代表取締役社長 佐藤 郁夫


代表取締役社長 佐藤 郁夫

設立 1984年(昭和59年)12月1日
事業内容
    • 電機機械器具、電気通信機械器具及び電子応用機械器具の設計並びに販売
    • 測定機械器具及び医療機械器具の設計、製造並び販売
    • 輸送機械器具の設計、製造及び販売
    • 風数力機械器具の設計、製造及び販売
    • 生命科学機械器具の設計、製造及び販売
    • 日用雑貨品及びレジャー用品の設計、製造及び販売
    • 前各号に付帯又は関連する一切の事業
会社HP http://www.seric.co.jp/

即断即決の父

私が高校三年のとき、父が独立しました。
しかも当時弟は中学三年で、ふたりとも受験の時期に親が独立。
嫌でも考えさせられました。ただ、反対はしませんでした。
独立がどんなものかピンとこなかったので。
それでも父が独立したあと、最初はいい面なんてあまり感じられませんでした。
独立したはいいですけど、メーカーとして独立したので商品を作るところからはじめなくてはいけなかったわけです。
この商売をやればうまくいくだろう、これが売れそうだから独立する、とは違って、
すべてこれから作るところからスタートでしたので、最初収入がないわけです。
不安に思うなという方が無理な話ですよね。それでも両親は何不自由なく大学生活を送らせてくれました。
家計のやりくりは大変だったと思いますよ。

その後私は就職活動をして、一旦は他の会社に入社しました。
四年くらい働いた頃、父から会社に電話がかかってきました。
一緒に住んでいたのに、わざわざ仕事中に。
そっちの会社辞めてこっちに来いと言われて。
さすがに怒りました。もうすこし周りに対する配慮が必要でしょうと言った記憶がありますね。

父はやるとなったら、即実行という人なんです。
それはもちろん長所であるけれど、へたをすると短所にもとられかねない性格です。
傍にいる長男としては大変でした。

創業者と後継者の土俵

先代の父はこうと決めたら意見を変えない人ですが、そういう人でないと創業者はきっと成功できません。
けれど、後継者に求められるのはどちらかというとバランス感覚であったり、
新しいマーケティングでの知識であったり、先代とは違うものを求められます。
同じ土俵で相撲をとっても、向こうが相撲取りでもこっちは射撃の選手くらい違うんです。
絶対勝てないというより、そもそも勝負する相手ではないんですね。
土俵は同じでも、向こうが金メダルだから自分も金メダル、ということではないんです。
向こうは向こうですごい実績で残している存在で、私が継いだ時はもう二十年も続けていて、
なおかつ私に売る物を残してくれている人なんです。会社の資産と……もちろん借金もありましたけど。
後継者に対してしっかりたくさんのものを残してくれている相手に対して、戦いを挑むこと自体がナンセンスなんです。
戦う相手はそっちではなく自分なんです。お客様でもなく、ライバル会社でもなく。

リーダーからのプレゼント

若いころは経営者、つまりリーダーは人を束ねる人だと漠然と思っていました。
坂本竜馬や西郷隆盛みたいに、強いカリスマ性で人をまとめてうまく導くのがリーダーと思ったまま社長になりました。
私が人を導くんだ、という勘違いから先輩にも上から目線でものを言うようになってしまい、当然反発を受けます。
だったらどうしたらいいんだろうと、頭が真っ白になった時期もありました。

そんなとき後継者の勉強会に行ってみたんです。
これから後を継ぐ方や、もう後継社長になった人と共通の悩みを話しました。
主に話したのは先代との関係、年上の社員との関係、お金。この3つです。
特に社員が言うことをきいてくれないというのがいちばんの問題でした。
その点について話し、自分でも考えた結果、私があなたにこれだけ感謝しているということを形であらわそうと思ったんです。
そう考え、社員と社員の家族にプレゼントを贈ることにしました。
誕生日を覚えるのにエクセルで表を作って、この年のこの人にはどういうプレゼントを贈って、
どういう手紙を送ったかを記しておき、それらを見返して毎年違う言葉で感謝を伝えました。
それで変わったかどうかは分かりませんが、こちらの感謝の気持ちは伝わったんじゃないかと思います。

