代表取締役社長 柴田 広次

株式会社パルコ・シティ 代表取締役社長 柴田 広次

代表取締役社長 柴田 広次

株式会社パルコ・シティ
設立 2000年4月1日
事業内容
  • オンラインショッピングモール『PARCO-CITY』の企画、開発、運営/
    全国のパルコ(20店舖)含む、大型商業施設のホームページ制作及び運営受託。を中心としたwebコンサルティング
  • ファッション業界に特化した求人サイト「shops navi」の運営
会社HP http://www.parco-city.com/

パルコで多彩な業務を経験し、グループ会社の社長に

高校までは福島県郡山市で過ごし、筑波大学に進学。
学生時代からバンドを組んでギターに熱中し、いろいろなコンテストに出場しました。
漠然と音楽関係の仕事をしたかったのですが、なかなかそれで食べていくのは難しいと感じ、就職することに。

新卒で、当時は全く知らなかったパルコに入社。それから28年間、
店舗運営、マーケティング、宣伝、広告制作、美術や音楽の企画などありとあらゆる業務を経験しました。
入社してすぐに販促の部署に配属され、宣伝・広告業務を含め、11年間は本部でプロモーションを経験。
その後、名古屋パルコ、津田沼パルコ、調布パルコで店舗運営に携りました。

再び本部に戻って宣伝部マネージャーに。それから、大分パルコ、渋谷パルコの店長を経て、
宣伝局長、店舗運営局長になり、店舗全体の運営を任されました。
そして、2011年3月、グループ会社のパルコ・シティ社長に就任。

様々な経験が活かされる

パルコはリアル店舗のビジネスへの注力が偏り過ぎ、Eコマースへの参入が遅れています。
その間に、ZOZO TOWNや楽天、アマゾンなどが急成長しました。

二番手、三番手となると、やりやすい面もありますが、なかなか追いつけません。
それなら、先行している会社をただ追いかけるのではなく、これまでに築き上げたパルコのブランド
――他と違う、新しいものが好きとか、昔で言うサブカルチャーとか――や、当社の独自の視点、
目の付けどころが生命線だと感じています。

私は、営業系の役員とは違い、店舗の運営だけでなく、
宣伝、美術や音楽の企画などありとあらゆる業務を経験してきました。
そのおかげで、独自の視点や、社内外で最も多彩なネットワークを持っているのではないかと思います。
そこで、「変わったことをやらせるなら」と私に白羽の矢が立ったのだと理解しています。

ネット世界だからこそ自分がリアルに見て感じたものを伝えたい

じゃあ、これから何をしていくか。
パルコ・シティのビジネスを改めて成長させるには、まず誰と手を組むかが一番大事です。

3月1日に社長に就任して2日後、ニューヨークに行きました。
マンハッタンの広範囲でアートのフェスティバルがあったからです。(そして帰国後まもなく
東北大震災がありました。これは今後のパルコ・シティのビジネスの方向性に大きな影響を与えました)

これからは、他のECサイトと同じように服だけ売っていればいいのではなく、
デザインやアートなど、生活を豊かにするものを提供することが非常に重要だと考えています。
ニューヨークに住んでいるイラストレーターなどに会いに行くなど、改めて精力的に人のネットワークを広げています。
6月には、ニューヨークに続いて世界最大級のアートフェア、「ART BASEL」(スイス)にも足を運びました。

事業体のトップである社長が自らいろいろなところに出かけていかないと、なかなかスタッフに伝わりません。
今は、インターネットで何でも分かってしまうので、みんな情報はすごく早いのですが、
結局は体験していないので、実感が伴っていません。やはりいろいろな物を実際に見て、
自分の見たものをしっかり伝えていかなければいけないと思うのです。それは、社長が率先してやらなければ。

2年で「パルコ・シティ」ブランドを広く認知させたい

私が社長になったからには、パルコ・シティをグループで一番自由で元気な会社にしたいですね。
ただ売上目標を達成させるのではなく、そのために、いかに独自の強みを早く確立していくかが勝負。
ブランドを確立させるには2年はかかると思いますが、2012年の終わりには、「パルコ・シティ」を
広く周知させられるよう、認知度アップに取り組みます。

今、当社はビルの12階の一部のスペースにありますが、社員には
「12階のワンフロア全部もらう」と宣言しています。それが、「営業利益をいくら」というよりも、
会社が成長するということが最も明確に実感できる目標になると思うのです。

ファッション=セールに異議!「ここにしかない」価値を提供したい

今のファッション業界の問題は、前年から一生懸命にアイデアやデザインを練って
クリエイティブなものを作っても、春に3万円で売っていたのが1ヵ月もたつとセールになり、
夏には70%オフで最終処分。そんなサイクルに、誰が好き好んで入るでしょうか。

