代表取締役 斉藤 邦之

株式会社磁気研究所 代表取締役 斉藤 邦之

代表取締役 斉藤 邦之

株式会社磁気研究所
設立 1979年3月
事業内容
  • 記録メディア卸販売事業
  • セキュリティ事業
  • メディアソリューション事業
会社HP http://www.mag-labo.jp/

最新技術に世界を夢見て

私は宮城の気仙沼の出身で、
小学校の頃に父の仕事の都合で兵庫県の姫路に引越しました。
その後、高校までは姫路で過ごし、大学は史学・地理を専攻しました。
大学で史学・地理を選んだのは『世界』への強い興味からです。
日本から出たことがなく、自分の目で世界を見たことがなかった分、
地図を見て世界の様々な建造物や景色、人種などに
想いをめぐらせてはワクワクしていました。
当時は飛行機に乗るだけで数十万かかるような時代ですから、
海外に出かけるなんて夢のまた夢。
だから、何か海外に関わる仕事をしたいと考えたんです。
その思いから、半導体や飛行機部品といった当時最先端の
品物を海外取引している商社に就職しました。
社会に出てしばらくは「自分は給料に見合った働きをしているのか、
バックボーンがあるのか」と常に不安がつきまとっていました。
その不安を埋める意味もあって、
英会話学校に行ったり貿易事務の勉強をした時期もありましたね。
ただ、私は営業職だったので、
それらの知識が直接役に立つということはなかったのですが……。

『若さ』は自分のために使おう

最初の会社に3年ほど勤めたところで、
当時日本にはなかったフロッピーディスクを扱うアメリカの会社が
日本に進出してくるということで、
そちらの会社に転職しました。ここでも主な仕事は営業です。
私の営業手法はまさに「汗をかいた営業」で、お客様の要望には
時間を問わずすぐにお答えすることをモットーとしていました。
といっても、全てを受け入れるというのではなく、自分の中で
一定の線引きをし、それを越える要望に対してはコストを提示したり、
明らかに範囲外のことはハッキリ断るなど、メリハリも意識していました。
この方法が信頼を得られたのか、営業成績はまずまずでした。
しかし、3~4年ほど勤めた頃、
自分の中に『このままでいいのか』という疑問というか、悩みが生まれてきました。
若い頃の仕事が厳しいのは当然としても
「どうしたら、自分の生活がもっとよくなるのか?」を追求したくなったんですね。
そこで起業を考えたのですが……
私はいわゆる『学なし・コネなし・金なし』のないないづくしで、
お世辞にも起業に適した状況ではなかったんです。
でも、ひとつだけ武器がありました。
それは『若さ』。
「『若さ』だけは、自分のために使おう、今使おう!」と決め、
いろんな方に助けていただきながら、29歳のときに会社を立ち上げたのです。
起業したときに考えていたのは
「会社という看板を『私』にかけかえても通用するのか」。
新事業を立ち上げるのではなく、
当時の仕事の看板を『私』にしてもやっていけるのかが知りたかったんです。
これはワクワクしましたね。そして嬉しいことに、
前会社のお客様のほぼ全員が私の会社についてきてくれました。
「会社の看板をはずしても、お客様は私についてきてくれる」
とわかったときは感激でしたね。

デュプリケーションという『発想転換』

物販の仕事をしていると、必ず問題になるのが『返品』です。
これは物販をしている限り避けられない。
返品されてきたものは中身は新品であったとしても、
もう『新品』として売ることはできません。
従来は、返品されてきたものは『アウトレット品』として
原価割れしそうなほど値引きして売るのがセオリーでした。
しかし、それでは会社としても困ってしまいます。
「返品されてきたものを、激安で売る以外の方法はないか?」
そこで思いついたのが『付加価値をつけること』です。
当時は今ほどパソコンが浸透していませんでしたし、規格が統一されていなかったため、
メーカーごとにフロッピーのフォーマットが必要でした。
その『ひと手間』を行うことで、付加価値を生み出したのです。
デュプリケーションセンターを作り、
返品されてきた品を使ってデータを入れたりレーベル印刷をしたり、
歌手の歌のデータを入れたり、様々な活用をしていきました。
単なる販売ではなく、一手間をかけるという発想を取り入れたことで、
当社の競争力は大幅にアップしました。
その後もデュプリケーションのニーズは高く、
CDやDVDが出てきてからも一定の需要が生まれ続けています。
今では当社のデュプリケーションセンターは国内最大規模になり、
レーベル印刷やデータの他、データのプロテクトなどのセキュリティにも対応し、
弊社の重要な柱となっています。

38年の歩みが抱えた部品たち

記録媒体の販売、デュプリケーションセンターに加え、
当社ならではの商品も扱っています。廃盤になったコンピュータ部品です。
当社は38年の歴史があり、コンピュータの進化と共に成長し続けてきました。
コンピュータの進化の中、当然たくさんの廃盤商品があります。
その廃盤商品の部品をそのつど仕入れておき、保管・販売をしています。
廃盤商品の部品は、いざ探そうとしてもなかなか見つかりません。
38年の歴史の中で集めてきた部品ですから、
他では見つからないようなものばかりです。

迷いながらも掴み続ける

若い頃は色々なものが「わからない」と思います。それは当然のことでしょう。
大事なのは「わからない」中で何を掴むか、そして掴んだら離さないことです。
現状への不満もあるでしょう、迷いもあるでしょう。
しかし、一度掴んだものを手放してしまえば、またゼロからのスタートになります。
本当にそれでいいのか?
山はいっぱいあります。数え切れないほどあります。
けれど、ひとつのことをずっとやり続けることで、見えてくるものがある。
学生さんには、ぜひひとつのことをやり続けてほしいと思います。