代表取締役 飯島 剛介

代表取締役 飯島 剛介

設立 2009年12月
事業内容
    • 代々木ゼミナールと提携した大学受験予備校の運営
会社HP http://satelightnet.c-saiyo.com/

教育業界で感じた疑問、それが起業のきっかけに


36歳で起業しましたが、32歳までは起業しようという気持ちは全くありませんでした。
ずっと会社員をしていて、何度か転職も経験しました。

前職が当社と同じように代ゼミサテラインのビジネスを展開している会社で、
そこで初めて教育業界に入ったのですが、いざ入社してみると業界の体質が古いことに驚きました。

教育業界は生徒さんが通ってくれてこそ成り立ちます。
当社は本格的な大学受験予備校であって補習校ではありませんから、
保護者様や生徒様の希望は第一志望の大学に合格することで、
その為に保護者の方はお金を出していただいているわけです。
大学受験予備校のビジネスは、第一志望校に合格させるという結果を出すことにより、
それが評判となり生徒さんが増えてという「評判商売」であり、
予備校といえども顧客がいるサービス業なのです。であるにも関わらず、
保護者や生徒が求めていない講座を執拗に売ろうとする強引な売上至上主義が根付き、
コストカットを人件費に集中させ社員を減らしアルバイトを多用、
少ない社員にすべての責任を押しつけてあげくに長時間労働や低賃金という・・・。
決してこの業界だけの話ではないのですがもはや常態化した体質でした。
当然、前職の経営者に対して意見もしましたが、結局は何も改善されませんでした。

業界にはびこる古い体質を改善し新しい風を送り込む必要性を感じたのです。
予備校は数が多く、少子化でパイの奪い合い、他社と同じやり方をしていたら勝負できません。
徹底的に他社と差別化し、サービス業であり評判商売であることをメインに打ち立て、
生徒さんのためになるような予備校を作るべきだと思いました。
そして働いている従業員に適正な労働環境を整え、結果に対し正当な評価をし、
やりがいを感じてもらうシステムを作ろう、会社を作ろうと決意したのです。

起業までの道のり、練りに練った事業計画


プランを固め、経営をしっかり勉強し、良いスタッフを持ち、
出店ポイントさえ間違えなければ80%の確率で成功すると感じました。
残りの20%は、起業資金の調達に対する不安でした。
会社を一から作ることに対する不安も正直ありました。
まぁ、最初は誰でも「一寸先は闇」という状態なんですけどね。

プランには自信がありました。
3年近くかけ、事業計画書も前職のときからコツコツ作っていました。

スタッフに関してですが、自分の考えに共感してついてきてくれる人材が必要でした。
前職退職時に現場の社員に起業の話をした際
ついて行くと言ってくれた仲間が多かったのも非常に嬉しかったです。
退職の1年後に起業することを決めていましたので、
ついて来てくれるスタッフには全部準備が整ったら呼ぶので1年後に会おうと話しました。

残る不安材料はやはり資金でした。
起業したくても断念した人はここが一番のネックになっているのではないでしょうか。

それなりに人脈があったので考えに共感し出資しましょうという話がいくつもありました。
しかし自己資本100%でいきたい気持ちが当然強く、
銀行めぐりを始めましたが、これがまた苦労の連続でした。
当初は練りに練った事業計画を持って行っても門前払いにあったり、
東京の信用保証協会には全く相手にされませんでしたね。
1号店は埼玉県熊谷市にすることを決めていましたから、
埼玉県のベンチャー支援センターで企業のアドバイスをうけていました。
元銀行マンの方がいろいろ教えてくれましたよ。
最終的には埼玉県の信用保証協会が理解を示してくれて、いくつか銀行を教えてくれました。
3件目に訪問した銀行の担当者が企画書が良いと言ってくれて、
そこからはとんとん拍子に話が進み、最終的には支援しますと言ってくれました。
12月に会社設立を決めていたのに11月くらいまで資金の目途がたたず、
おそらく融資が決定するであろうという手応えを頼りに
自己資金の見切り発車でその12月に会社を立ち上げ、
その後1ヵ月後の1月の終わりにようやく融資がなされたのです(銀行と国の協調融資)。
なんとか2月の開校(開業)にこぎつけたのです。
今考えると恐ろしいですね、もはや執念だったと思います(笑)。

これを見てくれる起業を志す学生の皆さんにも、しっかりした事業計画が無いと
銀行が簡単にお金を貸してくれない、ということを知っておいて欲しいですね。
先人のノウハウを学び、いろんな人に話を聞いて、
チャレンジし続ければ、諦めなければなんとかなるものです。

「最初の3年間は赤字だが4年目から黒字に転じる」という計画で
銀行からの融資を受けていましたが、
最初の2週間で借金分を返済できるほどの売上をあげることができました。
自分の読み以上に大ブレイクしました。
マーケティングリサーチもあたりましたし、システムもうまく稼働しました。

