代表取締役 田尻 史明

株式会社ライクアート 代表取締役 田尻 史明

代表取締役 田尻 史明

株式会社ライクアート
設立 2006年5月9日
事業内容
  • プロモーション事業
  • コンサルティング事業
  • 国際人材開発事業
  • 特定派遣人材事業
会社HP http://www.likeart.co.jp/ja/

現役のビジネスマンが大学の教鞭をとる

私は商社をはじめ長くマーケティング畑を歩いてきました。
起業の直前にはその経験を買われて1年程ルーマニアの大学で学生に教える機会をいただきました。
そこでの私の役割は万国共通のマーケティング理論を語るということではなく、
日本のビジネスの現場に精通した現役のビジネスマンの視点を通した
「現場を語る」ということを常に意識していました。
この学生との交流を通して世界のスタンダードに触れたことは貴重でしたし、素晴らしい経験でした。
ルーマニアは発展途上の国ですし、その大学も世界的に有名な大学というわけでもありません。
しかし、学生の向学心やディベート内容の濃さには目を見張るものがありました。
グローバルスタンダードの一角を担うはずの日本の学生の様子とは
明らかに大きな開きがありました。

一方日本社会にそれを実行できる土壌があるかと思えば、そうでもありません。
自分達の本当の意味での身近な問題として捉えていない。
企業や社会は結果だけを求めて卵を育てていないことのエゴに気がつかないと、
将来必ずその歪みが問題になります。
そのことをうまく社会に認知することが私達の仕事であると思っています。

スポットを当てるべきは「感性」

これまで日本は農業化社会から工業化社会、
そしてIT化に伴う情報化社会に移り変わる中で、幸運なことに右肩上がりの成長を続けてきました。

しかし、正直今は反動で振り子のようにん成長も意識もマイナスに向いてしまっています。
この揺り返しがただマイナス方向に終わればそれはただの「退化」でしかありませんし、
戻るにしても単純に戻るのではなく戻りながらも上昇傾向がなければいけません。
私は日本の成長を上向かせるのは「感性」だと思っています。
例えるなら今巷では「空気を読む」ということがよく言われていますが、
それも一つの感性なのです。
語学力やビジネススキルはあるに越したことはありませんが、
そのような経験がものを言う部分はもはや他国に追いつかれています。
しかしながら、感性にスポットを当てると、日本人が元来持つ素養は十分に価値があるはずです。
そのため、私は、感性に焦点を当てて人材と仕事のマッチングを図るべきだと考えています。

よくデータマッチングを使って、
求職者のスペックだけを企業が求めるスペックと比べ合わせて判断する手法がありますが、
その手法と比較しても感性を比べる手法はある意味泥臭い方法かもしれませんね。

外国人にとって日本で働くということは魅力的なのか

私達が創業以来温めてきた「国際人材開発事業」をこれから本格的に稼動させていきたいと考えています。
今、国としても移民問題や優秀な海外人材の受け入れ等について論議が交わされていますが、
その話し合いの中には私達日本人の重大な勘違いがあると表います。
かつての日本であればその成長性や活力に魅力を感じて
日本を目指す外国人も少なくはなかったはずです。
しかし、今の日本のこの状況下で単に人材開国をしたとしても、
決して世界的に見ても魅力的な国とは残念ながらとても言えません。
たとえ給料が安くても遣り甲斐や夢を求めて中国で仕事を探す日本人の若者も少なくない中、
今の日本に同じ魅力はあるのでしょうか。
そこをとても危惧しています。このままではただ「座して死を待つ」になってしまいます。
私達と同じく将来を危惧する企業の人事担当者の方から、問い合わせを多くいただいています。
今までライクアートが築いてきた55カ国の大学等とのネットワークを生かし、
この事業をこれからの日本の若者の夢と成長に寄与する事業に育てたいですね。

卵を孵化させる環境作りを

例えば国際展示会などで通訳を雇うとしましょう。
主催者や企業は経験やスキルのあるベテラン通訳を指名することが殆どだと思いますが、
それではいつまでたっても駆け出しの通訳者や若者は育たないですよね。
せっかく通訳になりたい、活躍したいという若者や学生がいるのに、
社会は育てる環境を与えていない。
そういう意味で企業はこの通訳者の問題だけを見ても「尻すぼみ」の構造を自ら作り出していると言えます。

そこで私達ライクアートがいます。
プロは当然ながら人件費が高い。
しかし学生や駆け出しの通訳をインターンで雇用したらどうでしょうか。
彼らはお金ではなく経験の場を求めているわけですから、
企業は「コスト低減の実現と社会貢献」、
通訳志望者は「経験」というニーズをそれぞれ満たすことができますよね。
また、近年予算がさらに削減されている逆風の日本語教育の場でも、同じようなことが言えます。
お隣の中国や韓国は海外での自国語教育の予算は逆に増加して
多くのネイティブの教師を世界中に派遣する中で、日本はその逆の方向にいっています。

私達は手始めのスイスやルーマニアの有力大学の日本語学科に
日本語ネイティブの講師として、志ある人の教壇に立っていただき、
1週間でも1ヶ月でも日本語教師の夢や、あるいはシニアの方の社会との接点をつくりつつ、
現地に生きた日本語に触れる場を提供する計画を着々と進めています。
日本側の求めるものは経験と社会貢献であり、現地はネイティブの生きた日本語と触れる機会を得るわけです。
日本ファンが増えるといいますか、
それに派生するプラスの効果が生まれる、そんな仕組みを私達は今構築しているのです。

まずは簡単なことから

座右の銘という言葉とは違うのですが、「よし、やろう」という瞬間の見極めを大切にしています。
言うなれば絵画と一緒で、どこまで描き込めば最高の作品と言えるのか、
ある一線を越えてしまうとむしろ駄作になってしまう可能性もある。
判断って難しいですよね。
仕事でいえば、どこまで実行に移そうかという手離れの時期の見極めです。
経験がないとなかなか難しいことってありますよ。
特に新卒はキャリアがない。デビューしたてだからこそ意識したらできることと、
頑張ってもできないことと、どうしたってあると思うんです。

だからこそ、若い人には簡単なことでもきちんとできるようになってほしい。
例えば人の目を見て話せるようになることの意味はとても大きいと思いますよ。
簡単なようで意外とできている人って少ないというのが私の印象です。
自信があるとか、ないとか関係なく、
人を説得しようとするときも、意気込みを伝えようとするときにも、
相手の目を見て話をすることは大切なことですよね。

学生へのメッセージ

周りを気にするのは止めたほうがいいと思います。
それはそれで勇気のいることかもしれないけれど、同じスーツを着る必要はないし、
周囲と同じである必要もなく、そもそも社会生活に万人共通のマニュアルなんてないんです。
自分自身のどこが他人とは違うかを意識するのではなく
自分をどうアピールできるかということに目を向けてほしい。
いくら優秀な人でも、みんなと同じようにしか見えなければ一緒に働きたいという意識にはつながらないですからね。
きちんと自分自身を把握し、いい意味で強い自我を持つことはきっとその人の魅力に繋がると思います。