代表取締役 小林 照男

株式会社コビーアンドアソシエイツ 代表取締役 小林 照男

代表取締役 小林 照男

株式会社コビーアンドアソシエイツ
設立 1996年9月
事業内容
  • 保育事業
  • コビーアフタースクール
  • コビーイングリッシュスクール
  • コビーピアノスクール
  • コビーバレエスクール
  • コンサルティング I T事業
会社HP http://www.coby.jp/

米国公認会計士を目指して

大学では会計学を学んでいました。
ちょうど、日本が国際会計基準を導入しようとしていた頃で、
本気で会計士を目指すのであればと、米国公認会計士(USCPA)の資格を取るため、
米国の大学へ留学しました。
ところが、会計学の教授に突然、
「君の思考は経営者の方が向いている。
だから経営学の勉強をした方が良い」と言われたのです。
その後、経営学の教授を紹介され、会計と経営の2つを専攻することになりました。

実は、CPAになろうと思ったのも、「いつか起業したい」と考えていたからです。
ただ、具体的にやりたい仕事があったわけではないし、
時代がどう変わるかもわかりません。
CPAは会社を丸裸にする、と言われているぐらいです。
大企業から中小企業まで、全ての企業を見ることができるし、
資格を取って6年間は勉強し、自分の出来ることを捜そうと思っていました。
そして、20代で起業できるギリギリの7年目に起業する計画も立てていました。

どんな事業で起業するかも考えており、
ちょうど、インターネットが世に出始めたころだったので、
商品の価格や性能を徹底的に比較するウェブサイトを作ろうと思っていました。
雑誌はスポンサーの関係で、本質的な比較は難しいものですが、ネットなら可能です。
今でこそ、このようなサービスはありますが。

保育の世界へ

ところが、卒業を目前に控えたころに、父が倒れたのです。
「もう長くない」と言われ、母からどうしても帰ってくるようにと説得されて、
泣く泣く帰国しました。

母は保育園を運営していたので、
帰国後、その仕事を手伝うようになります。
家業が保育園だったせいか、米国滞在中も、
海外の幼児教育を興味を持って見ていました。

保育は欧米が進んでいると言われがちですが、
日本の幼児教育も世界的に見ると、進んでいます。
ただ、日本に欠けているのは、「システム」です。
女性が働きやすい仕組み、男性が働きやすい給与体系、預けやすい仕組みといった、
子育てをする上での、社会的なシステムが完全に遅れているのです。

日本の保育市場は少子化の影響で先細りするなどと言われていましたが、
マーケットを分析してみると、保育の需要は必ず増大すると確信しました。
保育園が足りない時代が必ず来る、と。

4人でスタートした保育園

1996年、母の保育園とは別に、
保育園を運営するコビーアンドアソシエイツを設立しました。
資本金が300万円しかなかったのですが、
そのうちの120万円を使ってロゴマークを作りました。
周囲の人からは「おかしい」と言われましたが、今でも間違っていたとは思いません。
ロゴマークは信頼の証です。それは戦略だったのです。  
また、ロゴマークには、「コビープリスクールズ」と英文が配されています。
あえて複数形にし、一つの保育園では終わらない、
必ず複数に増やすという意志を込めました。
その最初の保育園を千葉県野田市に開園したのが、1998年です。
地域のミニコミ誌に開園の広告を載せた時には、
一日に70件以上もの問い合わせがあり、「いける」と思いました。
事業計画の正しさが証明されたという実感を得て、
少なくとも20-30人でスタートできると考えていました。

ところが、ふたを開けてみると、園児はわずか6人。
それも、自分の息子と姉の息子も含めての数で、実質的には4人でのスタートでした。

完全に自信を打ち砕かれましたね。マーケティングを甘く見ていた結果です。
イノベーターやアーリーアダプターと、レイトマジョリティとのキャズムがあったのです。
従業員も雇っているし、園児4人では借金は返せません。
普通なら、潔く撤退するところでしょう。

でも、「ここは将来、入園したくてもできない、超人気の施設になる」と
多くの方が言ってくれたのです。この言葉が支えになりました。
創業3年目ぐらいまでは厳しい経営が続きましたが、
次第に園児の数も増え、
今では当園に入りたくても入れないコビー待機児童が出るほどです。

やりがいで離職率が低減

保育は人を育てる仕事なので、人的資源が一番大事です。
高い人間性、価値観を持った人が多ければ、質の高い保育が提供できます。

ただ、こうした人間性は一朝一夕で身に付くものではありません。
人材の育成には時間がかかるため、長く勤められる環境が必要です。
長く勤めてもらうには、やりがいが必要になります。
給料がどんなに高くても、やりがいがなかったら、人は辞めていくものです。

コビーでは、やりがい=感動です。
感動とは漠とした言葉ですが、まず、自分達が人に感動を与えられる仕事をしよう、
自分達が感動できる仕事をしようと言っています。

普段から手抜きをせず、徹底的にこだわるのです。
まわりの想像を越えたところまでやって初めて、感動が生まれます。

こうした取り組みの結果、離職率が大幅に減りました。
保育業界の離職率は、高いところで50-60%、平均20-30%ですが、
当社は、定年退職も含めて10%を下回っています。

特に若い人ほど辞めないという状況が出来上がっているのが強みです。
やりがいを見出してくれているという証明ですね。

今後も、素直に感動できる人に入社して欲しいと思っています。
学ぶことが好きだけど、真似するのは嫌いな人こそが、
真の感動を与えることができます。
自分のものを作り出してこそ、感動が与えられる。
そういう人材が欲しいですね。

ゆっくり成長

待機児童が増えているので、年間50や100ぐらい開園できる時代ですが、
あえてやりません。
コビーは質の高い保育を提供する点に存在意義を見出しているので、
成長のスピードはゆっくりです。

利用者は、未来の日本、ひいては地球を背負い立つ子どもですから、
質を考えると、数値的な目標はなじみません。
今日よりも明日の方が成長していなくてはいけないし、
どこかの段階でゴールがあるとも思えません。
保育の分野でゴールを設定すること自体がおかしいと思います。

また、マニュアルもありません。
子育てにおけるマニュアルはあってはならないし、
マニュアルで人間を育てられるほど楽な仕事ではありません。
マニュアルは、子どもの個性をつぶしかねません。
マニュアルなど、通用しない世界なのです。

学生は死ぬほど勉強を

学生には、20代前半は、死ぬほど勉強しなさいと言いたいですね。
人生の中で、自分が必要とする実学を身に付けられるのは、
20代前半が最後のチャンスです。
教授という専門家がそばにいるチャンスを徹底的に活かし、突き詰めていけば、
大きな財産になります。

私も、学生時代には、起きている間は、シャワーを浴びる時間以外は、
一時も本を手放しませんでした。
食事の間もトイレに入っている時も勉強していました。
シャワーの時間だけが、本が濡れるので、唯一、勉強ができませんでした。

大学の教科書には、人生の答えもヒントも載っています。
将来の成功の秘訣が全部ころがっていると思うと、
勉強が楽しくて仕方ありませんでした。

あの時の知識があるから、今の自分があるのだと思います。