代表取締役 佐藤 真由美

株式会社クリックベネフィット 代表取締役 佐藤 真由美

代表取締役 佐藤 真由美

株式会社クリックベネフィット
設立 平成16年11月
事業内容
  • 社会保険労務に関するコンサルティング
  • [労務管理に関する相談・指導・人事管理に関する事務・アウトソーシング
  • 企業における福利厚生に関する調査・研究・企画の請負・アウトソーシング
  • 在宅看護・在宅介護の受託・請負
  • 情報処理サービス業
会社HP http://www.clickbenefit.co.jp/

マイドクターの重要性

小さい頃は非常に体が弱く、
よくひきつけをを起こしては病院に通うような体質でした。
その時私の主治医だったのが、
愛育病院の高橋悦二郎先生と、
前埼玉県医師会副会長の下条久先生でした。
お二人は連携を取りながら私の治療に当たってくださり、
その姿は子供心にも非常に格好良く思えました。
医者同士が連携を取ることによって、
一人の人間の命をどれほど救うことができるかを目の当たりにした経験でした。

その後、小学校で扁桃腺の手術をしてからは健康体になり、
病院に通う機会は少なくなりました。
それでも何かあるごとに下条先生に診ていただいたのですが、
自分の病歴を知っているかかりつけ医師=マイドクター
という存在の重要性は、
大人になるにつれてどんどん実感していきました。

成長して大学生になった私は、日本大学文理の独文学科に進学。
その時の恩師の先生は医学部にドイツ語を教えに行っている方だったのですが、
大学4年次に「医学部で秘書のアルバイトを探しているから
行ってみないか」と声をかけていただきました。
当時の医学部長のお兄様が私の恩師だったこともあり、
また既に就職先も決まっていたので、そのお話をお受けしました。

いざ行ってみると、本当に貴重な体験をすることができました。
例えば、日大医学部救命センターのオペ室を見学させてもらった際は、
運ばれてきた患者は素人目には助からないように見える状態。
しかし救命スタッフは、どんな状態でも心臓さえ動いているなら治療を施します。
心臓が止まるまでは決して諦めません。
医療の現場の凄まじさを、最前線で垣間見ることができました。

監査法人にメンタルヘルスを

そして、大学を卒業し就職。
メーカーの役員秘書でした。
しかし働いていくうちに、この先このまま結婚してもいいのですが、
「一生食べていける仕事ってなんだろう」という思いが生まれました。
同じく秘書を務めていた先輩が人事部に栄転したこともあり、
私も人事の仕事をやってみたいと思うようになりました。
そんな時に、ご縁があって監査法人の人事部に転職することができました。
監査法人とはプロフェッショナルの世界です。
企業が上場するにあたって、程度の差こそあれ監査法人が入ります。
公認会計士は企業の生命線だけではなく、
そこで働くの家族の生活も背負っているのです。

そのプレッシャーはとても強く、精神的にバタバタと倒れる人が多くいました。
公認会計士たちの健康管理の甘さは、クライアントに迷惑をかけます。
そして難しい試験を突破して育てるのにも時間がかかる彼らに、
そんなにころころ倒れられては人材が不足してしまいます。
膨大な数の一部上場企業の監査を、
たった3つの監査法人が手分けしてやっていくことを考えれば、
人材の不足は非常に高いリスク。
私は求職の窓口と共に、そういった相談窓口としても話を多く聞いていたので、
公認会計士のメンタルヘルスをなんとかしなければ、と考えました。
当時の監査法人には産業医がきちんと置かれておらず、
健康診断や健康管理という仕組みもあって無いようなものでした。
つまり、トーマツがどこの監査法人よりも先駆けてこういったことに取り組めば、
世の中にトーマツのクオリティを実証することに繋がるはず。
そのことを念頭に置いた上で、
健康管理室を兼ねた労務管理室を立ちあげさせてほしい、
と上層部に主張したところ、資金を出していただくことができました。
男社会かつドメスティックなこの業界で、
こんなにも提案がすんなり通ったことはとても意外でした。

しかし使える資金は300万円という限られた額。
そこで、お世話になった日大医学部の学部長に医師を紹介していただき、
報酬をそこまで払えない旨もお伝えした上で産業医として
来ていただけることになりました。
お陰で残ったお金を医務室の設備に投資することができ、
ぎりぎり300万円で抑えることができました。

