代表者 中村 友哉

代表者 中村 友哉

設立 2008年8月8日
事業内容
    • 超小型衛星等を活用したソリューションの提案
    • 超小型衛星及び関連コンポーネントの設計及び製造
    • 超小型衛星の打ち上げアレンジメント及び運用支援・受託
会社HP http://www.axelspace.com/

宇宙をビジネスにしたい!

高校のころは化学が好きで、
大学に進学して化学の道を究めたいと考えていましたが、
進学後、化学という学問は、自分が想像していたものとは異なるものだということに気付きました。

その後、大学2年生も後半になり、本格的に自分の専攻を決定する時期になったとき、
大学の研究室で人工衛星を作ろう、というプロジェクトがあることを知りました。

驚きと同時に、自分もそのプロジェクトに携わりたいと考えました。
このまま大学を卒業し、大手企業に入ることは自分以外の人でもできることですが、
自分は、人と違う経験がしたいと強く思ったのです。

人工衛星との出会いをきっかけに、
進路を化学の道から宇宙工学の道へと切り替え、
その後は博士課程修了まで、超小型衛星の開発に取り組み続けました。
6年間の研究の中で、合計3つの人工衛星を開発しました。

最初の作品はとてもシンプルなものでしたが、
当時は学生の手だけで人工衛星を作り上げるということ自体が、
世界でも類を見ない、とても意義のあることでした。
その後も試行錯誤を重ね、
地上分解能30mの画像を取得できる衛星を作り出すことに成功しました。

こうした経験の中で、あと数年すれば、
より実用的な衛星を作ることができると考えるようになりました。

たとえ小さな衛星であっても、社会の役に立つはず。
そして、それを実現させるためには、
どこかの企業に就職したり、大学で研究したりするのではなく、
ビジネスとして自分で始めるしかない、という答えに行き着いたのです。

イメージを数値化し、実現させることこそビジネスである

しかし、当時の私は、マーケティングや経営の知識が十分でなかったため、
企業に対してどんなアプローチをしたらよいのかを理解できておらず、
取引先がなかなか見つかりませんでした。
そんなときに、たまたま大学の研究室の教授のつながりから、
「ウェザーニューズ」と出会いました。

ウェザーニューズは、北極海を航路として利用する船舶向けに安全情報を提供するため、
海氷の分布状況を高頻度に知る必要がありました。
しかし既存の衛星からの画像では必要な頻度が得られず、
また撮影から取得までに時間がかかる問題があったため、当社に声がかかったのです。
それから半年ほど議論を重ね、
2008年の夏に、プロジェクトとして進めることが決定し、当社の設立に至りました。

ただ、自分たちで衛星を作った、という実績はありましたが、
いざビジネスとして利用するとなったとき、
衛星の仕様がどんなふうに決まっていくのかは想像がつきませんでした。

学生時代は、搭載部品の開発で完成の見込みがつかないときには、
安易にその部品の搭載をあきらめてしまうこともありましたが、
お客様相手では、そうはいきません。
お客様の抽象的な要望を具体的な形に落とし込み、
お客様と何度も議論を重ねながら、
納得いただける仕様を作り上げていくという経験が初めてだったので、苦労はしましたが、
今後自分たちでビジネスをやるうえで、とても貴重な経験となりました。

衛星にも、オーダーメイドの時代がやってくる

当社では現在、超小型衛星をさまざまな分野のビジネスに活用できる可能性を検討し、
各企業へ提案することを主な事業としています。

先日は、当社の起業のきっかけとなった、北極海域の氷の観測のため、
ウェザーニューズと共同で開発した超小型衛星の打ち上げに、ついに成功しました。
これは、北極海域の氷の状態を大型衛星よりも高頻度で観測し、氷について分析を行い、
北極海を通行する船舶の安全運航のために立ち上がったプロジェクトです。

