代表取締役 竹澤 慎一郎

代表取締役 竹澤 慎一郎

設立 2007年1月29日
事業内容
    • ヘルスケアに関連した技術、情報をいち早く世の中に活かすことを目的とする事業
会社HP http://www.ghjapan.jp/index.php

投資銀行でのインターン

博士課程の1年目にビジネスコンサルティングかM&Aの仕事をしてみたいと思い、
外資系投資銀行でインターンを経験しました。

銀行というと私の専攻である理学、農学と関連が無いと思われますが、
医療ヘルスケア業界、バイオ業界のM&Aに参加してみたかったんです。
それで当時は投資銀行のM&A部門への就職を希望していました。

実際には、商圏分析やマーケット調査を行うことになりました。
ベンチャー企業にヒアリングを行い、
ITやバイオを含めた先端領域の未公開企業のうち将来伸びる会社を発掘する部署に配属されました。
私に与えられたテーマがその会社は、
これからバイオ業界に進出すべきかどうかを見極めるというもので、2カ月一人で取り組みました。

ベンチャーでの経験、面白み

その後、投資銀行の仕事でインタビューをしたバイオベンチャー企業で、
2度目のインターンを経験します。様々なベンチャー企業の社長と出会い、
ゼロから1を生み出している人たちがこんなに居るのだと改めて認識し、面白い!と思ったからです。

最初はマンションの1室で数名が肩を寄せ合って仕事していましたが、
どんどん人が増えてビルの3フロアを占めるほど急成長しました。会社の成長を目の当たりにし、
私も多少なりとも貢献できていると実感できたのが面白かったですね。

そこではマーケティング業務を担当しました。
バイオ業界における特定の商品マーケット規模を計算し推定値を出すという仕事です。
マーケティングの章を担当し、一緒に事業計画書も作りましたね。

当時その会社にマーケティングに強い人が居なかったので、私が担当することになったんですが、
グロービスの教科書を全て読み、MBAの勉強をしていたことが役に立ちました。
MBAの勉強は修士の頃からしていました。
修士課程の頃から研究室は忙しく、朝8時から23時まで研究し、
夜中の0時から2時まで経営学、経済学、ファイナンスの勉強をするという生活でした。

それほど勉強していたのは、当時から何かをやるぞという意志があり、
そのための下地を作らねばという焦りからでした。知識という武器が無くては戦えませんからね。
周りの学生が遊んでいるのに、とうようなことは気になりませんでした。

社会へ、二社の創業

インターン経験を通じ自分でも会社を経営してみたいと思うようになりました。
仲間を募って起業準備をし、ビジネスプランコンテストに応募したりもしましたね。

その後、研究に専念し博士号を取るためにグループから抜けます。博士課程を卒業し、
2年間研究職に就いたのち、改めて就職活動を行いました。
私にとって研究は一番好きで楽しい趣味のようなものでしたが、
毎年予算を獲得しなければならないなど大変なことも多いのが現実。
やはり私の原点には産業界でバイオの技術や能力技術知識を活用したいという思いがあると
再認識しての就職活動でした。

そして、インスパイアというコンサルティング会社に就職します。
上場企業とベンチャー企業を結びつけるようなマッチングが仕事で、
私はベンチャー側について成長ベンチャーを発掘する仕事をしていました。
その頃、友人が声を掛けてくれて最初の会社バイオインパクトを設立するに至ります。

バイオインパクトでは友人が代表取締役社長を、私が代表取締役副社長を務めていました。
持ち分比率が6:4で、主導権は彼が握っていましたが、次第に経営方針が合わなくなり、袂を分かちます。
どちらが良いとか悪いとかは評価できないと思いますが、
事業ドメインの設定や営業戦略などで意見が合わなくなってしまいました。
私はバイオは医療やヘルスケア、科学技術の一部であると考え、
ヘルスケアという大きな枠組みを中心にした、現在のゼネラルヘルスケアを設立することにしたのです。

医療、科学のリテラシーに貢献する

主力のメディア事業にウェブ、物販を加えた3つが既存事業です。

さらに科学、学術、学問の分野への進出を考えており、
昨年12月から学術論文事業に着手、総合科学学術論文誌『Science Postprint』のWebサイトを公開しました。
出版社として学術論文を出版するというメディアを作る仕事です。

学術論文は専門情報が集まる場所であり、
日本、アジアには企業体として学術論文を運用している会社が無く、
当社がアジアを代表するものを作りたいという夢を持っています。
アジアのサイエンスが伸びていくと期待されている今、
アジアの情報が集まる集積所が必要だと考えたのです。