また、アウトレットは元々売れ残りの最終処分場だったはずが、今やアウトレット用に商品を作るなど、
本末転倒も甚だしいことになっています。アパレル業界は自分で自分の首を絞めているのです。
一方、クリエイターが作るアートは値引きしません。
最初は3千円のものが、ある日3万円になり、(極論すれば)3億円になるのがクリエイティブの世界。
だから、そもそもある価値を割り引いていくビジネスではなく、どれぐらい価値が変わらないものを
提供するかが重要なのです。

「ここでしか買えない」ものを提供するのが、パルコシティの価値。
そこを徹底し、WEBの世界でひときわ異彩を放ちたいという意気込みを持っています。

アートの普遍的な価値を伝える「クリエイターズマンション」

すでに、WEB上で非常にユニークなショップを立ち上げています。
「クリエイターズマンション」といって、60名ほどのアーティストが入っています。
それぞれの扉をクリックすると、手作りの人形やアクセサリーなど、通常のお店では
なかなか入手できない品が出てきます。
大量生産され、すぐに価値が下がるような商品を扱っているのとは違います。

同じ、アーティストのセンスを作品に込めながらも、一方では億、一方では半年で70%オフ。
私は今まで、美術の企画も、アパレルの店長も経験し、ファッションはセールをしないと売れない
という現実もまざまざと見てきました。そこで、改めて何を売ったらいいかと考えた時、
規模としてのファッションをどうやってうまく売っていくかという部分も大切ですが、そうではない
普遍的な価値があるもの、独自の品揃えや独自の仕組みでどう売っていくか
ということが課題だと考えています。

それがベースになっているのがクリエイターズマンション。
これは、他のECサイトが真似できるものではないと思います。

どこの店にも出ていない、あるいは一点ものの商品を作っているアーティストが住んでいる
クリエイターズマンションをどんなふうに広げていくか。それは、自分だけではできません。
私は、28年間のキャリアの中で、有名ミュージシャンやアーティスト、ビジネスマンなど、
本当にたくさんの方に出会いました。そのお付き合いをフル投入していこうと考えています。
本当に、周りにおもしろい人がたくさんいますので。さらにネットワークを広げ、
いろいろなアーティストに出会うため、思いたったらすぐニューヨークにも行くのです。

一番使えるのは「反応がいい人」

今のパルコの社員もそうですが、20代前半の人はすごくおもしろいですね。
元々、WEBで育ってきている人なので、私の世代とは体内にあるインフラが全然違います。

ただ、よく言われるように、冒険心や、一歩前に行こうという感じは見られません。
私自身が若い時から相当無茶をして、相当叩かれながらきたので、
自分が20代、30代の頃と比べると物足りない気がします。私はよく「変わっている」と言われますが、
まだ自分以上に変わっている若いスタッフに出会っていないですね。

パルコ時代から採用面接をしていますが、だいたいみんな、面接で志望動機を聞くと、
最初に「はい、志望動機は3つあります」とか言うんですよね。「じゃあ4つ目はないの」なんて
意地悪を言ったりしながら、会話のテンポや反応を見ます。
何を言ってもいいのですが、
反応がいい人が一番いいですね。考えをめぐらせて答えるよりも、
こちらの質問の途中からかぶせるくらいのテンポがいい、反応がいい人が一番「使える」と思います。

仕事の原点は、人に興味を持つこと

仕事をする上で大切なのは、何にでも興味を持つこと。
中でも、人に興味を持つことに尽きるといっていでしょう。
仕事とは、人と人との絆やつながり、人と関わることで成り立っているのですから。
人に興味を持てないのなら、そもそも就職なんてしない方がいいですよ。

今も昔も、「やりたいことが見つからない」という学生は多いですが、
やりたいことなんて学生のうちから分かるわけがないのです。その会社が
自分に合うか合わないかも、会社に入って1年や2年で分かるわけがない。

ただし、その会社の人が嫌ならすぐに辞めた方がいい。
人に興味を持って、その人と合わないのなら、あまり我慢しない方がいいです。
それ以外のことなら、すぐに辞めるべきではありません。

新しいアイデアを生み出す源は、既存のアイデアを数多く持つこと

私が、新入社員に必ず紹介する本があります。
それは、ジェームス・ヤングの『アイデアの作り方』。
60年くらい前に書かれた本なのですが、これが私のバイブルになっています。

この本には、「全く新しいアイデアなんていうものはなく、アイデアとは既存の要素の新しい
組み合わせである」ということが書かれています。この言葉は、仕事の仕組みを全て言い表しています。
これが「これとこれがくっつくとこうなる」という発想の源なのです。
私は、この1フレーズだけで全ての仕事ができると確信しています。

しかし、そのためには、いろいろな要素を前もって集め、既存の要素の引き出しをきちんと持っていないと、
新しい組み合わせはできません。実はハードルが高いんですよね。