今後はこの例をベースに、ウェザーニューズのように、
ニーズに合わせた専用衛星を持つ取引先を増やしていきたいと考えています。
従来、衛星開発には数百億円ものコストがかかり、
そのリスクを負えるのは国しかありませんでした。
我々の作る超小型衛星は、そのシンプルさゆえ、コストは大型衛星の1/100。
ヘリコプター1機と同等の価格です。
また、構想から実現までの期間も2年におさえました。
このため、民間企業が自社のビジネスのために自前の衛星を持つということが現実になったのです。

低コストの超小型衛星により宇宙は確実に身近になり、
ビジネス利用も急拡大するでしょう。
従来には考えられなかったような新しい利用方法をお客様と一緒に見つけ出し、
それをどんどん宇宙で実証していければ、
人工衛星という概念を大きく変えることにもなると思います。

衛星は、第二のインターネットである

当社は民間企業で初めて超小型衛星を打ち上げるという快挙を成し遂げることができました。
ただ、今後世界各国で広く利用されるためには、
数を打ち上げる必要があると考えています。

超小型衛星が社会に受け入れられていくためには、
超小型衛星にしかできないことをしなければなりません。
具体的には、数を打ち上げることによって、観測の頻度を高くすることができます。
それによって、世界のあらゆる場所で「今」何が起きているのかを
世界中の人とシェアできる仕組みを作りたいと考えているのです。
いわば「Google earth」のリアルタイム版ですね。

1日に何度も、その場所の状態を確認するには、
たくさんの衛星が軌道上にある必要があります。
頻繁に観測ができるようになれば、
気象情報や渋滞情報などを、リアルタイムに、わかりやすく伝えることも可能になります。

当社では、2020年までに30機打ち上げることを目標としています。
人数も、できるだけ少ない人数で早く作ることを目標とし、
ゆくゆくは1つの衛星を5人のチームで1年ほどで完成させられるようにします。

衛星は現在、研究者などの一部の間でしかニーズのない狭い分野ですが、
今後は誰でも当たり前に利用するようなものにしていくべきだと考えています。

衛星は、第二のインターネットです。
インフラとして、どんどん活用していき、
宇宙から地球の「今」を誰でも知ることができるようにしていきたいと思います。

「ベンチャー企業」にこだわる理由

当社は、既存の宇宙開発のあり方を、
新しい価値を創造することによって大きく変えたいというビジョンがあります。
そのため、私が当社の紹介をするときは、
ただの中小企業ではなく、
あくまで「ベンチャー企業である」という紹介をしています。

なぜなら、ベンチャー企業とは、
新しい価値を生むことが使命だと考えているからです。
当社も、その使命に基づき、
自分たちが社会を変えていくんだ、という意識をメンバー全員がしっかりと持っているのです。

当社が人を採用するうえでは、
衛星開発に関する知識よりも、
当社のビジョンに共感し、使命感を持ってもらえるかということを重要視しています。
心はホットに、でも頭はクールに。
宇宙を取り巻く現況について、客観的に捉え冷静に分析していく必要があるのです。

我々が手掛けるビジネスは、宇宙を相手にしている以上、
一般的なベンチャー企業に比べると非常にリスクの高いものだと思っています。

いったん成功させれば、
「超小型衛星と言えば日本のアクセルスペース」
と言われるような、
世界的なリーディングカンパニーになることができるのです。
そこへの価値を信じて、参画してくれるメンバーを必要としています。

学歴や技術力よりも、そうした気持ちの強さが大切だと思います。
必要な知識は、入社してからでも得ることができます。
実際、当社で活躍するメンバーも、もとは違う分野の勉強をしていた人もいます。

自分の目の前に回ってきたチャンスに気付き、それをつかめるかどうかで、
その後の人生は大きく変わります。

私も大学時代、自分の専攻を選ぶときに、
教授の話にピンときて、宇宙工学の道に足を踏み入れたときから始まっているので、
「これをやってみたい」と少しでも感じたそのときを、
逃さないことが大切です。