代表取締役 林 直樹

株式会社リン・クルー 代表取締役 林 直樹

代表取締役 林 直樹

株式会社リン・クルー
設立 平成10年7月
事業内容
  • 飲食店経営(「かまくら」「タパスブランコ」など、30店舗の居酒屋を 経営)
会社HP http://www.rincrew.co.jp/

サラリーマンにはなりたくない

小学生の頃、朝、学校に行く時と、夕方、公園で遊んでいる時に、毎日必ず見かける
スーツ姿のおじさんがいました。
後で、それが「サラリーマン」といわれる人だということを知りましたが、
毎日決められた時間に出かけて、決められた時間に帰ってくるような生活は嫌だなあと
その頃から漠然と感じていました。
中学校の時には「サラリーマンにはなりたくない」と明確に思っていましたね(笑)

18歳から、ディスコや飲食店などで働いていました。
22歳の時、ディスコやカフェバーを経営する会社に中途入社。
入社後1週間ほど経ったある日、初めて社長に会って衝撃を受けました。
24歳にして六本木の一等地で100坪の店を持つ身。
自分とたった2歳しか違わないのに、この違いはなんなんだ?
「社長みたいになりたい、そのためには社長のそばで働き、学習したい!」
それから4年必死に現場で汗をかき、頭をフル回転して結果を残し、
社長の膝元である役員のポジションまで登り積めました。

その実現に向けての、当時の僕のミッションは2つ。

攻撃的な面では、「数字を残すこと」。
自分にチャンスが訪れた時に力を発揮できるように、
自分に直接関係ないことでも「俺ならこうする」と考えていました。

守備的な面では、「信頼を得ること」。
それまでに働いた店では、丁寧に指導してくれる先輩がいるとチームワークが良く、
売り上げも良く、離職も少なく、結果として信頼を得ていました。
僕もそうなりたかったんです。

役員として、社長の下で3年ほど勉強させてもらい、経営的にも絡みました。
この社長の下でずっと働きたい、
その方が楽かもしれない、という思いもありました。
しかし、自分が社長になるために7年間頑張ってきたのですから、
やはりチャレンジしなければ。

1号店オープン当日、会社にはたった38万円

オリジナルダイニングかまくら

そして、飲食店を始めるために、29歳で独立。
今まで水商売や飲食業界しか経験していなかったこともありますが、
単純に「ありがとう」「おいしかったよ」と言われるのが好きなんですよね。

店の物件探しに不動産店を回ると、思った以上にお金かかることがわかりました。
それまでも店を作る立場でしたが、唯一やったことがなかったのが、お金の調達です。
会社に実績をつけないことには、信用もなく、銀行からお金を借りることもできません。
そこで、店を作るのはいったんやめて、レストランのオペレーションの仕事をすることに。

そして2年後、渋谷に『オリジナルダイニングかまくら』1号店ができました。
しかし、オープン当日、会社にはたった30万円しかありませんでした。
僕の通帳には8万円。

オープン直前には什器を買い揃えるために100万円ほど必要です。
12月14日にオープンして、月末には社員の給料と家賃を払うために300万円ほどが必要。
同級生や知人に頼んで、なんとかかき集めました。

しかし、翌月1月の2週目までは全然お客様が入りませんでした。
お金もなく、宣伝もできません。
ところが、2週目の週末から急にお客様が増え、予約も入り始めました。
オープン当初に来られたお客様に、
ショップカードを何枚も持って行かれた方が多かったので、宣伝してくださったのでしょう。
当時、かまくらをコンセプトにした店がなかったので珍しかったんですね。

おかげでお金はなんとかなり、銀行からもお金が下りて、
1ヵ月後には借りた400万円を全額返すことができました。
最初の月は、通帳に6万円残りました。
もちろん、僕は給料を取れませんでしたが(笑)

オープンして半年間は、17時から朝4時まで、毎日店に出っぱなしでした。
5時頃帰宅して、納品書のチェックなどをして、寝るのは7時頃。
しかし、9時には業者さんからの電話で起こされるんです。
さすがに耐えられなくなり、業者さんに「11時以降にしてください」とお願いしました。

そんな追い込まれた状況でしたが、
「絶対負けない」「後に引けない」という意気込みで頑張りました。
今となっては、全てがいい思い出です。
現在が良い状況になっているからこそ、そう思えるんでしょうね。

店を作りたいのに作れない――「信用」の悩みは尽きず

ずっと悩まされ続けたのは、社会的な「信用」です。
1号店が軌道に乗り、2号店を作りたいと思っても、
会社の信用がないため、なかなか店舗を貸してもらえませんでした。
やりたいのにやれない――これはつらかったですね。
僕個人としての信頼は、一生懸命頑張って培ってきましたが、
会社としての信頼は、それ以上に力と時間を使って築かなくてはいけないのだと気付きました。

20軒、30軒と申し込んでは落ちてばかり。
そこで、不動産屋ではなく、物件のオーナーに直接プレゼンさせてもらうよう頼みました。
「金はないけどやる気はあります。10年後の自分に賭けてください。チャンスをください」 
お金も信用も実績もない僕には、それしか武器がなかったんです。
そして、会って話を聞いてくださる方、理解してくださる方にめぐりあえて、
2年半後、やっと銀座に2号店をオープンさせることができました。

2年半前からは、コンスタントに出店できるようになりました。
信用がついて、物件に申し込むと受かるようになったんです。
銀行からも「お金を借りませんか?」と言っていただけるようになりました。
30店舗を展開している今でも、「信用」の大切さを日々実感しています。

できなくても、意識して行動することが大事

わたしたちは 5つの『 こころ 』で活動し続けます。

当社では経営理念として“行動五心”“CREW主義”を掲げています。
初めはできなくてもいいとおもいますが、意識して行動しようという心がけが大切です。
お客様の気持ちを読んで、どうしたら喜んでいただけるかは、経験を積まないと分かりません。

今でも、時間がとれる限り、新店のオープン時などに店に足を運ぶようにしています。
スタッフがトレーニングをしていると、やることがないので片付けをしていますが。
アルバイトのスタッフは僕が社長だとは知らないので、工事業者のおじさんだと思われていて、
「社長からの挨拶」で話した途端によそよそしくされたことも(笑)

自分の店に限らず、飲食店に行った時に意識しているのは、
お料理を運んできてくれた時に「ありがとう」と言うことです。
それを喜びに感じてほしいんです。
飲食業は大変だから働きたくないという人も多いですが、
どうしたら気持ちよく働けるか、そのために大きなものは、お客様の言葉だと思います。

座右の銘は「初心忘るべからず」と「絶対負けない」

僕は、お金がないところからスタートして、
スポンサーがいるわけでもなく、ここまできました。
しかし、まだまだ通過地点です。
1号店をオープンした時の気持ちを忘れないように、
いつも「調子に乗ってるんじゃないぞ!」と自分に言い聞かせています。

「ありがとう」のために考えて動ける人に

『ありがとう』と『笑顔』を忘れずに

サービス業なので、
「相手の気持ちになって考えたい」
「何かをすることでお誉めの言葉をもらいたい」という人と一緒に仕事したいですね。

そして、自分に正直なことも大切。
就職先でもなんでも、人に言われたからではなく、自分がいいと思ったところに決める。
そうしないと、失敗したら人のせいにすることになります。
自分で決めたら、うまくいかなくても納得がいきますから。