代表取締役 片岡 真由美

代表取締役 片岡 真由美

設立 2012年8月
事業内容
    • メンタル疾患に関する情報の提供
    • メンタル疾患に関するソリューションの提供
会社HP http://leapsjapan.com/

会社の方針転換が起業を意識するきっかけに

キャリアのスタートは摂食障害やうつ病の方に治療プログラムを提供する仕事でした。
ご本人やご家族の相談を受けながらプログラム実行のお手伝いをしていました。
多くの方が回復されていくのを目の当たりにし、
仕事に誇りとやりがいを持っていました。

私はこの仕事を天職と思っていたので、ずっとこの会社に勤めて、
上に上がっていこうと考えていました。
しかし、入社して8年後に経営者が変わったことで、
会社の事業方針が変わり、私が天職と思っていた治療プログラム提供と実行支援には
力を入れない方向になってしまいました。

私は、この時、今まで天職と思っていた自分の仕事は会社に用意してもらっていたに過ぎず、
それは経営陣の意向によってなくなり得るものであることを痛感しました。
そして自分がやり続けたい事は、
自分で場を作り出す必要があると考え始めました。
それまで起業など全く考えたことがなかったのですが、
これを機に起業を意識するようになりました。

起業準備のための勉強とベンチャー修行

とは言え、私がやっていたことは、
会社が開発したプログラムを顧客に提供する事だったので、
起業に必要な新しいサービスを開発するためには
何から手をつけたらいいか全く見当がつきませんでした。

それでも、まずは経営について学ぶ必要があると思い、ベンチャー企業に転職。
自分で事業を起こした経営者の近くで仕事をさせてもらいながら学ぼうと考えました。
このような考えで2社のベンチャー企業で営業、経営企画など幅広く仕事をさせていただきましたが、
これは今振り返ると本当に良くなかったと思います。

というのも、仕事というのは自分の持てるスキルを提供して会社に利益をもたらすことで、
その対価として給料をいただくわけです。
それなのに、私の考えは起業に必要な学びを得るためという一人よがりの考えでした。
そんな動機で会社に勤めた事は、その会社にとって失礼だったと今は深く反省しています。

仕事という実践と経営大学院の座学の2つを通して経営について学んだことで、
やっと起業を実現する自信がつきました。

モットーは「メンタル疾患を特別な病気にしない」

私がメンタル疾患で悩まれる方々と接してもっとも強く感じたことは、
「もったいない」という事でした。
というのは、うつ病などのメンタル疾患で一度休職や退職をすると、
その人のそれまでの経験や持っているスキルを生かす機会が少なくなるのです。

病気になったとしてもその人がそれまで積み上げてきた経験やスキルというものはなくなりません。
ですが、実際に病気が治っていざ復帰となると受け入れ側の会社は難色を示します。
これは、メンタル疾患への誤解や偏見により生まれている問題です。
というもの、私が勤めていた会社では、
治療プログラムで元気になった人を正規社員として採用もしていました。
元々努力家の人たちですので、やはりすごい結果を残すわけです。
この時、病気の有無と仕事の能力は別であり、
症状をコントロールできる環境が整えば、
持てる力を発揮できるのだと感じました。

経験もスキルもある人を活かさないなんてもったいない。
これを解決することで「メンタル疾患を特別な病気にしない」というビジョンを実現したいと考えています。

大事なのは早期発見、対応

ただ、メンタル疾患への誤解や偏見を解くのはまだまだ難しいと感じます。
だから、私たちは私たちのサービスによって
病気がひどくなる前に対処できるようにすることを重要視しています。
そうすれば、仕事を休まずに続けながら治療をすることも可能だからです。

その為に私たちはまず、患者数が多く、働く人とも関連が強い
うつ病に対応したサービスを開発することにしました。
また、サービス提供先として患者さんではなく「家族」に注目しました。
というのも、私が仕事をしている時に、最初に相談に来るのは本人ではなく、
家族である事が殆どだったからです。
なぜかというと、メンタル疾患というのは本人が気づきにくい、認めにくい病気だからです。

その為に、ギリギリまで頑張って重症化してしまいます。
この時、先に本人の変化の予兆をつかめる家族が
きちんと対応する知識を持っていれば早期発見、
対応による重症化の防止が可能になるのです。

またうつ病に対応するには病気の知識だけでは足りません、
労働関係の法律や社会保障制度など、生活を守るための知識も必要です。
それがあれば、先の見えない不安に悩むこともなくなるのです。

「情報過多なのに情報不足」を解消

今はうつ病に関する事はインターネットなどで情報はいくらでも見つかります。
ところが弊社でアンケートを取ったところ、ご家族の6割以上の方が
「必要な情報が見つからない」「どこに相談すればよいか分からない」
と悩まれていることが分かりました。

私たちはこれを解消するためにシナリオフロー型を導入したアプリを開発しました。
『うつ病かも?』という懸念が生じたタイミングから
治療が終了するまでのさまざまな状況において、
その時々で必要な知識と、さらに『何をすればよいか』の情報を提供してくれます。
単に必要な情報を検索して探す辞書とは異なり、
シチュエーションに応じて最適な情報をアプリ側から提示してくれるものです。

「病気にならないこと」「病気に振り回されない事」

今後、開発していきたいサービスは
「病気にならない事」「病気に振り回されない事」に役立つものです。

「病気にならない」は予兆を早く見つけて未病のうちに対処できる、
「病気に振り回されない」は症状をコントロールすることのできるツールです。
これが出来ればメンタル疾患で仕事に支障が出るなど
QOL(生活の質)の低下を防ぐことができると考えています。

一見マイナスにしか見えない経験もあなたの強みです

私の就職活動はとんでもないビハインドから始まりました。
というのも、私は高校一年生から大学を卒業する間際まで長患いをしており、
治療のために入院もしました。
その為、大学を休学しており、同級生から2年遅れての就職活動でした。

バブル崩壊後の就職難の上に、当時、女子大生は浪人且つ一人暮らしだと
就職は難しいとビジネス誌に書かれていたような時代です。
私はそれらの条件に全部当てはまっていた上にさらに1年遅れている訳です。
また、闘病で精いっぱいだったので、
大学ではサークルもボランティアも就職に有利になるような活動は一切できませんでした。
そのため、私は「就職できるところはないかもしれない。」と不安でいっぱいでした。

ところが、私の就職先はこの闘病経験を買って採用してくれたのです。
確立した治療法のない病気を克服するための試行錯誤も
経験として価値があると判断していただいたのだと思います。

一見マイナスにしか見えない経験もそれを乗り越えるために奮闘したなら、
それもその人しかない強みです。
人との比較ではなく、自分は何をしてきたのか、何ができるのかを是非見つけてみてください。

最後に「起業をしたい」という人へ。
やろうと思うならできるだけ早く動くことをお勧めします。
私は起業を思い立って実際に会社を興すまでに6年かかりました。
失敗を恐れるあまり、石橋を叩きすぎてしまったなあと感じています。
事業は思い通りに行くことは決してなく、失敗と修正の繰り返しです。
それを繰り返すにも体力が必要です。
だから、私のように念入りな準備するよりも、
とにかく若いうちにまずは始めてみる事をお勧めします。