代表取締役社長 樋口 純一
設立 | 創業1850年 |
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事業内容 |
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会社HP | http://www.benmatsu.com/company.html |
バックパッカー旅行を通して多くのことを得る
若い頃の経験の中で、私に大きな影響を与えたのは、
バックパッカーとして海外旅行をしたことです。
初めてバックパッカー旅行をしたのは、大学3年生の時でした。
ツアー以外での海外旅行、しかも「貧乏旅行」は初めての経験でした。
その時はサークルの先輩と2人で、ヨーロッパを2ヶ月ほど回ったのですが、
最後の2週間は別行動。
その2週間で、1人でもなんとかなるという体験ができたと思います。
翌年には自分の卒業旅行として、アメリカに2ヶ月ほど行きました。
大学を卒業して2年ほど新潟で働いた後、家業を継ぐために
実家に戻ることになるのですが、戻る前に7ヶ月ほど世界を旅行しました。
バックパッカーも3回目なので、手順は心得ていましたが、最初に
入国した南米の国は言語がスペイン語で、英語は全く通じません。
言葉を覚えないと生活できないので、自分から積極的に話しかけて、
必死で頑張りました。
バックパッカーをするまでは、初対面の人が多い会合に行ったり、
1人でセミナーに参加したりするのは絶対に嫌でしたが、
これらの経験によって苦手意識が消えました。
また、食べ物の好き嫌いもなくなりましたね(笑)。
一社員として家業で働き始めるも、いきなり社長を継ぐことに
大学卒業後に働いたのは、叔父が新潟でやっていた料理屋。
家業の弁当屋を継ぐための勉強ということで、2年間お世話になりました。
そして25歳の時に、弁当屋に呼び戻されます。
それがちょうど年末、おせちの作業で忙しい時期だったので、
帰るなり手伝って、年明けには社員として働き始めました。
新しく入ったとは言っても、小さい頃から見てきた仕事ですし、
周りの人たちも、顔を知っている人ばかり。
特に何も苦労することなく仕事をこなしていたのですが、
半年が過ぎた頃に先代が急死して、その流れで26歳の若さで社長になりました。
ただ、社長といっても、当時は昔からの職人さんが何人もいたので、
その人たちが何でもきちんとやってくれていました。
また、なりゆきで社長になったので、皆が「協力します」「支えます」と言って、
フォローもしてくれました。
しかし私も徐々に自分の意見を出すようになって、反発が生じた時期もあり、
今思うと、社長になってからは、それなりに苦労をしたと言えます。
弁当を作り続けることで、江戸文化を継承していく
当社は、弁当屋としての創業が1850年、以来160年間、弁当を作り続けてきました。
弁松の一番の特徴は、甘辛で非常に濃い味です。
この「甘辛の濃い味」というのは、江戸時代から続いている文化の一つですが、
かなり好き嫌いが分かれる味と言えます。
関西の人には合わないことが多いですし、関東の人でも甘すぎてダメという人もいます。
しかしその反面、うちの味が好きで、3代4代と買い続けてくださっているお客様もいて、
本当に両極端だと思っています。
味を薄くしたり、味付けを変えたら、もっと広く売れるのかもしれませんが、
我々は、コンビニ弁当のように空腹を満たすためだけに、
弁当を作っているわけではありません。
弁松の弁当は、「江戸」を体験してもらう一つのアイテムです。
弁当屋ではありますが、江戸の文化を伝える仕事をしていると考えており、
だからこそ、この味付けは、どんなにアンチの人がいようとも
変えてはいけない部分なのです。
今を大切に、今ここにある仕事をきちんとこなす
当社の中途採用の社員は、前職は全く違う業種だった人ばかりです。
経験者もいないわけではありませんが、変な癖がついていたり、
当社のやり方に合わないことも多く、あまりうまくいきませんでした。
仕事では、大きなことをやる必要はありません。
目の前の仕事をきちんとこなす、平凡ですが、そこが大事です。
仕事をするということは、弁当屋に限らず、自分を表現することだと思います。
「自分を表現する」といっても、奇抜な弁当を作るとか、目立とうとするのではなく、
普通の作業を丁寧にやるだけでも、一人一人の個性が見えてきます。
目の前にある仕事を、ひたすらきちんとやること。
繰り返しになりますが、これは本当に大事だと思います。
世の中、先のことに関しては、不安も期待も想像でしかありません。
だから結局、確実なのは「今」だけ、ひたすら「今」が続いていくだけです。
昔のことも先のことも、あれこれ考える必要はないのです。
「素晴らしい風景」を折箱の中に詰めていきたい
「折箱の中の風景が、私たちのココロイキ(心粋)です。」
これは何年か前に作った経営理念です。
「風景」というのは、お客様がふたを開けた瞬間の、おかずの詰まり具合や
色合いなどを表わしています。
そして、おかずそのものという意味だけではなく、弁松で働く人間の気持ち、
こだわり、熱意、責任などの思いも込められているのです。
弁当というのは、いくら中身が完璧に出来上がっていても、
お客様が買いに来られた時の接客が悪かったら、不味く感じてしまいます。
あるいは、配送が10分遅れたことで、カリカリしながら食べるようでは、
やはり美味しさを感じることはできません。
作った弁当そのものだけではなく、それに関わる全ての作業が、
何から何まで中につながっているのです。
これからは、この「風景」が、もっと面白く見えるようにしていきたいですね。
例えば、調理の職人としてのプロフェッショナル、より良い接客ができる人、
営業力に長けている人など、様々な人材を充実させたいと考えています。
学生へのメッセージ
就職活動をしていく中では、内定がなかなか取れないなど、
大変な苦労もあることでしょう。
しかし結果に対して、すぐに良し悪しの判断をしない方がいいと思います。
一つ一つの出来事は、自分が最終的に向かうところへの過程の一つと捉え、
もっと気楽に、何とかなるという気持ちになってはいかがでしょうか。
それと、希望していない職種に決まったとしても、頑張ってみることも必要です。
例えば、出版の仕事がしたかったのに弁当屋に採用が決まった、
そんな場合でも、何かの縁があったのだと思って働いてみましょう。
仕事の本質的な部分というのは、業種には関係ないので、
やってみたら、意外とそこが自分の居場所だったりするかもしれません。
要は、深刻に悪い方にばかり考えるよりも、多少の楽観視も大切ということです。