代表取締役社長 小出 斉

代表取締役社長 小出 斉

設立 2000年5月17日
事業内容
    • コンテンツの電子化及び配信サービス
    • 電子コンテンツの企画開発及び制作
    • 書籍、雑誌の編集及び出版
会社HP https://corp.ebookjapan.jp/(企業サイト)
http://www.ebookjapan.jp/ebj/(販売サイト)

修行の為に三菱重工へ

学生(東大)時代に公認会計士の試験に合格し、
予備校講師や監査法人などでバイトをしていました。

そのまま会計のプロフェッショナルになるよりは、一から作る方が
面白いなと思い、新卒で三菱重工に入社したんです。

当時から規模の大きな会社ですが、大まかに分けると
800くらいの製品がありました。
それらのまったく違う製品を並べて売っているような会社でした。

したがって、上層部の人たちは細部までは把握しきれておらず、
担当製品部門の部長が社長のような雰囲気でした。

ですから、売上や利益をあげて成績を出していれば、好きなことも
やらせてもらえる環境で、まさに中小企業連合のようなイメージを持ちました。

就職活動する中で、大企業的な側面とベンチャー企業的な側面の両方を
経験できるのではないかと知って、三菱重工は修行として面白そうと思いました。
実際に、すごく面白かった。

最初に配属されたのは売上が数百億くらいの部門で、私は営業担当でした。
すぐに数億円単位の商談をまだ何も教わっていないのにやってこいと言われたことも、
今では良い思い出のひとつです。

入社して3年目に、最低でも数十億円が動く部門に異動しました。
私が最初に担当したのは200億円規模で工場を作るという案件でした。

関わるチームメンバーもたくさんいて各エキスパートを何十人と連ねて
見積もりを行い、提案をします。

そんな大きな仕事、普通は入社して4~5年目くらいの若者には、
なかなかさせてもらえないですよね。

自分の好きなものってなんだろう

昔から婦人用の服を仕立てる縫製職人だった父親の商売を見て、
「もう少しやりようがあるのでは?」などと子供ながらに考えることがありました。
経営の分野への意識は、今思えばそのころから持っていたんだと思います。

そちらに向けて一歩踏み出したのは三菱重工に居た頃。
当時MBA留学の支援制度があり、そのための準備をしていたんです。
しかし、上司から勉強になるからとサウジアラビアへの海外赴任を命じられます。
MBAのために、アメリカへ出発する支度は進んでいたのですが、一転して中東へ。

サウジアラビアでは、かなり厳しい3年間を過ごしましたが、
すごくいい修行をさせてもらいましたし、人間的にも太くなりました。
その辛い経験があるから、いま何があっても辛くないですね。

海外赴任を終えると、上司が頑張りを認め、改めて留学の推薦をしてくれたんです。

しかし、アメリカで勉強をしはじめてすぐに、もっと経営の事をやりたいと考えるようになり
三菱重工を辞める決断を上司へ申し出ました。

その後、経営コンサルティングとして実践的な勉強をするため就職しましたが、
より経営に近づいていきたいと思い、並行して転職活動をしていました。

あるとき転職紹介会社の社長からのアドバイスで、
「本当にやりたいことは何だろう」と振り返ってみたんです。
昔から自分は電気工作が好きだったと思い返し、その話をすると
今までの経歴とは畑違いのネット系の企業を進めてくれました。

丁度その時、当社が副社長ポストを募集していました。
経営をやってみたいのならば、部長などの役職に就くよりも
役員として会社に飛び込むほうがいいという、
転職紹介会社の社長からの勧めもありまして面接に行きました。

ちょうど、会社の方でも次の世代の経営者を探していたんですね。

時代が追い風になった

イーブックイニシアティブジャパン入社と同時に、副社長に就任しました。
面接で社長(現会長)から直接質問されたのは、オートバイと趣味の話だけ。
さすがに腑に落ちなかったので、入社後にその質問の意図を尋ねると、
「本っていうのは必需品ではなくて嗜好品だから、
趣味のわかる人に来て欲しいんだ」と答えてくれました。

