代表取締役社長 和田 光征

株式会社音元出版 代表取締役社長 和田 光征

代表取締役社長 和田 光征

株式会社音元出版
設立 昭和24年5月
事業内容
  • PCオーディオ&ネットワークオーディオ雑誌「季刊・ネットオーディオ」
  • ピュアオーディオ雑誌「季刊・オーディオアクセサリー」
  • アナログオーディオ雑誌「季刊・アナログ」
  • デジタルAV雑誌「月刊・AVレビュー」
  • ホームシアター雑誌「季刊・ホームシアター」
  • AVビジネス誌「月刊・Senka21」の出版およびWebポータルサイト「ファイル・ウェブ」の運営
会社HP http://www.phileweb.com/


「三度の食事より編集が好き!」

私は中学生の頃から、編集の仕事がしたいと思っていました。
子どもの頃から絵を描くことが好きで、「表現すること」を自然に続けていたんです。
空の色や、春の麦畑の色…そういうものが鮮明に浮かんできましたね。
でも、大分県のものすごい山の中から上京した私は、完全におのぼりさん状態。
ハローワークに行って仕事を探していると、あるとき、
新聞・雑誌を作っている会社の編集者募集を見つけ、そこで働けることになりました。
とても小さな会社でしたが、私にとっては編集の仕事ができることが重要。
3年間はその会社で学び、そこからキャリアアップしていくつもりでした。

しかし、私が25歳くらいの時です。新聞事業がなくなり、雑誌だけが残ることになって。
私が雑誌の責任者になったのですが、もちろん会社としては編集技術だけじゃ
やっていけないんです。
昼間は営業に出歩いて、夜中は自宅で3時ごろまで編集作業…を繰り返す日々。
こんなことも誰かに言われた訳ではなく好きでやっていましたし、
「三度の食事よりも編集が好き」でないと続けられないですね。

編集者から経営者へ

いま振り返ってみると良かったなと思うのですが、上司がとても冷たい人だったんです。
一緒に出張校正に出かけても、途中で出かけて戻ってこないという。
すべて一人でこなして非常に大変でしたが、このおかげで校正技術がぐんと
上がりましたね。
結局、その上司は会社を辞めていきました。

私が常に考え続けてきたことがあります。
それは、すべての物事には、「本質」と「現象」があるということ。
たとえば、人間が本質で、現象として男性と女性がいる。
本質があってこそ現象が生まれる…この考え方を、誰に教わるでもなく
幼い頃からしていました。

30歳の時に取締役に就き、35歳で常務、38歳で専務、そしてその翌年社長に
就任しました。
もちろん、流れの中で少しずつ経営のことを意識しましたが、
まずは収入をあげられる力がないと経営者ではない、と考えています。
もうひとつ、会社は「細胞(=社員)」の集合体だなと。
いくら規模が小さくても、会社には元気な細胞が必要。
ですので、社員採用には相当なこだわりを持っています。
そういう意味でも、
いい雇用をするためには収益が追い付いていないといけませんね。

いつでも未来から今日を考える

もともとは、編集がやりたくてやりたくて仕方なかった私ですが、
経営者になったからといってフラストレーションはありません。
実務からは離れたものの、今度は会社として何をやっていくのか…
つまり、編集から営業、販売まですべてを考え動かせる立場になったわけですから。

何よりも、会社が成長していく様子を見るのが楽しくて。
もちろん昨年の大震災、タイの大洪水、極端なユーロ安など、会社経営にとって
少なからず影響のある厳しい現実は多数あります。
過去にも、オイルショックからバブル崩壊、リーマンショックと、さまざまなことが
ありました。

このような外的要因は避けられない部分がありますが、、
私はいつでも未来から今日のことを考えるようにしています。
それは、明日から考えることもありますし、3年後から考えることだってあります。
「先に手を打つ」ということは、極めていい流れができていくのです。
逆に言えば、「昨日の今日」で考えたことは通用しないと思っています。

時代を先読んだポータルサイトの成功

windows95が出た頃から、世の中はガラッと変わりました。
雑誌はインターネットにやられるだろうなと勘付き、
当社では、ポータルサイト「ファイル・ウェブ」を1999年の8月にスタート。
2000年の6月に事業化しました。
実際、今では月間100万の訪問者数、1200万のページビュー数を誇るまでに成長しています。
時代の流れを読み、早くウェブに力を入れていったからこそ、
リーマンショックから今日まで続く不況に耐えることができたのだと思います。

現在の正社員数は36名ですが、当社の特徴としては社員が若いということです。
新卒しか採用していませんので、毎年常に優秀な若い人材が入ってくるわけです。
そうなると、追われる上の人たちも頑張らなきゃと気持ちが入りますし、
目に見えない競争があります。

今後の展開

電子書籍のシェアが次第に拡大していますが、当社も既存誌の電子版をスタート
させています。
『Net Audio』は発行以来、アマゾンの「趣味・その他」カテゴリで1位を獲得しており、
「ファイル・ウェブ」の強みを活かし、まさに雑誌とwebの連動が成功したと思います。

また“いつもお客様のそばに”という理念のもと、
ヨドバシカメラなど大手家電量販店と組み、店頭誌の制作を行っています。
デジカメやテレビなどの商品を載せ、それをお客様が読んでそのまま購入に繋がる、
といったものです。

さらに、今後はコンビニと提携してオリジナルの本を置くという、
新しい年齢層をターゲットとした展開をしていきます。
ご存じの通り、コンビニは若者の利用が圧倒的に多いですよね。
今度の本は若者向けに、スマートフォンとヘッドフォンをドッキングさせた内容のもので、
500円のワンコインで買えるんですよ。
3月20日からローソンやファミリーマートなどに並びますが、若者のニーズに
合うと考えています。
このような新しい展開ができるのも、若い人を積極的に採用して、常に新しい
感覚があるからこそ。
それをこなす力を持っている社員が私の誇りです。

生涯やっていきたいことを探してほしい

学生さんに伝えたいのは、「自分が何をやりたいのかを明確に」ということ。
目的をもち、それに向けた就職活動をしなければ、厳しい競争のなかで勝てませんね。

自分が何をやりたいかがわからない人もいるかと思います。
ただ、「給料はいくらか」とか「休暇が多いか」などを第一に考えるのは
やめてほしいなと思います。
先ほどの本質と現象の話に戻りますが、何がやりたいかという本質を大切に。
稼ぐために仕事をするという発想は良くないですね。

福沢諭吉の言葉にこんなものがあります。
「人生で一番幸せなことは、生涯やり抜いていく仕事に出会うことだ」と。
自分がやりたいことを自分の頭で考えていくことを大切にしてください。
企業はそういう人を求めているはずですから。