開業当初スタッフは2名だったのですが一気に生徒が増えてしまったために、
さばききれず取りこぼしもありました。
校舎のキャパも限界となり、新たな場所を借りる必要性など課題も発生しました。
どんどん人も採用する必要がありました。
毎日が戦場でしたが嬉しい悲鳴でしたよ。
最初の2週間で成功を確信し、1年間の苦労が報われました。
きちんと考えて諦めず努力すれば、結果がついてくるということが分かりましたね。
1年間待っていてくれた前職の仲間もこのあたりから合流してくれたのです。
うまくまわっていきましたよ。

地方に特化した理由、強み


成功の一番の理由は出店場所が良かったことです。
起業にあたり「いつどこで」という点は非常に重要です。
予備校の場合「いつ」は冬、もしくは余裕があれば秋に開始するのがベストです。
「どこで」はリサーチの結果、いくつかの条件と合致していたのが熊谷で、
絶対にここだと決めていました。
私は東京の調布市在住で、通勤に往復4時間かかりますが、それでも絶対ここだと思いました。

当社は地方で展開するビジネスモデルです。
東京には塾・予備校が乱立しています。少子化の中生徒の奪い合いです。
さらに地方に比べ首都圏では様々なコストがかかってくるでしょう。

代ゼミの素晴らしいコンテンツがあるので、
中央で発信している授業を地方で展開することが絶対うけると思いました。
中央と地方の教育格差は絶対にあると思いますし、東京への憧れや、
中央のカリスマ講師の授業を受けたい気持ちもあるだろうと思ったのです。
また、競合ありますが東京ほどではありません。
地方だが受験層がそれなりにいて教育熱がある文教地区であれば成功する自信があったのです。
競合も適度に必要で、競合他社と差別化できる予備校であれば
バッティングしないと考え徹底的に差別化を図りました。

人がいなければ成り立たない、制度にも工夫を


当社は従業員を大切にしています。
自分が今までお世話になってきた会社を振り返ると、みんな一生懸命働いていましたが、
それに対する報酬や休みなど見返りが薄い会社が多かったと感じています。
従業員に対する評価がしっかり確立されていないところもありました。
それは教育業界に限りません。

生徒や保護者はもちろんですが、従業員にもしっかり利益を還元できる工夫をしています。
従業員間でももちろん成果の差が出ますので
成果に応じて報酬に差をつけ、完全能力主義にしました。
この給与形態も他の教育関係の会社とは全く異なります。
例えれば、プロ野球選手の年俸のようなイメージです。
全部数値化して、この成績なら来年の年俸はこのくらいと明確に決めています。
会社の1年間の決算状況で利益が出れば内部留保分を残し、残りは均等分配します。
賞与は一流上場企業レベルを目指しており、実際にそれほど変わらない額を出せていると思います。
よく平均額が発表されますが、平均よりは格段に上です。
福利厚生の充実や従業員の家族までしっかり守れる会社でありたいと思っています。

これにより、やりがいを感じてもらって離職率を低く押さえたいというのが本音です。
戦力だと思っていた人材が辞めると会社の成長を止めることになってしまいます。
これを防ぐためには、人に対しては惜しみなく投資していく必要があると考えています。

中小企業でも、ベンチャーでも、小さな地方の会社であっても
ここまでできるところを見せていきたいですし、現実に達成できています。
当社のシステムは教育業界になかった新しい画期的なものであると思っています。

今後の展望 - 従業員と家族を守れる会社


当社がトップになって教育業界全体を変えていきたいとまでは思っていません。
例えば上場しようとも考えていません。

店舗数が増えれば収益が増え、従業員の給料を増やせるでしょうから、
もう少し会社を大きくしたいとは思っています。
ただ、私としては小さい会社であっても社員とその家族を幸せにするために
エネルギーを使いたいと考えています。
自己資金のみで自分たちの考えの通りに会社を運営していきたいですね。
最終的に30校になれば何百人の組織にはなるでしょうが、
従業員が安心して働けて、家族を守れる会社を作りたいというその一念です。

学生へのメッセージ - もっとチャレンジを


今の若者には私の同世代に比べてエネルギー不足を感じています。
私たちの世代は人口が多く、人材が多いが景気は厳しい、
大学受験も浪人が当たり前という時代でした。
従って、自分から打ち破らなければっていう気持ちがあったように思います。

いま、世の中に出て来ている若者はゆとり世代で、
よく世間では「自分から何かを起こさない」とか「安定志向」だとか言われていますが、
それが悪いとは思いません。ただチャレンジはして欲しいですね。

安定を求めて大企業に勤めたり公務員になるのも良いでしょう。
それは人の価値観なので人それぞれで良いのです。
ただ、自分がいま居る領域の中で限りなくチャレンジして欲しいです。
なぜならば、可能性は無限大ですからね。チャレンジしないと結果は変わってきません。
世の中には何もチャレンジしない評論家が多いのです。
ある程度のリスクヘッジは必要ですが、その上でもう少しチャレンジしてみてほしいです。