オーナーシェフ 蓮見 雅一

有限会社LASTRICATO オーナーシェフ 蓮見 雅一

オーナーシェフ 蓮見 雅一

有限会社LASTRICATO
設立 2002年8月5日
事業内容
  • 飲食業(イタリア料理)
    2階建て2フロアー異なるコンセプトで営業。
    1階は、「OSTERIA」カジュアルなイタリア料理を
    アラカルトにて提供
    2階は、「RISTORANTE」イタリア料理とフランス料理の
    コラボレーションをプリフィックスコースで提供
会社HP http://www.r-lastricato.com/

イタリアンのシェフを目指して料理専門学校へ

高校時代は、ホテルで配膳のアルバイトをしていました。
当時、時給は1,800円、年末年始は2,500円と、高校生としてはかなりよく、
月30万円ほど稼ぎました。
高校生ながらもアルバイトのシフト管理を任され、
「料理人にならないか?」と誘われたことも。

しかし、ホテルではなかなか自分の希望する部署で働くのが難しいため、
ホテルに勤めるのは気が進まず、卒業後は専門学校に進学。
高校は商業科で、簿記が大好きだったので、税理士を目指そうと思ったのです。
しかし、「自分にはデスクワークは向かない」と感じて断念。

今度は料理人になろうかと、服部栄養専門学校に入学しました。
子どもの頃、洋食好きな母と一緒にピザなどを作ったり、
イタリア料理店の「カルミネ」で食べた料理の味に感動したりした経験から、
イタリアンのシェフを目指していました。

早朝から深夜まで働き、月給7万5千円の下積み時代

卒業後は、長年イタリアで経験を積んだオーナーシェフのレストランに就職。
月給は7万5千円。
店の近くに引っ越すことが採用の条件だったので、
代々木に家賃3万5千円、風呂なし、共同トイレのアパートを借りて住み始めました。

仕事は、市場の仕入がある為、朝6時から始まり、終わると深夜1時頃。
当時、銭湯も開いていないので、風呂に入れません。
やかんでお湯を沸かして体を洗ったり、シンクにお湯をためて浸かったりしていました。
自宅に帰ってからも、簡単なパスタの練習をしていました。

1年と少し働きましたが、やはり、本場のイタリアに行きたいと思いイタリアへ渡りました。

イタリアに渡り、料理よりも大切な「人の教育」を学ぶ

私は、日本でシェフにマンツーマンでみっちり仕込まれたので、
料理の技術はなんとかなったのですが、
人を使ったり教育したりという経験がありませんでした。

ある時、イタリア人シェフに、
「日本の若い人がよく修行に来るが、レシピを身につけて帰国しても何もできない」
と言われました。
料理が出来るだけでは、自分の店はもてない。
人を教育し、お店全体を見れるようにならないと、
店を動かす事は出来ないというのです。
そして、行く先々でイタリア人の若手を5人育てました。
今思えば、このシェフに出会えなければ、今の自分はなかったと思います。

今、日本にはイタリア帰りのシェフがたくさんいます。
イタリアンレストランは、本国よりも日本の方がレベルが高いと思います。
しかし、「早くイタリアに行きたい」という若い人には、
私自身の経験から、
「日本で、基礎を固めて、ある程度、お店を任されるくらいになってから行った方がいい」
と言うようにしています。

「自分が人を使う立場になったら」を想定し、全ての人からよいところを吸収

イタリアでは、どの店でも二番手のポジションまでいき、
人を使う立場になり、イタリア人以上の給料をもらっていました。

イタリアで学んだのは、人が怒られているのを見たら他人事と思わず、
先輩がどのように怒り、後輩はどう怒られていたかと覚えておき、
自分にとって良かったもの・良くなかったものを振り分けておくことです。
それが、自分が人を使う立場になった時、どう導いていくかに活かされるのです。

当時は、サービスマンにも、「どういう考えでこういうことをしているのか」など、
料理以外のこともなんでも聞いて、いいところを吸収するようにしていました。
人の悪いところを見るのは簡単ですが、
それよりも、いいところだけを吸収しようと努めました。
レストランでの食事の時も同じです。
よくレストランに食事に行った時、悪いところばかり見る方がいますが、
それは決して自分にとってプラスにはなりません。

イタリアと日本の働き方の違いにストレスを感じて帰国

イタリアで4年半働きましたが、日本に帰ろうと決めたきっかけは、
「やはり自分は日本人だ」と思ったことです。

日本とイタリアでは、仕事の仕方が全く違うのです。
日本では時間がタイトですが、イタリアは余裕を持って働いています。
朝はゆっくり出勤し、昼はお酒を飲みながらみんなで昼食を食べ、
家に帰って2時間くらい昼寝をして、
6時に集合してまたみんなで夕食を食べて、7時から店を開ける、という感じです。

また、イタリア人はしゃべるのが娯楽という感覚で、常にしゃべっています。
日本人なら、仕事をサッサと終わらせて休憩したいと思いますよね。
私が早く仕事を終わらせると、「手伝ってくれ」と言われるのです。
一度、「しゃべってないで、仕事しろ!」と怒った事がありますが、
ここは、イタリア。
文化が違います。サッカーのラジオを聞きながら、ワイン飲みながら仕事をしたり。

