代表取締役社長 西堀 耕太郎

株式会社日吉屋 代表取締役社長 西堀 耕太郎

株式会社日吉屋 代表取締役社長 西堀 耕太郎

株式会社日吉屋
設立 2003年10月(創業は江戸時代後期)
事業内容
  • 京和傘、和風洋傘、和風照明、提灯、野点用品の販売、体験工房の運営
会社HP http://www.wagasa.com/

●海外の人たちとの出会いが私の原点

中学・高校時代は合気道の道場に通っていました。
私の地元である和歌山県新宮市は合気道の発祥の地で、
道場には世界中から修業者が集まっていました。
その中には、世界中を放浪してきた人や、大統領の元ボディガードなど、
ユニークな経歴の人が多くとても刺激になりましたね。

その頃はバブルが弾けたといっても、まだ、いい大学に行っていい会社に入れば
将来が開けるという考えが一般的で、受験戦争が激しかった時代。
ところが、合気道の道場で出会った海外の人たちは、
学歴も大企業も安定も全く縁がない人ばかり。
彼らを見て、「世の中の価値観は一つじゃない。
世界を見てみたい」そう思うようになりました。

そして、高校卒業後はカナダのトロント大学に留学。
同じように各国から来た留学生の中には、もともと裕福な人たちもいれば
紛争から逃れてきたような人たちもいる。
いろいろな考え方や価値観に触れ、初めて自分の将来について
真剣に考えるようになりました。
「何か自分の力でやってみたい!」

●和傘との出会い

1年半で帰国し、起業資金を貯めようと仕事を探し、地元の新宮市役所に就職。
たまたま国際交流事業を主とする課で英語が話せる職員を募集していたのです。
普段は観光課で働き、時には通訳をして、20歳から5〜6年勤めました。
その間に妻と出会い、23歳で結婚。その妻の実家が、日吉屋だったのです。

ところが当時家族だけで細々とお店を経営していた日吉屋は、
和傘がなかなか売れずお店をたたむことを考えていました。
「こんなに美しく、歴史ある事業をやめるのはもったいない!他にも方法があるはずだ!」
そう思った私は、2004年、日吉屋の五代目就任を決意しました。

●インターネットでブレイクスルー

公務員時代、新宮市で主要産業だった林業が斜陽になったのをきっかけに
観光事業に力を入れるはじめ、そこで私は当時まだ珍しかった
ホームページを作成して市の知名度向上と観光ピーアールをするという業務に従事し、
成果を上げた経験がありました。

これを日吉屋に応用できるのではないかと思い、お店のホームページを作ってYahoo!に登録。
すると和傘はニッチな商品ですが、和傘に興味がある人がかなりの確率で
ホームページを訪れてくれるようになりました。
また、メディア関係の方々が情報を探すのにインターネットを使うようになり、
テレビや新聞などで全国に紹介される機会がどんどん増え、
それに伴い売り上げも増えていきました。

●和風照明『古都里−KOTORI』でグッドデザイン賞を受賞

売り上げが増えたといっても、和傘を差す人が増えているわけではなく、
潜在需要を掘り起こしているだけ。
もともと和傘は着物を着る人だけが使うものなので、いずれ頭打ちになってしまいます。
今の時代に合った形にしなくてはいけないと思い、
和傘のよさとは何なのかと改めて考えるようになりました。

「骨が多いからきれい」「和紙に光が透けるときれい」「たためる」など。
それらの特性を活かし、照明デザイナーやブランディング・プロデューサー達と
共同開発したのが、和風照明『古都里−KOTORI』です。

2006年に発売を始めると、その斬新なデザイン、アイデアと、
和傘という伝統工芸を使いながら和傘でないものを作っていることが注目され、
各メディアで紹介されました。
そして、2007年度グッドデザイン賞中小企業庁長官特別賞を受賞。
いよいよ将来性を感じた瞬間でした。

●伝統とは革新の連続

伝統工芸、伝統産業というと「古いもの」というイメージがありますが、
伝統とは革新の連続だと思うのです。
はじめは「新しいもの」だったのが、一般化し、時代が変わると「古いもの」に。
浮世絵も、今では伝統美術とされていますが、江戸時代には当時の流行を紹介する
ファッション誌のようなものだったのですから。

ただ、自ら需要を開拓し、時代に合わせてもっと実用的なものに変化を遂げ続けないと
ただの「古いもの」としていずれは消えていきます。
和傘も、もっと実用的に使えるように変化していかないといけないと考え、
傘という形にこだわらずその仕組みを活かし、和室以外のインテリアにも使えて、
普通におしゃれ、かっこいい、落ち着くと思って利用してもらえるような、
そんな照明を創りたい。そんな想いで何度も試作を重ねて今の形に仕上げてきました。

●「グローバル老舗ベンチャー」

最近では、日本では伝統工芸というくくりになってしまいますが、
ヨーロッパなら新鮮な驚きをもって迎えてもらえるのではないかと考え、
2008年からヨーロッパで販売を開始。
同年、#FORM(ドイツデザインプロダクト賞)を受賞。
海外のメディアでも数多く紹介されています。
斬新なコンセプト、エコロジカル、デザインが美しいということだけでなく、
伝統を守りながら新しいことに挑戦し続けるユニークな会社であり商品だということで
高く評価されています。

今後も伝統を守りつつ、50年、100年と確信を起こし続ける
「グローバル老舗ベンチャー」として
多くの人に感動を与えていく存在であり続けたいと思っています。