働く人の為の仕組みを次々に構築

しかし、ただ作っただけでは問題は解決しません。
産業医に相談することは人事評価でマイナスなんじゃないか、というような
抵抗感を示す人も少なくありませんでした。

産業医の先生を当然のものとして活用できるような
雰囲気を作る必要がありました。
例えばアメリカにおける会計士の資格であるCPAを持っている人は、
みんなマイドクターやマイ精神科医を持っていることが普通です。
プロフェッショナルな仕事をして生きるのであれば、
それはむしろ当然のことなのです。
あとは上場企業の監査にあたって、
証券取引所で労働衛生の評価が厳しくなりました。
評価が厳しくなるということは、
その前に監査を入れようと考える企業が増えるということです。

しかしそんな時に、自分達が労働衛生について知識だけではな
く実感として知っていなければ、きちんと評価できません。
そう言ったことを会計士の方々に説明すると、
みなさん素直に受け止めてくださって、
産業医の先生に些細なことでも相談しに来てくれるようになりました。

このことをきっかけに、私は経営陣から評価されるようになりました。
監査法人に勤めていた頃は、これを含め3つの実績を上げました。
2つ目は、それまで会計士が所属していた
税理士会の健康保険組合から脱退し、
監査法人だけの健康保険を新しく作るという事業。
この時作った仕組みは、保険証のカード化とネットを介した申請システムです。
みなさんが現在持っているようなカード型保険証のさきがけは、
この監査法人の健保が発行したものなんですよ。
そしていざ健保を作ったものの、
お金の流れに厳しい公認会計士を相手にする制度なので、

もっとオープンにできるものはきっちり公表しようと考えました。
そこで保険料の徴収額や会社からの負担額、
さらにみんなが自由に使える保険事業費をポイントで表示し、
ウェブ上に陳列させた商品と交換できる仕組みを作成しました。
3つ目は、働く女性の育児の為の時短制度の適用です。
私が在籍していた頃から、事務所が非常に忙しくなり、
女性会計士や、アメリカのCPAを持っている人も採用するように。

自然、女性社員が増えることになります。
しかしここの場合は、1年間休職した後は普通に働かなければなりませんでした。
仕事のできる女性が出産を理由に大勢辞めてしまう、これは損失であると考え、
自分の首を懸けて時短制度の延長を認めさせる仕組みを作りました。

「ベネカ」を世に出す使命感

その後退職し、クリックベネフィットを設立しました。
当社のポリシーは、
「前向き」「謙虚さ」「使命感」の3つです。
前向きにならなければ前には進めません。
謙虚さが無いとどこかで驕って大きなミスに繋がります。
そして、医療機関と患者様をつなぐという使命感。
当社の「ベネカ」のカードを通せば、
既往歴から所属企業や家族への連絡先を調べることができます。

必要な処置を迅速に取ることができる、つまり人命救助に繋がるシステムです。
大規模な災害が起こった時にも必ずや役に立つはずです。
このシステムを一刻も早く世に出すこと。

クリックベネフィットは今後、この使命を感じて行動しなければなりません。
新卒の方は、現在の就職難も影響して、
とにかく働き口さえ見つかればいいという考え方になりがちです。
しかし就職難だからこそ、
自分が何をしたいのかをはっきりさせなければならないと思います。

私自身が人事という道を選んだのも、
一番初めに勤めたメーカーでも先輩に言われた、
「具体的にどんな仕事に就きたいのか?
どんな仕事がやりたいのか?それを考えなさい」
という言葉がきっかけでした。
キャリアの形成には出会いが重要。
前述した先生方や、メーカー時代も素敵な出会いに恵まれました。
監査法人に勤めていた時、
様々なベンチャー企業を上場させた公認会計士の上司には、
「自分の考え方だけで進むのではなくて、
周りの関係する人達それぞれの立場を把握して行動すること」
が大切だとアドバイスされ、結果上手く行ったこともありました。
働く上で、自分のお手本となる先輩、
同僚やライバルを見つけることは本当に重要だと思います。

人事の視点から見ても、働きはじめの3年は本当に重要。
この期間の過ごし方を見て、
人事は「この人はどこに行くか」「どういうポジションを与えるか」を考えるのですから。
嫌な仕事でもとにかく引き受けて、わからないことは先輩に聞いてどんどん吸収する。
ちょっとダメだったから、怒られたから辞めるのではなくて、
その山を乗り越えていくことで本当の勝ち組になると思いますよ。