今後の方向性

海外展開は、今はアジアのお客様が中心ですが。
いずれはアメリカ、ヨーロッパも視野に入れたいですね。
なぜなら“カッコイイ”ですから。アジアの国は、今すごくエネルギーにあふれています。
先週上海とソウルに出張した際も、ものすごく活気があり、日本以上にせかせかしてる感じを受けました。
特にビジネスの現場にいる人はアグレッシブで、そういうエネルギーをアジアでは感じます。
一方でアメリカやヨーロッパは、洗練されてるというか奥深いというか、芸術の文化があり、
アジアとはまったく違う魅力があるんです。
そういう洗練された歴史なども、うまく吸収して強化していきたいということですね。

今現在、組織を固めるという方向にはあまり考えていません。
どうしても助けあわないと、仕事がまわらなくなってきている状況です。
それが結果的に、組織を固める方向に傾いていますね。
簡潔に言うと六人が五人になったときと、二十人が十九人になった時の一人あたりの負担は全然違います。
ひとりが欠けた時の、一人あたりの負担をもうすこし減らしたいわけです。
六人だと仕事が分化してしまい、例えば〇〇株式会社様に納入した装置の事は××さんしかわからないといった、
特定の人しかわからない事象が発生してしまいます。
それは非常に危険ですから。

募集サイトよりも、人脈を使う現状

実は去年の十一月に営業の社員を中途で採用しました。
そのときは人材の募集サイトを使わずに人脈を使いました。
そこで紹介していただいた方が当社が求めているような営業経験の持ち主だったんです。
彼も自分の経験が活かせる会社ということで当社への入社を望んでいて、
それで相思相愛のような感じになり、入っていただいたんです。
その人は、前の会社でもその前の会社でも海外営業をやっていて、
商品知識もある、業界のこともできる、言葉もできる、まさに願ったりかなったりでした。
こういう人は、なかなか外部の人材募集サイトではひっかからないのが現実です。
こちらの考えていることと、ピッタリあうような人材はなかなかいません。
それに近いような人材を探すとなると、やはり人脈を使ったほうが、ある程度は効果的なんです。
もちろん新卒採用に興味がないわけではありません。
しかし今のところは即戦力かそれに近い人材を求めていて、
新卒の方を教育して一人前に育てていく時間的な余裕はないんです。
当社は世界でも稀有な商品を製造販売しているし、お客様の裾野も広く用途も多岐に渡ります。
なので教育には時間がかかり、一人前になって稼げるようになるには他社以上の忍耐が必要なんです。
というわけで、現状採用は中途ということになっています。

自立と依存、どちらを選ぶ?

若い人へのメッセージを一言で言うと、成功は自分の力で勝ち取れ! ということです。
例えば入社した会社で、こういう成長プログラム、キャリアアップシステムがありますと言われていたのに、
実際思っていたのと違う、というのはよくあることですよね。
そのときあなたはどのようなふるまいをしますか? ということです。
自分の求めるところに転職するのか、文句たらたら言いながらダラダラ仕事をするのか? 
これはどちらが正しいという以前に、そもそもプログラムがないと成長できないのか? というところが根本的な問題なんです。
あなたが成長するに、あなた自身はどれくらい自己投資ができるのか? 
それはお金を払って専門学校に通ったり、参考書を読んだりして自分で勉強するといった、
目的意識があって行動しなければどうしようもありません。
自分がどうなりたいか、明確なゴールがあって、自分自身がどれだけ努力できるかが重要です。
努力は人にさせてもらうものじゃない。人のサポートがないと努力できないというのはおかしいですよね。
ですから自立型社員と、依存型社員みたいな言い方になってしまうわけです。
そういう、自分になにができるかを考え行動することができる人になって欲しいです。