代表取締役社長 池田 茂

鳥居電業株式会社 代表取締役社長 池田 茂

代表取締役社長 池田 茂

鳥居電業株式会社
設立 大正14年(1925年)4月
事業内容
  • FA制御機器の販売及び
  • システムエンジニアリングの設計・制作
会社HP http://www.tois.co.jp/

仕事とともにあった幼少期

私は宮城県の塩釜というところで生まれ、小学校3年生のときに東京の葛飾区へ
移ってきました。
初めてアルバイトをしたのは小学校4年生のとき、新聞配達です。
というのも、当時は終戦直後で家が貧しかったんですね。
その当時から私は電気関係が好きで、電気関係の雑誌を見て
「ラジオを作りたいな」と考えているタイプでした。
そこで、葛飾区から当時電化製品のパーツが豊富に販売されていた秋葉原まで
自転車で通ってはアルバイト代から部品を買い、ラジオを作ったりしました。
その自転車も買ったものではなくジャンクを組みなおして作ったものです。
当時の情勢もあって、買うより作るに魅力を感じていたように思います。
中学校に入ってからは、さらに沢山のアルバイトを経験しました。
寿司屋、和菓子屋、中華といった飲食店関係の他、
今はもうないですが白木屋という百貨店のドアボーイ、
後楽園の売り子など……全部で15種類くらいは経験したでしょうか。
こう聞くと苦労したと思われるかもしれませんが、私自身はあまり苦労したとは
思っていません。
どのアルバイトにも楽しいところがあり、学ぶところがある。
苦労だ、つらいと思ったら仕事はできないですからね。

石の上にも37年

お金がなかったので、近所の電気屋でアルバイトして、そのお金で工学系の大学、
電気系統に進みました。
といっても在学中はマージャンとアルバイトに明け暮れていましたが……
そしていざ就職、となったのですが、私の就職のタイミングがちょうどオイルショック
と重なってしまって、仕事がなかったんですね。
いくつも受けましたが落ちてしまい、結局教授の薦めで今の会社に入りました。
といっても、最初は半年ぐらい働いたらやめようと思っていたのですが……。
ちなみに社長になったのは平成23年の4月です。
入社から社長になるまでに37年ほどかかりました。
もともと『いつかは社長をやりたい』と思っていて、家内にもそんな話はしていました。
この会社で社長になれたのは、運もあるかもしれません。

同じ土俵で戦うために

私は技術職としてこの会社に入りましたが、この会社自体は営業の社員の力が
強い風土でした。
そんなある日、自分と同い年ぐらいの営業職に私の作っていない製品についての要望を出され、
私の設計ではないから無理だと答えたところ「こんなこともわからないのか」
とどやしつけられたんです。
営業は文系の人が多く、技術面でのことは分からないことが多いので、
出来る事と出来ない事の区別がつかないんですね。
これでは駄目だ、土俵をそろえなくてはと思い、営業に転身しました。
転身してからは技術職としての強みを生かした営業を展開し、
いわゆるキーマン攻略を粘り強く続けていきました。
多くの場合、一回目の名刺交換はしていただけるんですが、二回目以降が難しい。
だから二回目以降、どう自分を売り込んでいくのか、いかに自分の顔を覚えてもらうかを
考えながら行動していました。

5年後、10年後のフットワークのために

平成23年は、本当にいろんなことがありました。3.11、欧州債務の問題、
円高……もともと、今の日本は高度経済成長期を終え、成熟期に入っています。
人口減は避けられないですし、大手企業は海外展開を主軸にしていますから、
GDPの減少もある程度は仕方ないでしょう。
しかし、縮小均衡は避けたいと思っています。
会社というのは停滞、縮小すると下がるだけで、退化していくんです。
常に何らかの拡大や活性化を行う必要があります。
私が考えるのは、5年、10年後、今の若い人たちが色々な方向を狙っていける
力をつけることです。
そんな先のことは解らないと思うかもしれません。
その通りです。海外展開も、社会インフラもどうなっているかわかりません。
それが大事なんです。将来社会や市場がどのような状況になっても、
どんな仕事でもしっかりできるフットワークの軽い会社環境を作る、
そのために資金の蓄積等も含め、しっかりと会社を作っていきたいですね。

「やればできる体験」の大切さ

今の学生さんは、就職するために30社、50社と受け、
1年近く苦労して就職先を決めています。
そのため、特に中小企業には一旦就職した後はあわてず騒がず、仲良く和気あいあいと
やっていきたい、いわゆる内向きの安定志向の人が集まるんです。
しかし、それではイザというときに戦えません。
反対に、大手企業に入社する学生さんは大抵がいわゆる難関大学の出身です。
受験戦争を勝ち抜いて難関大学に進学した人は、小さい頃から成功体験を積み重ねている
『やればできる』『勉強すれば成果が出せる』ということを経験で知っています。
学歴がどうこうというのではなく、
『やればできる』『勉強すれば成果が出せる』という経験を積んでほしい。
成功し、ステージがあがると、また別の課題が見えてきますし、視野も広がります。
その楽しさをもっともっと知ってほしいですね。
弊社でも資格取得プログラムを行っていますが、これも資格の取得だけでなく、
成功体験を得て欲しいという意味が強いのです。

学ぶべきときに学び、踏むべきステップを踏む

学生が就職して、即一気に伸びたり、成果を出したりということはあまりありません。
常に地道な努力、地道なステップの積み重ねが大切です。
たとえば、22歳で入社したとしましょう。大体27歳ぐらいまでは、『若者』という
キャラで売ることができます。
ちょうど企業の社長や幹部の息子ぐらいの年代なので、それだけでかわいがられるんですね。
その間に勉強し、技術、知識を磨いておく。
するとキャラで売れなくなってくる28歳以降、今度は技術で売ることができる
ようになります。
そうしたら、今度は30代前半あたりまでに協力会社や上司、つまり『他者』を
いかに活かすかを学び、覚えておくんです。
すると今度は自分ひとりだけではできない道ができ、仕事の幅が広がります。
こんな風に、王道ですが『学ぶべきタイミングで学ぶ』ことが
最終的には大きな結果を生むようになります。
ぜひ、ステップを大切にして欲しいですね。