しかし、文化が違うとはいえ、ストレスが溜まって来ました。
また、若いうちに帰国しないと就職先もないと思ったこともあり、帰国することにしました。

ちなみに、イタリアでいろいろな店で働いた中で、一番居心地がよかったのは、イタリアの中でもドイツ語圏のトレンティーノ・アルト・アディジェ州(南チロル地方)でした。
この地方は、仕事の仕方が日本人に似ているのです。
シェフが来た途端にみんながシーンと静まり、誰も無駄な話はせず、黙々と働きます。
あの緊張感は、やはり必要だと思いました。

「自分ならきっと成功させる」29歳で自分の店をオープン

店の経営が順調になってきたと思っていたら、ある時、
オーナーが「この店をアジア料理店にする」と言い出したのです。
また、イタリアンレストランの仕事を見つけないといけません。

しかし、それまで、さまざまなとんでもないオーナーを見てきて、
「自分でもできる」「自分ならきっと成功させる」という自信がありました。
そこで、独立を決意。

そして、2002年 29歳の時に会社を設立し、自分の店をオープン。
前の店から備品等をもらい、テーブルは手作り、壁も自分たちで塗りました。

最初は大変で、私の給料は15万円ほど。
しかし、従業員には自分より高い給料も、ボーナスも払っていました。人は宝ですから。
自分が若い時にお金で苦労したので、部下には同じ思いをさせたくなかったのです。

経営状況を公開してスタッフのモチベーションをアップ

私の店では、経営状況を従業員に全部見せる方針。
私の給料も公開しています。

飲食店は、従業員間の好き嫌いが仕事に与える影響が大きいのです。
客商売なので、人間関係が悪くなるとお客様が減り、経営も悪化します。
チームワークが悪くなると利益が上がりません。

私たちの目的は利益を出すことですが、
個人の感情に会社の利益が左右されない様に経営状況を見せ、
より自分達のやらなければならない事が、明確になるようにしています。
そうすると、従業員は、同じ目標に向かい、一致団結し、サービスも向上するのです。
もちろん、そうやって上がった利益は、従業員に還元しております。  

また、月1回の勉強会で、従業員に経営を教えています。
売り上げがそのまま利益だと思っている人もいますが、
仕入れ代も家賃も人件費もかかることがわかると、
グラス一つでも割らないように気を付けるようになります。
1個1,500円のグラスでも、10個割れたら大きな損害です。
その意識があると、節約もするし、お客様への対応もきちんとするようになるのです。

そして、利益が出たら、自分たちだけでなく、イベント等でお客様にも還元。
どんなに忙しくても、お客様にサービスすることを怠りません。

私の取り分はというと、他の飲食店の社長に比べてかなり少ない方です。
その方が、いい店が長続きするし、従業員も居付くと思います。
長い目で見れば、大きな利益になります。
それから、経営を公開しているもう一つの理由は、
独立した時に失敗して欲しくないからです。
公開した経営状況をみて、「僕には出来る!」と思ったら独立すればいい。
でも、独立する為には、おかねが必要です。
その為には、今頑張らないといけませんよね。
「僕には出来ない。」と思ったら、私についてくればいい。
すごくシンプルだと思います。

自分の死後も店が続いてほしいから、社員教育でマインドを伝える

「ラストリカート」という店名は、イタリア語で石畳という意味。
「ずっと変わらないもの」という意味を込めて付けました。
自分が作ったこの店は、私の後々の世代まで残っていって欲しいのです。

そのために、従業員に経営を教えて、私と同じ考えの人材をたくさん作りたいです。
そうすると、自ずと今後の会社の道も拓けてきます。
今は、その前段階として、人を教育できる人間を教育しております。

社会は「修行」ではなく「仕事」の場という意識を持って

最近、飲食業界に入る若い人たちは、「学校の延長」という感覚の人が多いと感じます。
しかし、社会に出てお金をもらって働くのですから、そういう考えは通用しません。

社会人になるとは何か?
お金をもらうとはどういうことか?
そういう自覚や、それ以前に、ルール、マナー、
身だしなみなどの根本的なものが欠けている人が多いと思います。

だから、私は新人にも経営状況を見せ、「仕事」という意識を持たせるようにしています。
決して「修行」という感覚だけでいて欲しくありません。

従業員を採用する際は、接客業なので、もちろん人柄を重視します。
そして、目がしっかりしている人。
それから、「飲食業界で生きていこう」という強い思いがあるかどうか。
協調性も重要です。
いくら仕事ができても、みんなと仲良くやれない人だと、
チームワークが崩れてしまいますから。

要は、幼稚園で習ったことがきちんとできていれば、
社会人になってもやっていけるのです。
挨拶しましょう、返事をしましょう、「ありがとう」と言いましょう、みんなで仲良くしましょう。
大切なのは、そういうことだと思います。
かく言う私も、経営者としてまだまだ未熟です。
今まで私の周りに居てくれた仲間達と、これからも更に発展していきたいと思います。