代表取締役社長 石川 敦

ハンスグローエジャパン株式会社 代表取締役社長 石川 敦

代表取締役社長 石川 敦

ハンスグローエジャパン株式会社
設立 ドイツ本社 1901年6月
ハンスグローエジャパン 2003年3月
事業内容
  • ドイツ本社ハンスグローエAGが製造する水栓金具(シャワーをはじめとする浴室水栓、洗面水栓、キッチン水栓)などサニタリープロダクトの日本における輸入販売、マーケティングおよび技術サポート。
会社HP
http://www.hansgrohe.co.jp/jp_ja/index.htm

自動車メーカーに就職。30歳で念願のマーケティング部に

ドイツ赴任時代の石川社長

北海道で過ごした大学時代は、自動車に熱中。
自動車部に入って、ラリーに出たりしていました。

卒業後は自動車メーカーに就職。
商品企画の仕事をしたかったのですが、事務系で入ったので
営業本部に配属されました。
初年度の営業研修では、6カ月ほど飛び込み営業を経験し、
1日10軒ほど回りました。
自分自身は営業タイプではないので精神的に辛かったですが、
社会人として身につけなければならないスキルや度胸を
鍛えられたと感じています。

その後、関連会社で1年間経理の勉強をしてから、
当時としては珍しかった営業支援システムの制作を担当。
ディーラーのセールスプロモーションをサポートをするために、
半年ごとに地域を変えながらローテーションで地方を回っていました。

30歳の時、マーケティング本部から声がかかり、商品担当として
東京本社に異動。
それから、商品企画のマーケティングを本格的に始めました。
20代のうちは自分の望んだものとは違う仕事をしていましたが、
与えられたことを一生懸命やった結果、30歳で望んでいた仕事に
就くことができたと思っています。

夢が叶って海外勤務に。言葉の壁での苦労も

趣味は登山。奥様や愛犬と一緒に登ることも

37歳の時、ヨーロッパ事務所に出向するチャンスが
巡ってきました。
ドイツのデュッセルドルフに住み、商品の
ブランドマネージャーとして各国のディストリビューターを
回ったり、新商品リリースイベントでスピーチをしたり。

私は小さい頃から「世界が見たい!」という思いが強く、
国内だけでなくインターナショナルな仕事をしたいと
思っていました。
ですので、それを目指して入社してから自分なりに
英語の勉強を開始。
最初はTOEICのスコアが500点にも満たなかったのですが、
37歳でヨーロッパ事務所に出向する頃には
930点ほどになっていました。

それでも現地の人の会話にはついていけず、
始めの1年間はノイローゼになりそうでしたね(笑)。
会議に出席しても話の内容を全部は理解できなかったですし、
なかなか思ったことが言えませんでした。
しかし、特に海外では発言できないと認めてもらえません。
そのような環境の中で少しずつ、自ら発信する努力を重ねていきました。

「ゼロから新しいものを作り上げたい」。外資系メーカーの日本支社長に

美しいデザインと機能性を兼ね備えたキッチン水栓

海外赴任して5年が経ち、任務期間が終了して帰国することに。
同じ会社のまま元の単身赴任生活に戻るか、東京で仕事を
見つけてまた家族と一緒に暮らすか悩んでいた時期に、
ヘッドハンターから声がかかりました。
ドイツの水栓金具メーカーであるハンスグローエという会社が
日本に支社を作るため、人を募集しているというのです。

といっても、聞いたこともない会社でしたし、
全く縁のなかった業界で何もわかりません。
調べてみると、その当時「レインダンス」という
新商品を発表していました。
ネーミングも商品デザインも素晴らしく、こういう商品が
作れる会社なら面白いのではないかと思ったのです。
また、業界の中でのブランド力もある会社だいうことがわかりました。
これなら日本に進出してもうまくいくのではないかと判断し、
入社を決意しました。

一方では、20年間一つの会社にいて、仕事をやり切ったと
感じていたこともあります。
ですので、何もないところから新しいものを
作り上げるということに何よりの魅力を感じました。

世界シェアNo.1! ハンスグローエ製品の日本での販売拡大を狙う

世界で初めてエアインジェクションシステムを搭載した「レインダンス」ハンドシャワー

ハンスグローエ ジャパン株式会社は、私と本社の
ドイツ人社員の2名で、何もないオフィスからのスタート。
まずは業界を知るために、最初の1年間は積極的に
お客様回りをしました。

設立当初はスタッフを集めるのに苦労するなど大変なことも
多々ありましたが、ゼロからスタートしたことからくる
高揚感がありましたね。
我々の目的は、建築家やデザイナーの方々に
ハンスグローエ製品の優れたデザイン性をアピールし、
採用してもらうこと。
そのために、ブランド認知度やブランドの
価値を高める活動をしています。
また、販売代理店のネットワークを作ったり、
日本市場に合わせた製品に改善していくことも課題です。

ハンスグローエのシャワーの生産販売台数は世界シェアNo1。
日本でのシェアはまだまだ十分ではありませんが、
ハンスグローエ本社における売上の80%はドイツ国内以外で
あることからも、世界中で支持されていることがわかります。
ですから、日本での販売チャンスも大きいと考えています。

世界の5つ星ホテルで採用されている「レインダンス」

フランス人デザイナー、ジャン・マリー・マソーとコラボレーションした「アクサーマソー」コレクション

弊社の主力商品である「レインダンス」というシャワーシリーズは、
「自然の雨のようなお湯で全身を包む」がコンセプト。
水1に対して空気3を混ぜ込むため、ふんわりと柔らかな肌あたりが特徴です。
また、水一粒あたりの表面積が大きくなることから、
温まりやすく冷めにくいという効果もあります。

ゆっくり湯船に浸かる時間がないという忙しい方にも、
シャワーで身体の汚れだけでなく心の疲れも落としていただける商品です。
その心地良さから世界の5つ星ホテルで使われ、日本でも都内の外資系ホテル
の半数以上で採用されています。

チャンスをつかむためには、日々の準備の積み重ねが大事

今は大変困難な時代だと言われますが、私の若い頃も
バブル景気とバブル崩壊を経験したりと、
いろいろなアップダウンはありました。
その中で自分を維持していくためには、自分が
どういう仕事をしたいのか、または単純な夢でもいいので
目標をもつことが重要です。
そして、そのためには何が足りなくて、
自分の弱みはどこで、何をしていかないといけないのかを
常に見失わないことが大切。
それをふまえて、毎日30分でも何かしら努力したことを
蓄積していく習慣をつけることが何より大事ですね。
その積み重ねが、5年後、10年後に大きな差になっていくと思います。

最終的に「自分が何をしたいのか」という強い思いがないと、
日々の忙しい中で時間を見つけて自分に投資する
モチベーションは沸いてきません。
私自身は「海外で仕事したい」という夢のために、
毎日の通勤電車の中で英語の勉強をしました。
また、マーケティングの勉強のためにどこに行くにも
ビジネス書などを持って行って、わずかな時間も惜しんで
読んでいました。

人生の転機となった
「マーケティング部への異動」「海外勤務」という
二度のチャンスにうまく乗れたのは、
常に準備を怠らなかったからだと思っています。
チャンスは誰にでも平等に巡ってくるものだと私は考えています。
しかし、常に転がっているわけではないので、
耐えなければならない時期も。
その中で、自分の望むものが目の前にやってきた時に
上手につかまえて逃がさないためには、
日々の準備の積み重ねが大事なのです。