クオリティはまだまだですが、最近アジアからは多くの論文が出されており、
おこがましいかもしれませんが、
『Science Postprint』を通じてアジア・世界の研究者を育てていければ嬉しいですね。

学術論文には「査読」という工程があり、執筆者とは別の先生がチェックします。
この査読の先生を募集したところ、日本から200名、
欧米から200名の業界のトップサイエンティストの先生方からの協力を取り付けました。
この先生方がこれから伸びてくる研究者を育てる雑誌という位置づけにしたいと思っています。

多くの支援を得られたのは、アジアでの総合学術雑誌は過去に無く、
アジアの基盤を作るという夢を支持してもらえたのだと思っています。

また、「オープンサイエンス-サイエンスを市民に」というコンセプトも取り入れています。
病を持つ家族の治療法を探すため論文を読みたいというような人もいるのです。

さらには、執筆者には論文の要旨を母国語で書いてくださいと推奨しています。
言語の壁を取っ払ったオープンサイエンスというコンセプトにも共感していただけたのでしょう。 

専門情報で戦う

今後も既存事業をコツコツ続け、学術論文事業を伸ばすことを目標としています。
世界、特にアジアへの進出を考えており、
会社の成長に合わせて世界中に事務所を作っていく必要があると考えています。

学術論文は一般市民にとっては馴染みが無いものですが、
世界に500万人いる研究者にとっては読むのが当たり前ですし、
製薬会社や出版社の人などそれ以外の読者が500万人います。

業界No.1の会社は売り上げ2兆円、利益5000億円にもなります。
意外と大きいこのマーケットに積極的に参入していきたいですね。
研究者にはこだわり多い人が多いのでそこが障壁。
学術論文が何かを知っていて、研究者のマインドを分かっていないとできない仕事です。
また、日本と海外では研究者の感覚が違うことも感じています。
最初の論文も海外から取ってきているのですが、
日本では実績が出来てからでないと難しい、ブランド力が求められていると感じています。

インターンは与えられたテーマだけの仕事をするので、
自分で実際に経営してみて当時は見えなかったことが見えてきました。
また、共同経営の時には責任の所在が不明確な場合もありましたが、
一人で経営してみて即断即決しないと生き残れないということも実感しています。

当社は資本金200万円というなけなしのお金でスタートしたため、
すぐにお金になるような仕事をしないと会社が維持できませんでした。
最初の200万円をどう有効に使うか、資金が底をつく前に次の資金を調達するのが大変でしたね。
強いコスト意識、1円を稼ぐ努力、お金がゼロになる前の資金調達、この繰り返しでこれを乗り切りました。

最初は中途採用のみを行っていました。
ところが、中途採用で我々のような小さな会社が採用できる人材には限りがあり、
費用対効果が悪くリスクが大きいと分かってきました。
そんな時にたまたま優秀な大学生が入社してきました。
彼を見ていて学生も捨てたものではないと思い、インターンの受け入れを始めることにしたのです。

現在4名のインターンを受け入れています。大学の授業の一環で来ている学生も居ますし、
いろんな経験を積みたいという理由で自らの意志で来ている学生も居ます。
介護の物販を担当したり、極めて優秀で学術論文事業を担当している学生もいます。
優秀な学生に社員として残ってもらえれば理想的ですね。
ただ、現在の仕事もパフォーマンスが高いので、インターン自体についても大満足しています。

本と体験、二つあって初めて学べる

学生のうちはとにかく勉強と経験に尽きるでしょう。
哲学者デカルトの著書『方法序説』に、
「仮想経験と実際経験、つまり書物で学ぶことと軍隊で学ぶことの両方を経験する必要がある」
という意味のことが書かれています。
18歳でこの本を読んで以来、常にこの言葉を念頭に置いています。

同じ経験をしても人によって学ぶことが全く異なります。
それはアルバイトにも言えることで、私自身も大手電器量販店でのアルバイトを通じて多くのことを学び、
その時の経験を今の仕事にも生かしています。

店頭でファックスを売る仕事でしたが、電器店としては売りたい特定のメーカーがあります。
営業技術を駆使し顧客心理をうまく読み取ることで9割はこちらの誘導するメーカーの商品を買っていただけましたね。
どんなところにでも学ぶべきことは多くあるもの。その場その場で全力を尽くしてより多くを学んでください。

そして本を読んでください。本を読んだ上で経験するからこそ気付くことがあるものです。
本を読むだけではなく、実際の経験で生かさねば意味がありません。
例えばビジネスプランの本を読んでも、それだけでは決して身に付かないでしょう。
実際に自分でビジネスプランを書き、例えばビジネスプランコンテストに応募して袋叩きに合ったりすると、
とても良い勉強になるし、何がダメだったかよく分かりますよ。