株式会社百家堂 代表取締役 古谷 文太

代表取締役 古谷 文太

株式会社百家堂
設立 2008年7月
事業内容
  • 電動車両の販売・製造
会社HP http://100zero.jp/


やがて目覚める起業への意識

学生時代は、当時流行の企画サークルに熱中しました。
ビジネスに興味はあっても、社長になりたいというよりは、企業の力を借り、
一人ではできない大きな仕事をやってみたいと、漠然と考えていました。
だから就職は、これこそ「大きな」仕事と判りやすかった大手建設会社を選びました。
文系出身ということから、事務職へ配属。
最初の仕事は「現金精算係」。現金の入った手提げ金庫を預けられて経費の精算でした。
簿記の知識はありませんでしたし、興味もありませんでした。
「このまま、毎日電卓をたたいて、つまらない仕事で一生を終えるのはたまらない。」
そのくせ、その仕事も満足にできない自分への腹立たしさも重なって、憂鬱な日々でした。
その後二十年以上も経理財務の仕事を続けるとは思いませんでした。

起業したのは四十歳を過ぎてからのことです。
と言っても、二十年も我慢して嫌な仕事を続けたわけではありません。それどころか、
心から誇りとやりがいを感じながら経理財務部門で働いていました。
変化は、外部環境よりも私の内面に起こったのだと思います。きっかけは、
松下幸之助の本にあった「石の上に五年」という言葉です。石の上にも三年というが、
仕事は何事も五年はやらないとものにならない。逆に、五年やれば面白味が
判ってきて楽しくなるという内容でした。

一瞬で何かが変わったわけではありませんが、藁にもすがるような気持ちで
その言葉を信じることにしました。五年必死にやって、それでも嫌ならやめようと。
あれほど嫌で苦手な仕事だったのに不思議なことですが、その後数年を経ずに、
海外法人の財務マネジャーになっていました。世界的な飲料メーカーへの転職後には、
日本におけるビジネスモデル変革にCFOとして参画することができました。
かつての望み通り、「大きな仕事」に携わることができたのです。
企業財務の仕事に深い充実を感じる一方で、その間にも、起業したいという気持ちが
何度か芽生えては消え、消えては芽生えしました。自分でいちから描いたビジネスを
現実のものにしてみたいという、やはり単純な望みです。
なかなかその道に進まなかったのは、それだけ企業財務の仕事が好きだったからであり、
一歩を踏み出す勇気がなかったからでした。
四十を過ぎたとき、今やらなければ、一生やらないだろう、そして年老いた将来の自分が
きっと後悔するだろうと思い至ったのです。

チェンジマネージメントからの展開

当社の事業の主軸は二つ。ひとつは自分の専門分野である企業財務に関するコンサルティングです。

もう一つの事業は、まったく畑違いの電動車輌の製造販売です。
現在は、コンバージョンEVといって、既存のガソリン車からエンジンやガソリンタンクなどを
取り外し、モーターやバッテリーを搭載して電気100%で走るようにした電気自動車を製作しています。

当社が発明したわけではなく、昔から多くの方々が取り組んできたもので、
実際にさまざまなコンバージョンEVが走っています。
しかし、これまではいずれも実験や趣味の域を出ていませんでした。その最大の理由が
製造コストの問題です。一台一台手作りでコンバート(転換)していると効率が悪く、
作業費が非常に高くついてしまうのです。
当社の事業は、そこに規格化と標準化、そして分業化をバランスよく持ち込んで
コストを劇的に引き下げることにより実現したものです。
大抵の整備工場の設備があれば、どこでもできることも強みです。
新たに設備を作ろうとすれば、相当額が必要となり、ものすごいリスクとコストですが、
既存のものを使えば、埋没費用でやれます。今は車が壊れ難く、台数が減っていますから、
どこも整備工場は手余りな状態で、その設備を使えばコストも下げられます。
ひとつひとつの技術に目新しいものはありませんが、今までにない組み合わせを作ること
により付加価値を生み出しています。

コンバージョンEVは中古車をベースとしていますが、商品としては新しく、
まだ認知されてないものを売り出しているという認識です。
当面の客層はいわゆるイノベーターたちです。

イノベーターの関心もさまざまです。当社のお客さまは、クルマ好きよりも、
環境に高い関心をもつ方が多いようです。

エネルギー問題への貢献

人類が環境に与えている影響は、本当に危機的なのか、自然科学者ではない
私自身には確証がありません。しかし、比較的になじみのある社会科学の側面から、
エネルギーの世界需給が将来ますます逼迫することを強く懸念しています。
大まかにいうと、現在は先進国の12億人くらいが一人当たり10のエネルギーを使うのに対して、
残りの50億人は、1程度しか使っていません。つまり、地球上の5人に1人くらいがほぼ独り占めをしています。
しかし、近年はBRICSの経済発展に見るように、2人目や3人目もたくさん使いたいと考えるようになりました。

将来的にエネルギーは、総体的なコストが高くなるでしょう。
だからエネルギー効率が高い社会が必要に迫られ、それが幸せを作ることになります。
エネルギーを上手に使えば豊かな生活に繋がり、暮らしやすいはずです。
その為にも長期的ビジョンとして、電動車両の普及促進が重要であり、
ビジネスチャンスも大きいと考えています。

当社はコンバージョンEVを端緒として、エネルギー効率の高い社会に変えていく
プロセスに貢献したいと考えています。

勇気を出して進む

今の若者はしっかりしていて、人生を真面目に考えていると思います。
甘い考えしかなかった自分の若い頃より、ずっと頼もしく感じます。
それでも、もしエールを送るとしたら、「勇気を出して自分の道を進む」ということです。

近年の日本をとらえて「ロストディケート(Lost Decate)だ」とため息をついたり、
先行きが暗いことばかり言ったりする大人が大勢います。

確かに、過去の価値観で物事を測ればそういうネガティブな印象になるでしょう。
しかし、どんな価値観も絶対的なものではありません。モノサシを変えて見れば、
将来にはいつも大きな可能性があるはずです。

新しい価値観に従って行動するには勇気が要ります。従来通りの考え方で、
多くの先人に承認してもらえる方が安心です。でもそれが本当に安全な道なのかどうかは別物です。

考えているだけで実際に行動しなければ、勇気を出したことにはなりません。
勇気を出すのは本当に大変なことですが、それだけに価値のあることです。
自信があるから勇気が出るのではなく、勇気を出すと自信が生まれるのです。