代表取締役社長 斎藤 健司

株式会社金の星社 代表取締役社長 斎藤 健司

代表取締役社長 斎藤 健司

株式会社金の星社
設立 1919年11月1日
事業内容
  • 児童図書の出版

本を愛でる幼少時代

金の星社は創業以来90年続く児童図書専門出版社で、私は三代目の社長です。

同族会社ですので幼い頃から会社を継ぐということが決められていまして、
小さい頃からいわゆる帝王学を刷り込まれて育ちました。
また、本に囲まれて育った幼少時代、
自然と本の魅力に夢中になっていったことを覚えています。

金の星社は、子どもの本の出版社では一番の老舗ですし、
ナンバーワンだと勝手に思い込んでいましたので、
漠然と当然のように自分が親の会社を継ぐんだろうと思っていました。

画商、古書店を経て

大学当時は、芸能関係の裏方に興味があり、プロダクションでバイトに明け暮れていましたが、
数年後には会社に戻らなければならない、という前提もあり、
父のすすめもあって、就職は美術雑誌の出版もしている画商に決めました。
画家さんとの繋がり、出版の基本などはここで培えました。

その後、古書店から派生して出版、新刊取次・バーゲンブックと、
本に関するあらゆる仕事をしている会社でお世話になり、
出版業界のことをトータルに理解することができました。

そうやって別の会社で働いていても、
経営者になることに対する重圧を常に感じてはいました。
社員や会社に関わる方々とその家族の生活が自分にかかっているのですからね。
画商で働いていたときには、とても忙しく、キツイ日々が続いていたのですが、
それでも、経営者という立場よりは、厳しいノルマがあり、
肉体的に辛い画商のほうがずっと楽なような気がして、
3年のはずが5年、そこでお世話になってしまいました。

6年間外で働き、十分な修行時代を過ごした後に、
株式会社金の星社へ一般社員として入社しました。
このときにはすでに経営者としての決意を固めていましたね。
その後、役員を経て、37歳で父の跡を継ぐに至りました。

問題点の数は、可能性の数

社長になって、これ程に見える景色に違いがあるのかと驚きました。
父が社長をしているときは、それに従っていれば良かった。
(納得しているかどうかは別として)
しかし、自分がいざ父の立場になってみると、
それまでは見えてこなかった様々な問題が見えてきました。

最初は、更からやったほうが楽なんじゃないか、なんて
本気で考えた時期もありましたが、
情熱を持って一つ一つを改善していくことで、会社はどんどん良くなっていきました。
問題点の数は、会社が良くなる可能性の数なのです。

『出版人』としての拘り < 『企業人』としてのチャレンジ

子供の本のビジネスはロングスパンで考えるものです。

例えば、お母様が小さい頃に読んだ本を子供に読ませたい、
なんて話はよくあることですよね。
ですから新刊は、他のジャンルに比べるとそれほど多くは出しません。

咋年はやや多めで、90冊ほどの新刊を出しました。
最近では学習関連の商品なども出しておりますし、
少子高齢化の影響なども考えお母様方へも対象を広げて、
子供のためのお弁当や朝ごはんの本も出しています。
いずれも売り上げは良いですね。

また、最近急にクローズアップされてきた電子書籍に対するポリシーも
決めていかなくては、と検討をしているところです。
iPhoneを、私も含めて社員に支給するなどして、
電子書籍の利便性や特徴について日々考えています。
一般向けの文庫や新書のように、文字だけの本は、
電子リーダーでも非常に読みやすく、向いていると思います。
こちらについては早々に対応したいと考えています。

しかし、児童書には絵本や挿絵を多く使った本がありますので、
そういったコンテンツがハードに馴染むのか?
また、子供が端末の操作をできるのか?させて良いのか?
そもそも対象とする世帯に端末がどれほど普及するのか?
と様々問題があります。

ですがいずれ、電子書籍と紙の書籍を同時に出す、ということになるでしょうね。
出版という業界は古い体質ですので、新しいものを受け入れたがらない傾向がありますが、

私は新しいものもチャンスとして捉えて活かしていきたいですね。
ワクワクしますよ。

広く様々な視野を持つことは大事だと思います。
勿論拘りも大事ですが、拘ってばかりいては、
チャンスを逃してしまうことだってあります。
そういう意味では、私は『出版人』としての拘りより、
『企業人』としての可能性を追求していきたいと思っています。

例えば、児童書で非常によく売れていた本の
読者層を分析してみると、意外と大人が多く読んでいたことが分かりました。
雑誌に取り上げられたりと、おかげ様で人気の出た児童書でしたが、
こうなると大手の出版社が黙っていません。
文庫として出版しようとしてくるのです。
児童書出版社の多くは、それをただ指をくわえて見ているだけでした。
だけど阻止したい!
ここで新しい発想で、わが社から文芸書として出版をしたのです。
これが当たりまして、文芸書だけで60万部ほど売れました。
なかなか例がないことでしたので、
同業の社長達から、「度肝を抜かれた!」と、お褒めの言葉を頂きました。

これは企業人の視点でなくてはできなかったと思います。
これからも広い視野を持ち、可能性を追求し、
チャレンジしていきたいですね!

今後の会社について

今後もいたずらに会社の規模を広げるというよりも、
まず、社員一人一人の生活を更に潤いあるものにしていきたいと思っています。

昨年は、さすがにリーマンショック後の冷え込みで辛かったですが、
おかげ様で、社長就任以来毎年売り上げを伸ばすことができています。
これは、何と言っても、社員がついてきてくれるからこそのことですから。

座右の銘『楽』

『楽』という字には、
『たのしい』と『らく』という、二つの意味がありますよね。
私は『楽しければ楽だ』そう思っています。
やらされている仕事は大変だし楽しくない。
仕事は楽しくなければよい結果を生まないと思っていますので、
社員にもそれを願ってやみません。
それはお客様にも楽しみとなって、伝わると思いますしね。
仕事を楽しいと思ってもらえるよう、色々アレンジするのが社長の仕事ですから。

学生よ、無難になるな!

最近出会う若者を見て、失敗を恐れているなと感じることが多いですね。
これでは大胆な仕事ができないのではないでしょうか?
失敗をしないで無難に過ごすよりも、失敗してでもチャレンジしていかなければ
いつまで経っても満足な成果は得られないと思います。

人と積極的に関わり、
自分と違うものを持っている人たちと交流する、
何事にも貪欲に興味を持つ、
そんな姿勢を仕事だけでなく、私生活でも持って欲しいです。
小さく固まらず、そうやって自分の幅を広げて欲しいですね。

就職活動もそう。
採用するときに企業が見るのは履歴書ですね。
あの限られた情報しかない書類がたくさん集まってきて、
あなたに何か光る個性がなければその時点で落とされてしまうと思います。
同じリクルートスーツを着ていても、ときには真面目一本でいかず、
個性をアピールする必要があると思います。
誰にも負けない自信のある何かを、
学生のうちに得て、磨き、それを武器に就職活動に臨んでほしいですね!

また、新卒の採用というのはどうしても、世の中の景気の動向で左右されてしまいます。

その中で、自分のやりたい仕事を見つけるのは至難の業です。
でも、新しく始めることには、必ず自分にとってプラスになる何かがあるはずですから、
キャリアを自分のものにして、人生にとってプラスになるような仕事を見つけてください。

自分にとってマイナスになることって何もないと思いますしね。

特に人との出会いはすべてプラス。
そして、失敗も挫折もみんなプラスになる。
だから、失敗を恐れずにチャレンジし、プラスを勝ち取っていってほしいです。