社長の創った理念に賛同していましたので、そちらは変えず継続しようと提案。
私が新しく提案するのは戦術レベルのところでした。

ベンチャー企業でお金も人も足りない状態でやっているわけなので、
優先順位をつけないといけないのです。

それを、やりたい方向だけに優先順位をつけてしまうと
お金を稼げるようになるまでに時間がかかったり、多額の投資が
必要だったりして資金繰りに苦労するハメになり、
他のことができなくなることもあります。

行きたい方向へ直接いけなくても、お金を稼げないと続かなくなるので、
横道にそれながらでも大まかに向かっていれば良いのです。
お金を稼ぐための勘所は、コンサル時代に身につけました。

また、組織に入る前の外部から見た仮説と、入社後に内部から見た
実態では多少のズレがありました。

それは、思っていたよりもラッキーなこともあったし、甘かった部分もあります。
ラッキーだったのは、スティーブ・ジョブズがipadを発表してくれたことですね。

私は、もともと彼が大好きでした。
発表した際に、「電子書籍業界にとって、これはくる!追い風になる!」と思いましたよ。

見立てが甘かったことは権利者との交渉ですね。
時間もかかりますし、メリットがあるというだけですんなり通る話でもないのです。

アジアへ電子書籍を

当社の一番の強みは、マンガの蔵書量が日本随一であることです。

私が入った当時でも蔵書量はかなりありましたが、
一部の大手出版社から、まだ配信の許諾がおりていない状況でした。
そこにギアを入れ替えた感じです。

当社ではマンガを買いやすく、読みやすくしています。
作品の一括購入、つまり「まとめ買い」ができるシステムも導入しました。

読みやすさにはかなり力を入れていますが、中でも画質の良さを追求しています。
高画質ながらも容量が小さい画像フォーマットを独自開発するほどこだわっています。

さらには、ネットの繋がらない場所でも読める為の技術開発をしています。
今は、そこに他社がついてきている感じですね。

当社にはマンガ好きがたくさん集まっていて、技術開発や
経理にもマンガが大好きな人間がたくさんいるんですよ。

しかし、今後はマンガのみならず小説や、ビジネス書なども含め、
蔵書をさらに広げていくことを指針としています。

他の電子本屋さんでも出ていない児童書や絵本、学術書、参考書なども
取り入れていきたいと考えています。

それに並行して将来的には海外へ。
日本語以外の本も売っているのですが、まずはアジアを中心に
品揃えを拡大していくことを掲げています。

マンガから派生したグッズ、アニメ関連分野も
これからどんどん広げていきたいですね。

怖がりながらでもいい。大義を持ち一歩前へ

最後に、ここまで読んで下さった学生のみなさまへ。
人間はどうしても怖がりますが、怖がりながらでもいい。
それでも一番槍を目指す。新しいことを、いの一番にやって見てください。

学生のうちからそういう意識を持っている人たちが、もっともっと最先端を競うような文化に
なっていけば面白い社会になるでしょう。

周りと融合するより、周りの色を変えてしまうようなイメージです。
例えば、大阪弁を話す人が東京に来たら、東京の人までも
大阪弁にして巻き込んでいくような感じです。

ぜひ、当社としてもそんな新しい人種に来て欲しいですね。
マンガ好きの方も勿論ウェルカムです。
ただ、これまでマンガの電子配信という単一事業で大きくなってしまったこともあって、
そうすると逆にそれ以外に踏み出しにくくなるというベクトルも働いてしまう。

そこから一歩、二歩と踏み出していくには一番槍の積極的な人たちがいてこそ、
2番手、3番手の人たちに可能性を広げていけるのではと思います。

私は面接時、何に興味を持ち、何を軸に判断しているかを見ています。

大義を感じたら、やらずにはいられないというような人。
自分の利益や人からの賞賛ではなく、こだわりをもって一個人として動ける人。
そして、その人を突き動かすものは一体何なのか。

極論ですが、今の時代何しても食ってはいけます。
更に言えば、賞賛を得る仕事も時代によっては批難されることもあります。

そんな中で、本人が強い思いを持っているかどうか。
強い思いが大義によってドライブされているか。
そういう人には、なかなかくじけないものがあると私は思います。