強く
2020年の大学入試改革も本校にとっては追い風だと思っています。
本校生徒の最大の特徴が、「白紙答案に書かせたら負けないぞ」ってことですね。
海外大学への希望者も多くアメリカの4年制大学に合格した生徒もいます。

生徒一人ひとりが自分のキャリアを見据えた選択をして、
国内外を問わず希望の進路に進み、そして社会に出て活躍した時に、
「現在の自分の原点は三田国際での6年間」と言ってもらえるよう、
これからも「三田国際教育」に邁進していきたいと思っています。

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